臨床泌尿器科 52巻9号 (1998年8月)

綜説

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 間質性膀胱炎の成因はさまざまで,お互いにかかわりあっており,ひとつの疾患としてではなく恥骨上部の疼痛や頻尿,切迫感などを主訴とする症候群としてとらえるべきである。その診断には水圧療法も兼ねた麻酔下の膀胱鏡検査が有用であるが,明確な診断基準はなく,症状,病歴も含めて総合的に診断する必要がある。治療としては決め手はないが,個々の症例にあった治療法を選択すればある程度の効果は得られると考えられた。

手術手技 小児泌尿器科手術・8

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 主として筆者らが採用している異所性尿管(尿管異所開口)と尿管瘤(膀胱内型および異所性)の手術法を,経験に基づいて,また文献的知見を交えて概説した。異所性尿管と尿管瘤の病態生理は全く異質であること,また後者の膀胱内型と異所性尿管瘤では異所性尿管瘤の病態生理のほうがはるかに複雑であることを理解しやすいように記載した上で手術法を述べた。特に異所性尿管瘤は,今日では内視鏡的瘤切開術の見直しが導入され,治療方針に混乱が生じていることが否めない。その観点から,筆者らが経験した73例の本症手術の結果,検証を交えての考察と,手術選択についても叙述した。

 手術方法の詳細は,本来,術者固有の疾患把握,経験,技術などにより異なるため,異論も生じやすいが,この稿が読者の参考になれば幸いである。

セミナー 合併症をもつ患者の術前・術後の全身管理・10

感染症—HIV 安野 正道 , 森 武生
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 HIV感染者が急増している中で,医療従事者にとって日常診療においてHIV感染者に遭遇することが稀なことではなくなると思われる。また,強力な抗HIV薬が開発中であり,HIV感染者に対する手術療法の適応も拡大されることが予想される。しかし,HIV感染に対する正しい知識と感染予防に対する正しい処置の認識により,いずれの施設においても特別な処置を必要とせずに診療が可能である。

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 泌尿器科手術における同種血輸血を可能な限り回避するために,希釈式自己血輸血について検討した。全身麻酔手術22例(男性14例,女性8例)に対して希釈式自己血輸血を施行した。全身麻酔導入後に採取された希釈式自己血量は400〜1,000ml(平均691±190ml)であり,術中出血量は88〜3,950ml(平均1,230±1,030ml)であった。22例中17例では,希釈式自己血輸血にて出血を補うことができた。希釈式自己血の採血および返血に際して,全例で異常は認めなかった。多量の出血を伴う手術では術前貯血などの他の自己血輸血法との併用が必要となるが,希釈式自己血輸血は同種血輸血を回避するために安全で簡便で有用な方法と考えられる。

症例

胆嚢癌腎転移 原野 正彦 , 安東 定
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 83歳,女性。肉眼的血尿と右腰背部痛を主訴に当科を受診した。画像診断上,右腎腫瘍と診断され,根治的右腎摘出術を施行した。しかし,術中胆嚢に硬結を認め,また胆嚢底部は肝臓と癒着していたので,胆嚢摘出術・肝部分切除術を併せて施行した。病理組織診断は胆嚢原発の中低分化型腺癌であり,肝臓・腎臓は転移巣と診断された。転移性腎腫瘍が生存中に発見されることは比較的稀である。

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 [症例1]は66歳男性で,主訴は両頸部腫脹であった。頸部リンパ節生検で腺癌を認めたが,消化器系は異常を認めなかった。PSAが高値を示したために前立腺針生検を施行したところ,未分化型の腺癌を認めた。[症例2]は69歳男性で,主訴は左頸部腫脹と左下肢浮腫であった。消化器系に悪性所見認めなかったがPSAが高値を示したため,前立腺針生検を施行し,未分化型腺癌を認めた。両者ともホルモン療法施行後,リンパ節転移は著明な縮小を認めた。

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 症例は,67歳,男性。肉眼的血尿を主訴に受診した。膀胱頂部に非乳頭状広基性腫瘍を認め,経尿道的膀胱腫瘍生検術にて印環細胞癌と診断された。頂部またはそれに近い前壁に腫瘍が存在すること,腫瘍と正常粘膜上皮の境界が明瞭であること,他の臓器には腺癌を認めないことより,尿膜管由来印環細胞癌と診断し,拡大膀胱部分摘除術を施行した。術後経過は順調で,腫瘍の再発,転移を認めていない。

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 73歳,男性。膀胱癌にて放射線療法施行後,肉眼的血尿と頻尿が出現したため来院した。放射線性膀胱炎の診断にて小柴胡湯を内服し,症状は消失した。一時的に投与を中止したところ,再び血尿が出現した。凝固術後に内服を再開し,4か月を経過した現在,血尿を認めていない。小柴胡湯の投与は簡便で副作用もなく,良好な止血効果を有し,放射線性膀胱炎に対する有効な治療法と考えられる。

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 59歳,男性。主訴は心窩部痛。4年前,浸潤性膀胱癌に対して膀胱全摘除術,インディアナパウチ造設術を施行された。CTにて下腹部腸管外に液体貯留があり,DIPではパウチからの造影剤漏出が疑われた。インディアナパウチの自然破裂と診断し,抗菌剤を投与しストーマからカテーテル留置をしたところ,疼痛,発熱ともに軽快した。2週間後のreservoir造影では漏出はなく,また入院時のDIP所見は偽陽性と判明した。本症例の破裂の原因は,導尿の回数が減りパウチが過伸展されていたためと考えられる。

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 36歳,女性。膀胱刺激症状と下腹部痛を主訴に受診し,多発肺転移を伴う骨盤内ユーイング肉腫と診断された。化学療法,放射線療法にて腫瘍の縮小がみられたため前方骨盤内臓全摘除術を行ったが,早期より骨転移がみられ,術後3か月で癌死した。

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 症例は68歳,女性。27年前,甲状腺癌にて甲状腺亜全摘除術を施行。経過観察中,腹部CTにて径3.5cmの左腎腫瘍を指摘された。左腎摘出術を施行し,病理検索により濾胞状甲状腺癌腎転移の診断を得た。過去に,転移性腫瘍に対して左骨盤半切除術,両側肺部分切除術が行われている。

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 41歳,女性。発熱,右腰部痛を主訴に近医を受診した。腹部エコー,腹部CTで右腎腫瘍を疑われ,当科へ紹介され受診となった。腎動脈造影で無血管像の腎腫瘍と診断し,経腹式右腎摘出術を施行した。病理組織学的には後腎性腺腫と診断した。本例は,後腎性腺腫として本邦6例目の報告と考えられる。

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 患者 48歳,女性。

 入院目的 糖尿病精査。

 既往歴 特記すべきことなし。

 現病歴 1997年12月に当院健診センターにて高血糖を指摘され,糖尿病の診断および加療目的で12月29日に当院内科へ入院した。入院時の立位腹部X線撮影で,左横隔膜下に腎の上極と接するように円形の腫瘤様陰影と,その内部下方に線状の石灰化像を認めたため,当科紹介となった(図1)。

 現症 腹部所見に異常はなかった。

 検査成績 尿検査pH6.0,尿糖(3+),尿潜血(判),沈渣 蓚酸カルシウム結晶,BUN16.6mg/dl,CrO.5mg/dl,UA 2.1mg/dl,BS389mg/dl。腹部CTスキャンでは左腎上極より内上方に突出する径6cmの辺縁,境界明瞭な嚢胞性病変と,その内部に水平面を呈する石灰化像(いわゆるmilk of calcium sign)が認められた(図2)。嚢胞内部は造影されず,尿路との交通はみられなかった(図3)。以上より,milk of calcium renal stone,cystic typeと診断した。Milk of calcium renal stoneのcystic typeは特に症状がなく,腎機能悪化の所見も示さず自然消失の例もみられることから,治療を行わずに経過観察のみとした。

学会印象記

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 サンディエゴにおいて1998年5月30日から6月4日の6日間にわたり開催された米国泌尿器科学会総会(AUA)に,2年ぶりに参加いたしました。名古屋大学からは私の他に大島教授,小野助教授と若手の先生2人が出席いたしました。このたび学会印象記を書かせていただくということで,urodynamicsおよびfemale urologyを中心に,私の見聞きしたことや学会の印象を述べたいと思います。

 今回のAUAでは約1,300題の演題がありましたが,UDS,female urologyに関するものは約170題でした。尿失禁についての発表は約50題あり,そのうち手術に関するものが40題と大半を占め,治療,特に外科的治療が話題となっている印象でした。さらに,手術治療の中ではスリング手術に関するものが19題と圧倒的に多く,Stamey手術に関するものが4題,人工尿道括約筋の演題が5題ありました。他方,2年前のAUAで話題の的となっていた注入療法の報告は3題のみで,また保存的治療の報告はほとんどなく,演題数のみではなんともいえませんが,尿失禁治療についての流行や関心の移り変わりを感じました。下部尿路機能に関する基礎的研究の発表は50題弱ありました。

病院めぐり

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 北海道の南端部に位置する函館市は,横浜,長崎とともに日本最初の貿易港として栄えました。様々な異国文化がいまなお息づいており,当時の面影を色濃く残す歴史的建造物が百年以上の風雪に耐えて路地裏にひっそりと佇んでいます。また,函館山頂上からの夜景は圧巻で,世界三大夜景の1つとされています。

 市立函館病院は,そんな函館山のふもとに位置し,ハリストス正教会,旧イギリス領事館,元町公園など,多くの観光施設のまっただなかにあります。地上5階建の病室の窓からは函館湾が一望でき,夜ともなると湾内の多数の漁火が美しく,患者の痛みを癒してくれます。

市立旭川病院泌尿器科 大塚 晃
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 旭川市は,秀峰 大雪山(旭岳)連邦を仰ぎ見る上川盆地の中心に位置する人口37万人の都市です。北海道で2番目に大きな都会であり,層雲峡をはじめとする温泉群に囲まれ,丘陵美を誇る美瑛とも隣接する観光の町です。また,旭川医科大学のほかに4つの公的医療機関がある"医療の町"でもあります。

 当院は,昭和5年に旭川市立診療所として開設され,たびたび移転を経験して昭和20年7月に強制疎開により現在地(金星町1丁目)に移転しました。数次にわたる増改築を繰り返し,昭和45年に胸部外科,泌尿器科,麻酔科を新設し,総合病院としての機能をほぼ揃えました。その後,昭和47年に研修指定病院,旭川医科大学関連教育病院協定病院となりました。

交見室

がん告知について,他 三浦 猛
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 本誌52巻1号に掲載された鈴木康之先生の「癌告知後,妄想を伴ったうつ状態を呈し自殺した尿路上皮腫瘍の1例」(臨泌52:37-39)および52巻7号の交見室での井口正典先生の「がん告知について思うこと」(臨泌52:539)を拝読し,私も意見を述べさせていただきたいと思います。

 私の病院はがんセンターであり,来院する患者は原則としてがん専門病院と認識して受診していると考えられますので,一般の病院とは少し事情が異なると考えています。さて,井口先生のご意見には全く同感で,私も「告知」という言葉は好きではありません。「告知」とは本当の病名を説明することなのですが,どなたかもっとよい表現(言葉)があればお教えください。そして,お互いの信頼関係の中で適切な5W1Hが大切であるとのご意見にも同感です。患者に本当の病名を説明するやり方は1人1人異なりますが,基本的にはできるだけ早い時期にわかりやすい言葉で繰り返し段階的に伝えるべきですし,その反応を家族を含め,関係する医療従事者が温かく見守る必要があります。

基本情報

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臨床泌尿器科
52巻9号 (1998年8月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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