看護学雑誌 43巻4号 (1979年4月)

特集 看護的感性

  • 文献概要を表示

その人の病気体験を通して全体を見る

 近森 最近,佐藤さんは患者さんの病気体験や病気の受けとめ方に注目した研究を発表されていますが(“看護技術”1978年11月号),それはどういうことから始められたのですか.

 佐藤 一言で言えば,患者さんをどこで全体として見ようか,ということです.病気はいろいろな側面からとらえられるわけで,医学のように病理学的なとらえ方もあるけれども,また一方体験,患者さんが病気をどのように体験しているか,というとらえ方があると思います.例えば,痛みとか,出血とかがある場合に,看護婦としてはそういう出血とか,痛みとかの部分だけをとらえてともかく対応していくわけですが,その場合でもその痛んでいる人の全体をつかまえないと,病気である人の一部分としかかかわっていないという感じがどうしてもぬぐい切れない.そこで私たちは,‘体験’というとらえ方から患者さんを見ていけば,より全体的にとらえられるのじゃないかと考えたんです.むろん,体験というものは目に見えるものではないから,その体験している‘仕方’を見ていくことになりますね.

  • 文献概要を表示

はじめに

 本稿によってわたしが意図していることは,ゆきとどいた看護にそれが必要だとしばしば強調されてきた看護婦の感性とは,いったい何であるのか.それは看護婦のどのような行為のなかに潜んで,またはどのような行為によって明らかにされつつ,表されてくるのか,それは患者に何をもたらすのか.そして,それはどのようにして磨かれ,豊かにされてくるのかという問題について,素材を看護のなかのありふれた出来事に求めつつ,考察をすすめてゆくことである.

 看護について,それはいったい何であるのかと,ながく考え続けてくると,幸いなことに,幾つかの鍵となる概念がおのずからなるまとまりをみせているのに気づく.それらは,まだ漠然と群をなしているだけの概念であって,輪郭が明晰にされているわけではないが,ためしに2,3を拾いあげてみる.

  • 文献概要を表示

この小論は,相当な看護労働の経験をもつベテラン看護婦,おそらくは30歳をこえた年齢の婦長・看護婦層を読者として期待している.この期待にはそれなりの理由がある.

 看護集団内部の実質的なリーダーたちに,つまりは,看護を学ぶためにではなく看護をするために病棟にいる人々,訓練を受けるのではなく,訓練をする立場にある‘玄人(くろうと)’たちに向かって,‘玄人’であるが故に逃げようもない眼前の,あるいは足下の問題を,意識の中枢にもう一度すえ直して吟味してもらいたい,という願いがまずある.

  • 文献概要を表示

医学と看護は単なるサイエンスではない

 わたしの今日の講演では,40年余りの臨床経験の中で,わたしの考えがどういうところにたどり着いたか,ということをお話しいたします.

 今までの近代医学の歩みを考えてみますと,サイエンス(自然科学)としての医学がやっとここで本番になるという感じがするわけであります.サイエンス(science)のうちでも,この医学は,一般人には非常に高く発達しているというふうに了解されております.日本の陸海軍は,世界的に冠たるものがあるという自負をもって太平洋戦争に突入したわけでありますが,戦争のふたを開けてみると,日本の軍隊はレーダーのない状態で戦争していたということがわかり,非常にお粗末であったことに気づいたのであります.同じようなことが,やはり医学にも言えるのではないかと,わたしは思っております.

マイ・オピニオン

  • 文献概要を表示

 先日,ソ連・ヨーロッパを旅行中のこと,スイスからドイツへ渡るため国際列車に乗った.アメリカ人にしては小柄なご婦人が私の前に席をとり,私の胸のレッドクロスを見て‘あなたは赤十字で何をしていますか’と問われた.‘私は赤十字のナースです’と答えると,婦人は‘あ,私は6か月ほど前アメリカで胆石の手術をしましたが,その時たくさんの石は7人の医師がとってくれました.しかし私の病気をなおしてくれたのは看護婦さんでしたよ.ナースの仕事つて病人にとって大切な大事な仕事です’と言われ,‘あなたも日本へ帰ったら,患者さんのためにしっかりやってください’と励まされた.

 その婦人とは3つ目の駅で別れてしまい,思うように話ができなかつた.しかし別れた後私の頭の中に浮かんだのは,アメリカにはプロフェッショナルとしての看護が歴然としていることが,一旅人より示されたことだった.

  • 文献概要を表示

 老人患者の入院は,疾病に加え老人性の身体的・精神的変化が,疾病の回復を阻害することがある.今回,前立腺腫瘍の85歳の患者を受け持った.患者は,前立腺腫瘍からくる疼痛に加え,老人性難聴があり,相手の話を聞く態度に,軽々しさや面倒くさそうな態度がみられ,自分にとって必要なもの以外は聞かないと話し,患者とのコミュニケーションの難しさを感じた.一方,患者も病院生活の中で自分が疎外されていると感じているようで,看護者に不満をぶつけずに,家族にあたることが多かった.

 私は,この難聴のある老人が病院生活に適応するために,コミュニケーションをいかにとっていくかが重要であると感じた.そこで今までに発表されている文献を調べてみたが,老人性難聴に関する具体的働きかけの研究は見当たらなかった.この研究では,毎日の看護活動のなかで,老人性難聴の患者に対し,どのような働きかけをしたらよりよいかということを中心に検討し,まとめてみたいと思う.なお私の受け持ち期間は昭和52年11月15日から12月2目までの,土曜日と日曜日を除く13日間である.

手のひらで知る世界 目は見えず耳は聴こえずとも・4

なんとか職をもちたい 石井 康子
  • 文献概要を表示

世話になっている,世話してやっているという意識

 お裁縫をみっちり習った,ろう学校の女生徒は,それぞれ縫製工場へ就職し,木工を習った男生徒は家具を作る会社へと就職していったけれど,私の行く道はなかった.学校や積善学園の先生たちも,どのような道へすすませてよいのやら分からなかったというより,初めから進むべき道はないものとして考えもしなかったし,私は私でさっぱりどうしてよいか分からず,卒業したのだから,とにかく周囲の言うとおりに家族のもとへ帰るしかなかった.そして,カリエスで13年も寝たきりの女の人の所へバスで通っておつき合いをしたり,その人が京大病院へ入院したとき,一緒に行って1か月そこにいたりしていたが,しばらくして,米子市のある開業医のところで住み込んで雑用をやることになった.

 私はうれしくて,お給料を出すという先生に‘置いていただくだけでありがたいのに,お給料までいただくのは申し訳ない’なんて言って,わずかなお給料をありがたがって,掃除,洗濯,台所のかたづけ,風呂わかし,アイロンかけ,果ては診察室にまで飛び込んで,注射器や包帯の消毒までせっせとやっていた.

らいを超えて・4

ひいらぎの風呂 前浜 政子
  • 文献概要を表示

夜明けのバラ園

 バラ園の土の中にじっくり座って,いろいろ考えたり悩んだりした.ここで,このまま花を作っていてこれでいいのだろうか.本病(らい)も良くなったし,今なら健康にも自信がある.社会復帰をしてもう一度外で働きたい.が,このバラを捨てきることが自分にできるのかと,バラの顔を1つ1つ眺めては正直なところ,涙を落としたこともある.

 せっかく苦労をして育てたバラ園と別れるのかと思えば,バラが根を張って本調子に咲き出したのに,といういちまつの寂しさがこみあげたり,そこに自分とバラとの情の深さが出てきて,おそらく情がなかったら,バラを捨てて出て行ったかもしれない.その情が社会復帰の杭(くい)打ちになった.

  • 文献概要を表示

 「都会は好きではありません。岐阜山に囲まれていて,大きな川もありますし、まだまだ静かな街です」城下町の趣きを色濃く残している街で、小学生のころからの夢だつたナースとして、毎日の看護に全力を尽くしている。

アイディア

簡易アンプルカッター 鈴木 一聲
  • 文献概要を表示

 従来アンプルを切るには,ハート型カッター(砂を固めた物),金属性ヤスリ型カッターを使用している.しかし,両方のアンプルカッターには,次のような欠点がある.

 1)数回の使用で切れにくくなる

  • 文献概要を表示

 長野県の北端にある標高2000mを越える2つの山,苗場山と鳥甲山に囲まれた平家の落人が住みついたという,日本最後の秘境・秋山郷の中に,栄村秋山診療所がある.夏は月に2回来る栄村の村医も,4-5m以上も雪が積もる冬(12-4月)には来られなくなってしまう。そのため,この地域(5部落411名)の住民の健康は,診療所の看護婦本山さんの双肩にかかってしまう.

 本山さんが8年前にここに来た時は,友達から,いい年して日本のチベットみたいな所へよく行くね,と言われたが,今までの人生で人にたいへん世話になったので,自分のような者でも何かできることがあればと,恩返しのつもりで請われるままに来た.

輸血—都立駒込病院の場合・4

輸血用血液の種類と適応 清水 勝
  • 文献概要を表示

現在の輸血は,あくまでも血液成分の一時的な補充療法にすぎないということを,基本的な認識とすべきである.そして,患者に輸血を行う場合には,まず本当に輸血が必要とされるか否かを熟慮すべきである.次いで,ひとたび輸血が必要であるならば,可能な限り副作用の少ない血液製剤を,可能な限り少量便用して,可能な限り安全な方法により,最大限の臨床的効果をあげるように努めるべきである.

透析療法と看護・4

人工透析の種類(2) 鈴木 正明
  • 文献概要を表示

前回は腹膜灌流について述べた後,血液透析として,1)ダイアライザーの種類,2)透析液の循環方式について説明しました.今回はこの続きとして透析を行う患者数の違いによる機械の違い,血流のコントロールの方式について述べ,透析液を用いない坊法にも触れたいと思います.

心臓病Q&A・4

  • 文献概要を表示

心電図でどこまでわかるか

 Q:先生,この心電図(図1)はどう読んだらよいのでしょうか.

 A:あなただったら,これからどのように診断しますか.

臨床検査から何がわかるか・1

尿と精液 河合 忠
  • 文献概要を表示

はじめに

 臨床検査は,大きく検体検査と生体検査に分けられる.前者は,患者から得られる検体について行う検査であって,検体にはいろいろなものがある.そのなかには,尿・大便・痰・分泌液などのように,患者自身が出すものをそのまま流用する場合と,髄液・穿刺液・胃液・十二指腸液・関節液・組織(または臓器)片のように,医師・看護婦,または臨床検査技師がわざわざ手を下して,患者から取り出してくる場合とがある.生体検査は患者自身について行うもので,生理学的検査(生理検査)ともよばれる.

  • 文献概要を表示

 英会話を身につけたいということで、会話学校へ通ったり、外国へ留学したりする看護婦のことは聞くが、日本にいる外人の家庭へ、いわばお手伝いさんとして住み込んで学ぼうとする人は少ない。看護婦として働いていながら、人の家庭で下働きをするには抵抗はなかったですか。「いろいろ悩みましたが、ハウスキーパーとして体験するのもまた自分にとってプラスになると考え、周囲の反対を押し切って飛び込みました」

 入った家庭で、洋式の掃除、洗濯、料理、そして主人の操従法まで習った。会話の方は?「今よりできませんでしたが、何よりもカンが働きました」しかし、夢と現実は違い、一緒に生活していても、生活習慣も違い、とても厳しい体験をした。

ひとりぼっちの遊学記—働きながら学んだイギリスの看護・4

ターミナル・ケア病棟 高橋 克子
  • 文献概要を表示

ターミナル・ケア病棟では疼痛のコントロールがよくて笑い声さえ聞かれました

 ザ・ロイヤル・マルスデンのロンドンの本館のトップフロアには,癌末期で根治療法が中止され,疼痛緩和の対症療法だけが行われている患者が収容されている病棟があります.3つの大部屋と4つの個室の計13床で,もちろん患者はこの病棟がターミナル・ケアの場所であることは知りません.

 スタッフは常時,婦長を含めて日勤の看護婦が5-6名,看護助手が1名です.申し送りが終了すると,直ちに清拭に入ります.この中でも歩行可能な患者は2-3名おりますが,入院期間が長くなるほど,徐々にベッド上での生活が多くなっていきました.

ホームヘルパー跳びある記・12(最終回)

  • 文献概要を表示

 昭和37年,生活保護世帯を対象として発足したホームヘルプ制度は,38年7月老人福祉法制定と同時に法制化され,さらに44年‘寝たきり老人対策の実施’強化の方針のもとで国庫補助事業となりました.その派遣対象は,心身の障害とそのために日常生活に支障があること,その家庭が老人の介護をすることが困難な状態にあることであり,それには低所得が条件になっています.

 従って私たちホームヘルパーの対象とする老人は,寝たきりの独り暮らし老人とか,老夫婦,あるいは昼間独りの老人で,低所得層という,介護の緊急性・不可欠性を要する老人が多いのです.また寝たきりの状況は一般的には疾病が原因になっているところから,医学的管理やリハビリテーションを必要とする老人が多いのですが,福祉サービスという枠組みの中で,派遣決定に当たって保健所や医師の診断はなく,さらにホームヘルパーにも看護的専門性などの特別な資格は求められていないのです.このように,在宅老人の実態が,自立が困難な疾病を有する老人であるのに,国の要綱によるヘルパーの仕事は家事・介護に関することと,生活・身上などの相談や助言などと規定されているわけです.

切り取りカード 看護ミニ事典

正常値/登校拒否(症) 宮入 正人
  • 文献概要を表示

臨床検査に用いられる正常値

 疾病の診断に,また疾病経過の判断に,あるいはまた集団健診に数多くの臨床検査が行われている.その検査結果は定性あるいは定量的に表されるが,定量的,すなわち検査結果が数値で表されるとき,その値が正常か異常かを判断するためにはなんらかの規準が必要になってくる.この規準となる値あるいは範囲を正常値,また正常範囲と呼んでいる.

切り取りカード 新しい薬の知識

  • 文献概要を表示

〔商品名〕プルサン PuJsan(山之内)

〔薬効〕β-受容体遮断薬

基本情報

03869830.43.4.jpg
看護学雑誌
43巻4号 (1979年4月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
1月4日~1月10日
)