らいを超えて・4
ひいらぎの風呂
前浜 政子
1
1長島愛生園
pp.411-415
発行日 1979年4月1日
Published Date 1979/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918652
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夜明けのバラ園
バラ園の土の中にじっくり座って,いろいろ考えたり悩んだりした.ここで,このまま花を作っていてこれでいいのだろうか.本病(らい)も良くなったし,今なら健康にも自信がある.社会復帰をしてもう一度外で働きたい.が,このバラを捨てきることが自分にできるのかと,バラの顔を1つ1つ眺めては正直なところ,涙を落としたこともある.
せっかく苦労をして育てたバラ園と別れるのかと思えば,バラが根を張って本調子に咲き出したのに,といういちまつの寂しさがこみあげたり,そこに自分とバラとの情の深さが出てきて,おそらく情がなかったら,バラを捨てて出て行ったかもしれない.その情が社会復帰の杭(くい)打ちになった.
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