教養講座 小説の話〈終〉
いい小説悪い小説
原 誠
pp.46-48
発行日 1960年5月15日
Published Date 1960/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911098
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この「小説の話」は,先月号で36回になつたようです。毎月つづけたとしてちようど3年間。途中,休んだこともありましたから,3年以上おつきあいをねがつたことになります。月刊雑誌の連載物として,これは異例の部に属する。長すぎたお喋べりだつたような気がします。決して回顧的なものの云い方をするわけではありませんが,編集部の方から「小説の話」といつたようなものを書かないかとすすめられたとき,5回か6回,長くても1年12回ぶんくらいで切りあげるつもりでした。そして,その第1回のとき,こんなことを書きました。ひと口に小説といつても,いわゆる純文学あり大衆小説あり,チヤンバラ小説,推理小説恋愛もの,ユーモア小説その他さまざまのジヤンルに分けられるものが,質的にもちがつた相をもつて私たちのまわりをとりまいているので,この危険な氾濫時代に,すくなくとも私たちはどんな小説を読んだらいいのか,その示唆になることができたらさいわいだ,と書きました。どういう小説がいい小説で,どういう小説が悪い小説か,ということについて「小説の話」をしてみたかつたのです。
そのための試みのひとつとして,明治のはじめから今日にいたるまでの,小説のうつりかわりという点に焦点をしぼつてみました。わが国の近代小説を,歴史的に価値評価してみようと思つたわけです。
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