看護学雑誌 24巻2号 (1960年2月)

たゞ一つの貝
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 大阪から南海線にのつて和歌山をすぎ,白浜に至る少し手前に「南部」という小さな漁村があります。最近は町になつた由ですが,町中で最も大きな,立派な建物は,浜辺の松林の中に建てられた鉄筋コンクリートの小学校であるということです。この小さな町に,世界でたつた一つしか発見されていないという貴重な貝を発見した人が住んているということを知つている人は,あまりないでしよう。その人は仮にM氏とよぶことにしましよう。何故なら,その事実がわかつた時,あまたの報道陣がおしよせ,「ここにこの人あり」の番組にのせたかつたのを,「自分はそういう派手なことは出来ない,一介の野人にすぎないのだから」と,堅く固辞されたということですから私もそのお気持を尊重したい。

 伊勢湾台風のために3間位も壊されてしまつた防波堤のすぐ内側に,松林の中に点在する木造のお粗末な小さな家があつて,その一軒一軒に聖書に出てくる人の名前がついている。更にそこにとりつけられた最小型の台所,それが,すべて桃やミカンの空箱を利用した棚だの,流しと調理台を兼用させる「モデル設計」だの,小さな窓には網戸もあつて,水道と電燈とはこの広い地域に点在するすべての建物についている便利さ。最も大きい家は本館で,農漁村センター労祈学園の集会室と宿舎,次は兄弟舎といつた具合にある。共有の食堂は海を臨む松林の東方で,コードを持つていけばコーヒーもわかせる文化面もある。

口絵 続・写真解説看護技術・11

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2.下顎切除術並びに骨移植術を受けた患者の食餌の与え方

 患者:男,38歳

 病名:左側下顎エナメル上皮腫

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緒言

 近年臨床各科において,酸素療法を受ける患者が多くなつた。酸素投与法についても,ロート法からカテーテル法,マスク法に加えて麻酔器を用いる方法,テント法,酸素室などが用いられ,これらが漸次改良されて広く使用されるに至つた。私共はこの中から酸素テント法を選んで,看護の立場から患者が有効,安全,且つ安楽にこの療法をうけるには如何にしたらよいかを知るために,基礎的な実験を試みた。

精神病院はこう変つた 関根 真一
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 精神病院のかわりかたは近年になつて急激にめだつてきた。それというのも,精神障害者の治療が劃期的に進歩した影響によるものといえる。

 精神病院のかわりかたにはいろいろの面があげられるが,この度は紙面の制限もあるので,私が精神科医となつた大正12年を基点として,精神病の治療と入院患者への処遇の変遷について遂次述べることにした。

新しい結核の治療 砂原 茂一
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 結核はもう過去の疾病のように考えられがちである。それは治療のいちじるしい進歩によるものだろうが,今でも結核患者は数多く,そして専門医たちが,よりよい治療のために心を砕いている。新しい治療はどんなものがあるか,新しい治療を,砂原先生に解説していただいた。

蕁麻疹—その病態生理 高橋 晄正
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 蕁麻疹というのは,急激に発生する限局性の,赤い,盛り上つた,瘙い発疹であつて,その数も,強さも,持続時間もまちまちでありますが,いずれあとかたなく消えてしまうことが特徴であります。名前の起りは,いらくさ(蕁麻)に触れた皮膚が,丁度このような症状を呈することから来ているといわれています。

 蕁麻疹の出ている部分の皮膚をよくしらべてみると,病変の起つているのは,真皮の乳嘴床の上層であつて,その部分の毛細血管は拡張し,その壁を透して血漿成分が滲出しているのを見ることができます。このような,毛細血管の拡張とその透過性の異常な亢進とは,ヒスタミンあるいはヒスタミン様物質が,局所の皮膚の組織の中で生成することによるものであるといわれております。じつさいに,ヒスタミンの1000倍溶液の0.1ccを皮内に接種しますと,蕁麻疹と全く同様の,赤くて瘙い一過性の丘疹ができるのです。ここにヒスタミンといわずにわざわざヒスタミン様物質というのは,その化学的性状は完全には明らかになつてはいないけれども,生物学的にはヒスタミンと区別できないような物質であることを意味しております。ヒスタミンの化学構造は次の通りですが,ヒスチジンという塩基性アミノ酸からCO2を除いたような形になつています。

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 看護基準は看護の能率を向上する意味でも,また看護の水準を維持し,高めるためにも是非必要だという。国立東京第一病院看護研究会で「看護基準」をまとめられたのを機会に都内の大病院の看護婦さんたちの出席のもとに看護基準がなぜ必要かまたそのあり方などについてお話を伺つた。これは医師の啓蒙のためにも必要だという発言もありまた各病院で,更に将来は全国的なものを作らなければならないという発言も得た。

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 現在の精神病治療に対する考え方は,急激にかわつてきている。いままでのE・S療法,持続睡眠療法等にかわつて,薬物療法(ウインタミン,セルパシル,プレジシル等)が,さかんに用いられるようになつた。一方,これらの治療に並行して,患者の内的活動性をよびおこし,病気の回復を早めようとする作業療法やレクリエーシヨン療法も最近またさかんに用いられるようになつた。しかも,患者を個々としてみるのではなく,あるグループとしてまとまつた活動をさせることによつて目的を果そうとする集団指導(group therapy)がいろいろの方法で試みられている。

 ここで,わたしたちは,わたしたちがいままで行つてきた集団指導を中心に,いろいろと考えてみたいと思う。

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 精神病院における看護は一般病院におけるそれと著しく異るものがあります。決められた仕事をただ確実に行うというだけでは済まされません。私達看護者の些細な言葉のはしにさえも患者さんは鋭く反応するからです。今迄は身体的治療と生活指導などは切りはなされて考えられていたうらみがあります。しかし最近は精神病院の治療的雰囲気をどのように形成したらよいかについていろいろ論議されるようになつて来ました。患者さんは入院したその日から活発な治療的雰囲気に入れられ,その中で治療看護を受け,治癒して社会複帰する場合にも,病院との間に連絡を保ちながら社会生活を続けてゆくことが望ましいことでしよう。国府台病院の論文をよんで「重症病棟」という病棟の性格がよく掴めませんでしたが,新鮮な身体的治療を必要とする患者さんを主として収容している病棟と解してよいと思います。今迄松沢病院,武蔵療養所などの,慢性病棟についての生活指導,レクリエーション療法,作業療法などの詳しい発表がありましたが,この論文によつて組織的な生活指導や作業による指導が新しい患者さんにも身体的治療とともに必要であることが理解され,その点深い感銘を受けました。またこのようなこころみでは看護者医師との連携また患者さんとの話し合いが大切ですが,それがスムースに行われていることに感心いたしました。この種の看護指導は一時的なものではなく如何にして効果を持続させるかが問題です。

ナースの作文

仁和寺,他 長沢 睦子
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 私は,仁和寺の境内がすきである。だからその日曜の夕刻も,そこに散策にでかけた。“徒然草”の中の,笑うにも笑いきれない“かなへ法師”の事件のもちあがつた寺院といえば,なにかすごく親しみやすい感じだけれど,実に堂々たる威風は何度行つてもその山門だけで圧倒されてしまうというのが本当である。

 しかし無理に近々しいきもちで仁王さんの横を通り抜け,更にまつすぐ行つて中門をすぎるころは,すつかり環境や雰囲気に慣れてしまうのが常であつた。

ナースの意見

協会への無関心の根元 清水 琴子
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看護協会という名前を聞いて,自分が協会員でありながら実の所“親しみ”といおうか我家に対する身近かな感情を抱けないのは私1人だけなのだろうか?

 現に看護婦として働き,協会員であるのに本当に恥しい,物淋しい,残念な話である。私の協会に対する関心が足りないのか,看護に対する情熱が足りないのか,職業意識の欠乏だろうか。看護協会の働きも知らない協会員であつても協会に接していない状態の私が協会に対して云々するのは恐れ多く,厚かましい恥しいことであるが,34年度看護総会に参加して,全くがつかりさせられ,ナイチンゲールは何と思うだろうと考えたのが正直な所である。総会で見た協会は上から下までグラグラで纏りのないものであつた。上に立つ人々が一生懸命に汗しているのに何故か軌道に乗らない,丁度砂の上に立てた家の様な脆さを感じた。上から下への働きかけと下から上への盛上りのなさそして,そのバランス,そして個個に個立しすぎているバラバラの人間の集い,これがいやに鼻についた。下から上への盛り上り,皆が力を合せて上へ上へと押上げて行く力の強さが必要と思つた。

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 240床の病床にだけでも,約80人の看護のグループがいなければならないのに看,准合せて35人しかいない病院で養成をしている苦しみは察するに余りあります。多分教務と総婦長の立場のちがいからの摩擦もあることでしよう。

 労働力として生徒は当然あてにされていることと思います。

教養講座 詩の話・4

ことばのおもしろさ 山田 岩三郎
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作品

喉ぶとなその友人は

街のすさまじい風説をしやべりまくつて帰えつていつた

教養講座 小説の話・35

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 戦爭中,私たちは,死ぬときの心構えということを教えられました。決してイヌ死をしてはならない。大日本帝国のため陛下のためにシコのミタテとなつて,いさぎよく死ぬべしと教えられました。いまどきの人たちに,シコのミタテなどという言葉はぜんぜん通用しないでしようが,当時は小学生,中学生くらいの子供まで,合言葉のようにシコのミタテをとなえていたものです。漢字で書けば「醜の御楯」。醜(シコ)というのは自分を卑下した言葉ですが,醜いことを同時に強いことと考えた万葉時代の古代感情から,ここではもつぱら,強い楯という意味にもちいられました。陛下に忠節をささげる強い楯となれ,ということだったのです。

 決してイヌ死をしてはならないと教えられましたが,イヌ死とはどんな死に方か,もしかしたら当時は病死することもイヌ死のひとつだつたのかもしれません。病気などしてしまつたら,全然シコのミタテのお役にたたないのですから。その恥ずべきイヌ死のうちでも,当時もっとも屈辱的なこととされていたのは,敵の軍門にくだるということでした。結果としては戦いに敗れて,連合軍の軍門にくだつたのですから,なんのことはない日本中がイヌ死のうちでも最たる屈辱にあまんじてしまつたといわなければなりませんが,あのがむしやらな戦爭中,指導者たちは口をそろえて,降伏するくらいなら自決しろ,と叫んでいたものです。

時の動き

新党準備会の発足,他 奥山 益朗
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 西尾派の社会クラブと河上派から割れた民社クラブを中心とする「民主社会主義新党準備会」の結成式が11月30日に開かれました。これには両クラブに属する45人の国会議員をはじめ,多くの準備委員が参加しました。

 いうまでもなく,これは現在の社会党にあきたらずに結成された第3党で,社会党の右,自由党の左を標傍しています。準備委員長には伊藤卯四郎氏を選出し,来年1月までには政党としての形をととのえるといわれます。

随筆

満留子 柴田 政江
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 その日の便りは珍らしく封書だつた。

 「みなさまお元気ですか」で始まり,「勝つまではがんばります」で終つていた。

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雁がねや脳病む人に列組ませ

月にロケツト夢にはあらず栗爆ぜる

連載小説

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 はじめに過去現在にわたり,日本の看護婦は博愛と奉仕のシンボルであり,天使の代名詞をいただいて表面は華やかに取扱われて来ましたが,人々の心の中に伝統的に看護婦という職業を蔑すむという気風が潜んでおります。その原因は……と考える時,浮んで来るのは現代社会に未だ存在する部落民のこと,或る多くの人々の心にまだ破戒の丑松を作り上げている如く,看護婦の場合も,そうした或る多くの人々の心に,昔から蔑すまれつづけている目に見えない何かがあるのです。

 そうした問題と,多くの看護婦たちの,社会性に乏しいということが如何に看護婦自身の明るい進歩発展を妨げ,又一方,そうした看護婦が如何に非人間的な条件のもとに利用されているかを描いてみたいと思います。

基本情報

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看護学雑誌
24巻2号 (1960年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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