連載 臨床の詩学 対話篇・5
ちっぽけな光景
春日 武彦
1
Takehiko Kasuga
1
1多摩中央病院・精神科
pp.66-73
発行日 2010年3月1日
Published Date 2010/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101599
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先日、新型インフルエンザ・ワクチンを接種したら、たちまち喘息がひどくなった。心身ともにあまり快調でない状態での接種がいけなかったのかもしれないが、とにかく十年ぶりの苦しさであった。噴霧式(エアゾル)の気管支拡張剤を吸引しても咳や痰が止まらないと、絶望的な気分になる。神も仏もないとはこのことだ、とすっかり弱気になる。夜も発作で眠れない。そんな病状が一週間も持続すると、永遠に治らないような気がしてくる。それでも無理に出勤すると、交感神経が緊張するからなのだろうか、職場では一時的に発作が軽快するのが妙に腹立たしい。
ギブアップして内科を受診した。ステロイドだろうと何だろうと、とにかく楽にしてほしい。診察室で、背中を丸めながらドクターに言った。
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