総合リハビリテーション 14巻6号 (1986年6月)

特集 慢性関節リウマチとその周辺

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 Ⅰ.慢性関節リウマチをどう考えるか

 慢性関節リウマチ(以下RAと異す)の病態の解析は,ここ一年未満の間に細胞工学の様々な手法を用いる事により,おおきな研究の進展をみせている.

 慢性関節リウマチの病態はこれまで一種のカオスの状態であったといっても過言ではない.第一の原因としては,RAという疾患の多様性である.自己免疫異常を背景とする典型的なRAから主としてプロテオグリカンの代謝や変性などの代謝異常に伴なう変性関節症に伴なう要素の強いRA,さらには,ライター病に代表されるような,微生物の感染と密接に関連を有すると考えられるリウマチ性疾患まで,基礎の病態が実に裾野が広いからである.ここでは,一応,自己免疫的な色彩の強いRAの病態がどのように解明されつつあるのか,また,そういった病態にもとづいてどのような治療計画がなされねばならないかについて述べてみたい.

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はじめに

 慢性関節リウマチの諸症状に対して,ステロイドは非ステロイド性抗炎症剤とは比較にならない著効を呈する.しかし,一旦投与を開始すると中止するのが難しく,また重篤な副作用を呈することがある.

 以下,慢性関節リウマチに対するステロイド療法の治療効果と副作用,それらと投与量との関係について検討し,ステロイド療法の適応についてまとめてみたい.

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はじめに

 リハビリテーションを効果的・効率的に行うためには,対象となる「障害」の特徴の総合的把握,すなわち「障害学」的見地からの検討が重要である.本稿ではまず慢性関節リウマチ(RA)の障害学的特徴について述べ,それに基づくRAのリハビリテーションの診断のポイントと基本的アプローチについて述べる.そして,これまで検討されることの少なかったRA患者の職業面についての検討結果を報告する.

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 Ⅰ.手術か保存治療か

 一般に,日常生活を自立して行えるリウマチ患者は,関節破壊があっても,疼痛が少なければ,運動制限には我慢して保存治療を望むものである.手術を希望する時は,関節の疼痛が我慢できないほど強いか,あるいは日常生活の障害が出始めて,自立がおびやかされだした場合で,患者はこの時にはじめて,心の準備をしたうえで,医師に判断を求める.

 ところが,患者もよく知っていることであるが,整形外科医は手術を勧め,内科医は保存治療を勧める.痛いといえば,手術という整形外科医と,手術は最後の手段というばかりの内科医に患者は不安をいだく.

 同じような関節破壊に対して,保存的に治療して疼痛の強い時期を乗り越えるか,あるいは手術的に除痛と関節可動域の改善を図るかは,かなり患者の人生観と,指導する医者の人生観に関係するので,治療法は患者ごとに当然違ってよいが,かかっている医者の専門によって,治療法が決まるのは患者にとって迷惑なことである.

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はじめに

 慢性関節リウマチ(RA)およびその周辺疾患の免疫学的問題のなかから,幾つかのテーマを選んだ.慢性関節リウマチの周辺疾患というと,極めて多数の関節有痛疾患があげられるが,とくに免疫学的問題が多く,興味深いものとして全身性エリテマトーデス(SLE)を取上げた.RAとSLEは膠原病の範疇に入り,その原型をなす疾患であり,しかも関節病変は極めて対照的であることからも臨床的に鑑別が大切なものである.すなわちRAの関節病変が破壊性の変形性関節炎であるのに対し,SLEでは非破壊性の非変形性関節炎を示すということである.

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 リハビリテーションセンター建設準備のため,丁度3年前に市役所勤務に代った.自分の齢ではやや勇気のいることではあったが,リハセンターを建設したい一心でこの道を選ぶことにした.堅固な縦割組織の中で,局際的な立場から「横割り」の関係を築くことは難しく,総合的なリハセンターの建設にはそれなりの苦労もある.それでも,行政組織の運営を垣間見ながら,“なるほど”と感心することが多く,貴重な経験をさせてもらっている.

 リハセンターの建設には150億円近い予算を必要としており,一般市民の立場から見れば,そう簡単に建設されても迷惑な話である.それだけに行政側も慎重で,私にとっては苛立たしいことも少なくない.その上,この苦労の結晶は国や市の政策や議会の思惑により,変容を迫られる可能性があるのだからたまったものではない.しかし,我々専門職と事務職の統一したチームワークの力が,着実な成果を生み出すことを実感し,満足もしている.

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はじめに

 高知県で脳性麻痺(以下CPと略す)の早期訓練を実施している子鹿園と他の2病院の協力で,昭和51年~58年に出生したCP患者について,昭和59年8月現在の時点で,特に早期発見,早期訓練との関連に重きをおいて実情を調査した結果を,2回に分けて報告すべく,前回には(その1)として,高知県のCPの発生,CPの合併症,CPの病型,危険因子の項目で発表したが,今回は(その2)として,初診時年齢,早期訓練の結果,子鹿園への紹介者―早期発見の手がかり―についての調査結果と,(その1)を含めたまとめについて述べる.

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はじめに

 市販「荷重ブレーキ膝」はブレーキ力の大きさなどの基本的性能が全く公表されておらず,実際の歩行におよぼす客観的,定量的影響の報告もほとんど行われていない.われわれは市販されている「荷重ブレーキ膝」について,以下の測定と調査を行った.

 1.市販「荷重ブレーキ膝」の静的ブレーキ力の測定

 2.歩行中の作動状況評価

 3.切断者の使用状況調査

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はじめに

 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は,特異な病態生理を呈し,睡眠中の突然死の原因となる1,2)だけでなく,臨床症状として不眠あるいは日中の嗜眠傾向などをひき起こす.近年になって,神経生理,呼吸生理などの基礎科学分野および,精神神経科,神経内科,小児科,耳鼻科などの臨床各科から幅広く興味を寄せられている疾患である.

 ここに報告するのは,中心型頸髄損傷による不全四肢麻痺患者に睡眠時無呼吸を観察したもので,突然死などの不幸な転機には至らなかったものの,昼間の著しい嗜眠傾向や易疲労感が機能訓練の阻害因子となったと考えられた一例である.

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はじめに

 リハビリテーション(全人間的復権)の究極的な目的はHandicap(社会的不利)の解決,そしてQOL(Quality of life)の可能な限りの向上といえよう.片麻痺患者のリハビリテーションにおいてこの点が現在どこまで実現されており,またその実現を妨げている条件は何であるかを知ることはリハビリテーション医学,特にその中心をなす障害学にとって非常に重要である.本研究はそのような視点から,まず成人男子をとりあげ,職業復帰を中心としたHandicapの解決状況を研究した.なお上肢・手指機能,ADL遂行能力,移動能力,高次脳機能等の職業復帰に対する影響についての当部における検討結果は既に報告1)しており,今回の対象でも大差なかった.

講座 治療の最近の進歩(6)

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はじめに

 近年の癌に対する制癌化学療法の成績は,決して飛躍的とはいえないが,着実に向上してきているといえよう.その要因としては,種々の新しい制癌剤の開発,制癌剤のpharmacokineticsの解明とそれに基づいた薬剤の投与方法の改善,さらに,いわゆる集学治療法の進歩などが指摘される.しかし,高度の進展癌や再発癌などの外科的切除の不可能な症例に対する化学療法の成績は今日なお,決して満足できるものではない.ここでは,固形癌の中でも消化器癌に対する化学療法に焦点をしぼって,現在の動向と問題点について述べたい.

講座 物理療法(6)

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はじめに

 日常診療において,疼痛は患者の主要な訴えの一つである.その表現は多種多様であり,痛みの性質が診断の手がかりになることも多いが,ともすると診断を誤らせることにもなりかねない.疼痛は主観的な現象であり,個人差も著しく,心理面を含めての十分な問診は正しい診断を導くための不可欠の要素である.Melzack & Wall(1965年)の門調節機構Gate control hypothesis以来,発痛物質・知覚神経終末における受容機構・興奮伝達とその制御機構・中枢神経系における識別機構などについて,その解明が試みられている.1973年,脳内に麻薬と特異的に結合する部位――opiate receptorの存在が確認され,次いでこれに結合する内因性鎮痛物質endorphinが発見され,疼痛に関する基礎的研究は著しい進歩を遂げている.これに伴ない,臨床においても硬膜内電気刺激療法などの新しい鎮痛法が行われている2,14)

 整形外科領域においても,疼痛は最も多い訴えであり,とくに腰痛疾患の占める割合は多い.進化の過程における宿命的疾患といわれる腰痛症は最もしばしば遭遇する疾患の一つであるが,腰痛を主訴とする患者の中には悪性腫瘍の骨転移も稀ではなく,また骨髄腫などの初発症状の場合もあることを覚えておかなければならない.病因・病態に対する深い理解は,有効な治療手段の選択を可能とし,腰痛の予防にもつながるものである.

 ここでは,その基礎的知識を概説し,腰痛に対する有力な保存的治療法である理学療法について説明する.

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 第1回中国四国リハビリテーション医学懇話会は昭和60年12月1日,川崎医科大学,医学資料館3階小講堂で行われた.

 今回は第1回でどのような形で行うべきか発起人で相談したが,学術集会の形で日本リハビリテーション医学会の中国四国在住の方々のみ案内状を発送した.

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 鈴木良平先生は昭和22年東大医学部を卒業,インターンを修了して昭和23年に整形外科学教室(当時の主任教授,故三木威勇先生)に入局されました.

 私は昭和26年に同教室に入局いたしましたが,そのころ先生は神経班に属し猛烈に勉強しておられました.とくに下肢の動作学に関心をもたれ,腱移行術に関する研究など筋電図学的な業績を沢山残しておられます.

一頁講座 運動学・6

肩甲帯 足立 徹也 , 大川 嗣雄
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 1.肩甲帯とは

 肩の運動には図1に示した如く,屈曲・伸展,内転・外転,内施・外施,水平外転・水平内転が定義されている.そしてこれらの運動は主として上腕骨,肩甲骨,鎖骨,胸骨,肋骨の間に形成される各関節の複合運動によって構成されており,これらの機構がまとめて肩甲帯(上肢帯,肩周辺機構)と呼ばれるものである.

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 本書は,<生活ケア>という新しい視点から,老人の医療・看護・リハビリテーションのありかたをとらえ直した本で,老人を,どのような身体障害をもっているか,という視点からだけでなく,その身体障害によってどのような<生活障害>を来たしているかという視点から,生活再建をめざすケアの理論と実践をまとめたものである.

 「飢え」と「病い」は生活上の大敵である.だから医学は本来もっと生活に密着していたはずであった.しかしこの「生活」が,私たち自身のものであるのに,玉ねぎの本態を知ろうと皮をむいていったら何もなかったというのに似て,きわめて難解な代物である.この得体の知れなさが「人間学」の遅れとなっているのだが,ミシェル・フーコーによれば,医学はとうの昔に生活から訣別しているという.生活への奉仕者がそれに無頓着となったら,病人はどんな扱いを受けることになるのか.

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文献抄録

編集後記 大井 淑雄
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 慢性関節リウマチとその周辺を専門的に扱う領域をリウマチ学と称するが,その認定医制度是非をめぐって最近までかなりもめていた.というのも事情がリハビリテーション医学と似たところがあり,内容が包括的な点もかなりあるために他の学会との関連を無視出来ないのである.そして全国すべての大学や研究所に必須のものかというとそうでもなくやはり特色がふさわしいところに設置されてよいものである.欧米でもすべての大学に存在するわけではないし本邦のような手狭のところでは地域別に1~数ヶ所で事足りるのではないか,そんな意見も聞かれたことであろう.

 しかしこの慢性関節リウマチという疾患をもし患者の側から見れば実に恐ろしいincapacitatedな疾患ということがわかるし,専門に新しい良い研究治療法の開発等が非常に切望されている分野であることがわかる.

基本情報

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総合リハビリテーション
14巻6号 (1986年6月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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