特集 痴呆高齢者の転倒・転落事故は防げるか?
転倒・転落の危険度判定とケアプラン
鈴木 みずえ
1
1三重県立看護大学
pp.19-24
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100376
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はじめに
老年期痴呆症など,認知機能障害のある高齢者の転倒・骨折が多発している.さらに認知機能障害のある高齢者は,失行失認など周囲への適応・知的実行能力障害も加わることから転倒のリスクが非常に高くなっている.老人施設だけでなく,一般病院,特定機能病院などでも,痴呆症状を有する高齢者が治療目的で入院した際に転倒する事故が増えている.治療の経過に伴い,合併症として痴呆症を併発する場合もある.アルツハイマー型痴呆の高齢者などでは,身体機能は維持していても,徘徊,失行失認,焦燥など,痴呆特有の症状に関連した転倒が多くなっている.
介護保険制度の誕生と近年の高度情報技術(IT)の発達は,痴呆高齢者に関するケアの状況に変化をもたらした.徘徊などの症状を有する重度の痴呆高齢者であっても,通信衛星を使って居場所を探索することのできるITケアシステムの開発と実用化によって,残存機能を維持しながら在宅で過ごすことが可能になった.痴呆高齢者の過ごす場が在宅にシフトしていることは,同時に,デイサービス,デイケアなどの通所サービス,ショートステイなど短期宿泊サービスにおける転倒の増加の要因の1つになっている.
転倒は,危険度(リスク)をアセスメントすることによって,発生を予測できるといわれているが,痴呆高齢者の転倒予防においては,転倒のリスクアセスメントだけではなく,痴呆と痴呆に関連した症状の理解及び重症度判定が不可欠である.
そこで本稿では,痴呆高齢者の転倒・転落予防に関して,リスクアセスメント及び痴呆の理解の両面から,エビデンスを踏まえてケアの方向性を紹介していきたい.
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