特集 患者‘理解’とは—日々のかかわりのなかで
‘全人的理解’とは
岡本 玲子
1
1大和市立病院
pp.576-581
発行日 1976年6月1日
Published Date 1976/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917893
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
患者を理解しようと努めながら,自分の体験や観察に自信がもてず,本や論文をあれこれと調べるのはいつものことである.しかし,そこに余りにも多くのことがいろいろに言われていたり,用語が難解でしかも一義的なルールに欠けていたりして,期待が満たされた覚えはほとんどない.いたる所でつまずいてしまう.例えば‘全人的にとらえられたナーシング’‘包括的……’‘理解の上に立つ……’などなど.
‘全人的’ひとつをとってみても,どんなに難解なことか.例えば,古代の知恵は人間をスフィンクスのなぞの主題にしたのであったし,また‘汝自身を知れ’とはソクラテスが若い弟子たちに繰り返し告げた教えであった.そうした人間の特殊な状況にある患者という存在の理解とは?とにかく私自身の経験を整とんして,なんとか文章に仕立て上げるほかはない.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.