Japanese
English
講座 物理療法(6)
腰痛に対する理学療法
Physical Treatment for Low Back Pain.
三田 冨士雄
1
,
大井 淑雄
1
Fjio Mita
1
,
Yoshio Ooi
1
1自治医科大学整形外科・リハビリテーションセンター
1Department of Orthopeadic Surgery and Rehabilitation Center, Jichi Medical School.
キーワード:
腰痛
,
理学療法
Keyword:
腰痛
,
理学療法
pp.463-468
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105616
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はじめに
日常診療において,疼痛は患者の主要な訴えの一つである.その表現は多種多様であり,痛みの性質が診断の手がかりになることも多いが,ともすると診断を誤らせることにもなりかねない.疼痛は主観的な現象であり,個人差も著しく,心理面を含めての十分な問診は正しい診断を導くための不可欠の要素である.Melzack & Wall(1965年)の門調節機構Gate control hypothesis以来,発痛物質・知覚神経終末における受容機構・興奮伝達とその制御機構・中枢神経系における識別機構などについて,その解明が試みられている.1973年,脳内に麻薬と特異的に結合する部位――opiate receptorの存在が確認され,次いでこれに結合する内因性鎮痛物質endorphinが発見され,疼痛に関する基礎的研究は著しい進歩を遂げている.これに伴ない,臨床においても硬膜内電気刺激療法などの新しい鎮痛法が行われている2,14).
整形外科領域においても,疼痛は最も多い訴えであり,とくに腰痛疾患の占める割合は多い.進化の過程における宿命的疾患といわれる腰痛症は最もしばしば遭遇する疾患の一つであるが,腰痛を主訴とする患者の中には悪性腫瘍の骨転移も稀ではなく,また骨髄腫などの初発症状の場合もあることを覚えておかなければならない.病因・病態に対する深い理解は,有効な治療手段の選択を可能とし,腰痛の予防にもつながるものである.
ここでは,その基礎的知識を概説し,腰痛に対する有力な保存的治療法である理学療法について説明する.
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