看護学雑誌 24巻5号 (1960年5月)

5月12日
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 5月という月は,1年の中でも,最もさわやかで,晴々とした緑の若葉に自分の希望をたくすような,快い時候ですが,一方,私共ナースにとつては又,忘れることのない日,5月12日を含んでいるのです。この記念日を迎えて,看護の先駆者,開拓者,フローレンス・ナイチンゲール女史を,その有名な書翰を通してしのんでみることも意義があるのではないでしようか。

 私共ナースが行う看護法に,日々進歩の跡をみせていない限り,私共が退歩しているのだとしたら,その行いを日々改良していかない限り,それはおどろく程退歩していることだと思わねばなりません。これは勿論,世間一般の婦人にあてはまることですが,特にナースにはあたつています。何故といえば,教職の他に,この職業ほどその成功が人格によることの多大なものはないからであります。善いナースとなるためには,まず善い婦人でならねばなりません。人間ができていなかつたら,美しい音色を出すはづの鐘も,土臼を打つている音のようなひびきしか出さないでしよう。そして少しでも善い人間になろうと思つたら,日々に進んでゆく者でなければなりません。よどんだ水や,沈滞した空気は,くさつて役にたたなくなるからです。

口絵 続・写真解説看護技術・13

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 前回(本誌、第24巻・第1号、第2号、第4号)に於いて、胃管に依る食餌法、下顎骨切除手術並びに骨移植手術を受けた患者の給食法、口唇成形手術を受ける乳児の授乳法について述べた。今回はそれ以外の口腔外科領域の患者に対する食餌の与え方の概要を述べて見る。

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 昨年6月に脊髄性小児麻痺が指定伝染病になり,ソークワクチンの輪入などで世間の注目をあびたが,看護の面でも大きなテーマであつたこの疾患の看護はあらためて研究される機会が多い。国立東京第一病院でまとめた「ポリオについて」の大きな研究を2回にわたつて紹介する。

講座

脳手術の適応 佐藤 公典
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 メスをいれることが不可能と考えられていた脳の手術が可能になつた。これは確に近代医学にエポツクを画することである。とはいえ,脳外科はむずかしい手術であることは事実である。手技のみではない,術前の準備,無菌法の処置,また術後の看護等学ぶべき問題は数多くある。

 脳の機能については3000年以前のエジプトの文献に,脳が四肢の運動を支配しその支配は左右交叉性であるということが見出され,また,脳の手術については西暦前約400年前のギリシヤ交化のなかに見出されており,Hippokratesは頭蓋骨骨折のみならずテンカン,盲などの手術を行つている。しかしながら,かかる古代さらにくだつてほぼ19世紀にいたるまでの脳外科はほとんど単に頭蓋骨を開けるということにとどまつており,従つて頭蓋骨陥没骨折,頭蓋内血腫あるいは膿瘍の除去などの限られた手術のみが可能であつた。それはいうまでもなく脳の病変の診断がむづかしいことや,手術時の出血,麻酔,感染などの多くの問題があつたからである。

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術前の処置ならびに注意

 脳手術を行う患者には,まず頭部の清潔に留意することが大切である。たとえば頭部に湿疹,膿痂疹,褥瘡,アセモなどがあれば,その治療を行うのはもちろんで,これらが治癒しないかぎり手術は不可能である。頭髪が長く多い場合は,皮疹など見逃すことがあるのでことに注意を要する。

 頭部の剃毛は,頭の如何なる部位の手術であつても頭部全体の充分な剃毛が望ましく,ことに前頭部の手術の際には眉毛まで剃毛する必要があり,また後頭下の手術では頭部から肩,上背部にかけて広く剃毛を行う。このように充分な剃毛をするのは,毛髪が細菌の潜伏に都合良いからである。女性の場合は前もつて納得のいくよう説明しておかなければいけない。剃毛の時期は手術直前に行うのが理想的である。それは頭髪は一晩に0.3mmのびるといわれており,いかに創をつくらないように入念に剃毛を行つても多少の剃り傷ができるもので,手術まで時間がながいとその間に剃り傷の感染がおこる可能性があるためである。

動脈瘤と静脈瘤 服部 淳
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 心疾患は,手術による治癒率が高くなり,代用血管の研究が進んで移植が可能になつた現在でも,動脈瘤・静脈瘤の治療は不充分な点が多い。診断がついた後は安静を守らせることが第一であり,手術後の患者の看護にも困難なことが多い等々,この疾患についてナースの仕事は多い。特にその診断に際して行われる特殊な検査については介助のテクニツクと共に覚えてほしいことである。

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動脈瘤の看護

 動脈瘤は経過の長い疾病であり,検査,手術,或は破裂による大出血のない限り,特殊な看護は必要としない事が多い。然し患者はいづれも長い闘病生活に疲れ,時には手術治療が不可能な事から前途への光明を失い,或は日毎夜毎のたえまない疼痛苦痛に瞬時の憩も得られず,兎角,暗い気持になりがちのものである。従つて本症の看護に当る者は少しでも患者に明るい気持を持たせる様につとめる事が大切である。一般看護の上に留意すべき点は,前に心疾患患者の看護法で述べたと同様である。患者は必ずしも常に臥床の必要はなく,軽い散歩程度が許される者が多いが,看護に当る者の常に心得て置くべき点は,何時動脈瘤が破裂するかも知れないということである。特に動脈硬化や梅毒性の動脈瘤ではこの危険が多い。従つて患者に激動や興奮を与える様な事は絶対に避ける様にし,急に寒気の中に入れることも注意せねばならない。更に皮膚面に突出している動脈瘤はわづかな外力で破裂し大出血を来すことがある。

 頸部,胸部,腹部の動脈瘤により気管食道胃腸が圧迫されると呼吸困難,嚥下困難,胃部膨満感が出る。呼吸困難に対しては圧迫の少い体位,頭位を考慮し,高度の呼吸困難には酸素吸入の必要が生れる。嚥下困難,胃部膨満感には軟食,時に流動性の高カロリー食を与え,1回の量を少くし回数を増す様にする。

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 3月号で准看教育の諸問題のうち,教科に関する問題,生徒実習について等,詳細なデーターを伴う報告が寄せられたが,学院運営,卒業後の動向等についての解説を掲載する。

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 看護業務が人間の生命をあずかる仕事である以上,それに伴つて多くの責任が附随するのは当然であり,しかもそれらが極めてきびしく,ナースに要求されている。それでも,たまたまナースの過失により,重大な結果をひきおこすケースを見ることがある。その場合,多くのケースは複雑な条件下にあり,ナースの責任をどのように理解するかが問題となつてくる。

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 精神病患者の取りあつかいや,収容する病棟などは,昔のような閉鎖されたものではなくもつと普通の人と同じようにのびのびと自分の生活を楽しんでいける環境の下に治療を受けられるような方向に向いつつある。病棟を広く開放することは自閉におちいり易い分裂病患者のためにも効果を挙げるにちがいない。

ナースの作文

悩み,他 浄琳坊 弘子
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 今春で実務経験が2年の私,またたく間に過ぎ去つた2年である。あれこれと学院卒業当時はいろんな計画で胸をふくらませていたものだけれど—,教養を身につけようと夜学へ通つた私には,今は苦しい中から貯金したわずかばかりのマネーしかない。

 そして今私は将来の進路の決定が必要な自分に気がつくのである。今までは勉強の方ばかりに気をとられあまり真剣に将来の事を考えなかつた私。進学か,それとも断念か,いともたやすく答えられるようなこの問題が,苦のうの日々の連続とは—。

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 准看護学院卒業当時漸く看護界の一人として勤務する者の仲間入りできたと喜んだ反面,あまりの若年で仕事に対する不安,対人関係の不信を抱いていた。2年後准看が高看と同等の資格を得ることを念願していた進学コースが県下に設置された。

 私はこれからの看護界の中で仕事をするのに准看では不満足,そして仕事に対する不安感等で進学は必要と考えた。しかし,大部分の准看はこれをめざし夜間高校に通つている。私はいろいろ都合があつて今はたゞコツコツと自分で勉強している有様だ。家では私の進学に対し今となつてだれも反対せずむしろ進学し早く一人前の高看になれることを待つている。そんな期待をかけられ私は必ず合格したいと思う。

教養講座 小説の話〈終〉

いい小説悪い小説 原 誠
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 この「小説の話」は,先月号で36回になつたようです。毎月つづけたとしてちようど3年間。途中,休んだこともありましたから,3年以上おつきあいをねがつたことになります。月刊雑誌の連載物として,これは異例の部に属する。長すぎたお喋べりだつたような気がします。決して回顧的なものの云い方をするわけではありませんが,編集部の方から「小説の話」といつたようなものを書かないかとすすめられたとき,5回か6回,長くても1年12回ぶんくらいで切りあげるつもりでした。そして,その第1回のとき,こんなことを書きました。ひと口に小説といつても,いわゆる純文学あり大衆小説あり,チヤンバラ小説,推理小説恋愛もの,ユーモア小説その他さまざまのジヤンルに分けられるものが,質的にもちがつた相をもつて私たちのまわりをとりまいているので,この危険な氾濫時代に,すくなくとも私たちはどんな小説を読んだらいいのか,その示唆になることができたらさいわいだ,と書きました。どういう小説がいい小説で,どういう小説が悪い小説か,ということについて「小説の話」をしてみたかつたのです。

 そのための試みのひとつとして,明治のはじめから今日にいたるまでの,小説のうつりかわりという点に焦点をしぼつてみました。わが国の近代小説を,歴史的に価値評価してみようと思つたわけです。

教養講座 詩の話・6

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 本稿は,今回より作詩の方面についてお話をつづける予定であつた。ところが編集部から,このあたりで前回までの各回の話の概要をまとめてみてはどうか,とのことばがあつた。

 みなさんの世界も,新卒,進学とあたらしい動きの時期でもあるし,本誌の新しい読者のためにという編集部のこころくばりとも思われるので,各回の概略をここにしるすことにする。

時の動き

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 〔フルシチヨフ首相の東南アジア訪問〕フルシチヨフ首相は2月10日から3月5日まで,インド,インドネシア,ビルマ,アフガニスタンの国々を訪問しました。フルシチヨフ首相の東南アジア訪問は2回目で(前回は1955年12月)それだけに現地の歓迎ぶりは少なかつたようです。

 こんどの訪問は,西側に対抗して低開発国の援助を積極化し,来るべき東西首脳会談にそなえるためでした。ことにインドは中共との国境紛争が続いており,反中共気分が高まつています。これが共産主義国一般への不信となるのを食い止めようとするのです。

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真綿雲一筋裸木に風からまる

連載小説

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日曜日の集い

 電車の窓から眺める久しぶりの郊外は,麦が青青と背を伸ばし,初夏の陽を浴びて舞う野菜畠の蝶を見ても,ごみごみした都会の閉じこめられた寄宿生活を送る春子とつてはすべてが夾やかで新鮮だつた。

 こうした郊外のきれいな空気の中に,五坪ほどの小さな家でもいいから…………と語り合う和服姿の笠原婦長にも何となく親しみが湧いて,日頃気になつて離れない秋田なまりのことなどすつかり忘れた春子は,自然に話題の仲間に引き入れられ問われるままに故郷の農村風景を語つて聞かせたりした。

基本情報

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看護学雑誌
24巻5号 (1960年5月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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