書評
三好春樹(生活とリハビリ研究所)著―老人の生活ケア <生活障害>への新しい看護の視点
竹内 孝仁
1
1東京医歯大リハビリテーション部
pp.421
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105608
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本書は,<生活ケア>という新しい視点から,老人の医療・看護・リハビリテーションのありかたをとらえ直した本で,老人を,どのような身体障害をもっているか,という視点からだけでなく,その身体障害によってどのような<生活障害>を来たしているかという視点から,生活再建をめざすケアの理論と実践をまとめたものである.
「飢え」と「病い」は生活上の大敵である.だから医学は本来もっと生活に密着していたはずであった.しかしこの「生活」が,私たち自身のものであるのに,玉ねぎの本態を知ろうと皮をむいていったら何もなかったというのに似て,きわめて難解な代物である.この得体の知れなさが「人間学」の遅れとなっているのだが,ミシェル・フーコーによれば,医学はとうの昔に生活から訣別しているという.生活への奉仕者がそれに無頓着となったら,病人はどんな扱いを受けることになるのか.
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