講座
蕁麻疹—その病態生理
高橋 晄正
1
1東大物療内科
pp.60-62
発行日 1960年2月15日
Published Date 1960/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911042
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蕁麻疹というのは,急激に発生する限局性の,赤い,盛り上つた,瘙い発疹であつて,その数も,強さも,持続時間もまちまちでありますが,いずれあとかたなく消えてしまうことが特徴であります。名前の起りは,いらくさ(蕁麻)に触れた皮膚が,丁度このような症状を呈することから来ているといわれています。
蕁麻疹の出ている部分の皮膚をよくしらべてみると,病変の起つているのは,真皮の乳嘴床の上層であつて,その部分の毛細血管は拡張し,その壁を透して血漿成分が滲出しているのを見ることができます。このような,毛細血管の拡張とその透過性の異常な亢進とは,ヒスタミンあるいはヒスタミン様物質が,局所の皮膚の組織の中で生成することによるものであるといわれております。じつさいに,ヒスタミンの1000倍溶液の0.1ccを皮内に接種しますと,蕁麻疹と全く同様の,赤くて瘙い一過性の丘疹ができるのです。ここにヒスタミンといわずにわざわざヒスタミン様物質というのは,その化学的性状は完全には明らかになつてはいないけれども,生物学的にはヒスタミンと区別できないような物質であることを意味しております。ヒスタミンの化学構造は次の通りですが,ヒスチジンという塩基性アミノ酸からCO2を除いたような形になつています。
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