臨床泌尿器科 45巻8号 (1991年7月)

特集 人工材料・人工臓器

カテーテル 田島 廣之 , 隈崎 達夫
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はじめに

 この数年におけるカテーテルの進歩・発展には目覚ましいものがあり,様々な工夫や新しい開発が試みられている.本稿では,特に泌尿器科領域における血管造影用カテーテルの最近の進歩について述べる.

ドレーン,ステント 北川 龍一
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はじめに

 泌尿器外科において,ドレーンとステントは欠くべからざる材料である.特に,ドレーンはややもすれば安易に考えられがちであるが,設置する場所,ドレーンそのものの機能によっては折角うまくいった手術も思わぬ経過をたどることがある.また,ステントも適したものを選ばないと,かえって尿の流通を妨げるような結果をまねくおそれがある.このような意味から,ドレーンひとつにしても,手術に使う縫合糸などと同様に十分吟味して選ぶことが肝要と思われる.

 現在では,ドレーンにせよステントにせよ多くのメーカーが色々な種類の製品を販売しているので,到底これらすべてを網羅することは不可能である.本稿では.むしろ著者の使用経験をまじえて,使用者側の立場に立った商品の紹介を行うことになろうと思うので,多少独断と偏見があるであろうことを,予めお断わりしておく.

縫合糸 青木 紀道
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はじめに

 吸収性縫合糸は腸線カットガット,非吸収性縫合糸は絹糸とせいぜいナイロン糸に代表された頃に比し,現在は化学合成糸全盛となり,個々の目的に適した材質の縫合糸が創り出され,その種類も増加した.一方,手術の進歩はとどまることを知らず,複雑多岐な手術操作をこなすには組織に適した縫合材料を選び,たくみに使い分けてより完全な癒合と治癒をはかることが必要になってきたと考えられる.そのためには各種縫合糸の物理的特性や組織内性状などに知識を深め,より選択の幅を増やしておくことも必要であろう.筆者は泌尿器科手術には素人であり,使用適応などについては読者の判断におまかせするとして,拙文がその一助になれば望外の幸せである.

 表1に現在試験段階のも含め使用されている縫合糸の種類と名称などを示した.本文はこの表にしたがって概説を加えてみたい.

マーレックスメッシュ 山田 崇之
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はじめに

 初期のマーレックスは1958年にBaylor医科大学外科のUsher教授1)によって開発され,平織のポリエチレンであったが,1962年には編まれたポリプロピレンメッシュが開発され,現在では多数症例で鼠径ヘルニア再発および術後瘢痕ヘルニア1,2),肺癌では胸壁合併切除術時の胸壁欠損などの再建に使用されている.

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はじめに

 尿路性器領域におけるプロステーシスは形成外科的観点より,むしろ機能性を重視した観点から発展してきた.なかでも性交を目的とした陰茎プロステーシス,また尿失禁の治療を目的とした人工括約筋はここ10数年の進歩改良と共に近年本邦でも普及しつつある.また精管欠損症や精路閉塞症の不妊症患者に対する人工精液瘤1)なども試みられているが,その低い妊孕性を考えればまだ本当の意味の機能性プロステーシスの意義を満たしていない.一方除睾術後の義睾丸は形成外科的観点から発展したものである.しかし,除睾術後に義睾丸を希望する患者はそれほど多くはなく,むしろ類宦官症の若年者や両側除睾術後などの患者に対し,アンドロゲン補充を目的としたホルモン徐放性義睾丸2)などが現在開発中である.ここでは近年,本邦でも一般的な治療法として確立しつつある人工括約筋および陰茎プロステーシスについて述べる.

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 内シャント作成の際の麻酔は,通常局所麻酔が用いられるが,疼痛に対する反応は個人差が大きく,時に患者の協力が得られず,手術の進行に支障をきたすことまである.そこで我々は,本手術の際に腕神経叢ブロックを用い,手術に対する無痛効果を高めているので紹介する.

 仰臥位で,顔を健側に向け,胸鎖乳突筋の外側やや深くに触れる前斜角筋の後縁にあたる部で,鎖骨中央の上縁から約2横指上の部位から,皮膚に直角に刺入する.指先までの放散痛を訴えたら,そのまま針を固定して局麻薬を注入する.局麻薬の使用量は,手術が短時間の場合,2%カルポカイン20ml,長時間の場合,2%カルボカイン10ml,0.5%マーカイン10mlの計20mlを用いている.

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 経尿道的前立腺切除術後出血に対して,生理食塩水を用いた膀胱灌流(生食灌流)よりもトロンビン添加生理食塩水を用いた膀胱灌流(トロンビン灌流)の方がより止血効果が高いようであるという報告がなされている.しかし個々の患者の凝固因子にばらつきがあり,また術者の習熟度や前立腺の切除量もまちまちであり,出血の背景や程度に差が生じるため数多くの症例を用いた生食灌流とトロンビン灌流の2群間検定にても有意差を得るには至っていない.

 筆者らは前立腺肥大症による尿閉のため,あらかじめ3way Foley catheterを留置した84歳の患者に,5%以上の肉眼的血尿が数日間続いたため,A生食灌流とBトロンビン灌流(ワーナー・ランバート社製トロンビン局所用5000単位×5本/生理食塩水500ml)とを125ml/hの注入速度にてABABの順にて交互に2回ずつ行い,各灌流の終了直前に灌流排液を約5mlずつ試験管に採取し,冷所保存し翌日試験管内容の肉眼的観察(図)と攪拌後のHct値を測定しトロンビンの有用性を評価した.

手術手技 剥離・展開法・1

腎動静脈 有吉 朝美
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 腎の手術のポイントとしては,1)適切な体位,2)筋弛緩の利いた麻酔,3)良いアプローチ,4)創内視野の巧みな確保,5) Gerota膜と腹膜の分離,6)周囲臓器の熟知,7)腎茎血管の安全な剥離,が大切である.解剖学をくり返し勉強するとともに,自分自身が執刀者となって熱中し,次の機会には手術助手として冷静に観察する.この繰りかえしが最も効果的な上達法である.見学の際,器械を持った術者の右手(利き腕)の派手な動きよりも,左手がどのように動いて視野を広げ,組織を確認し,安全と危険の識別に大役を果たしているかを注目すべきである.

 本稿では,腹壁が開かれた後の腎茎部へのアプローチについて述べる.

講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・26

女性尿道 佐藤 達夫
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 女性尿道は男性尿道と異なるところがあり,またさほど複雑でない(図1).まず短い.教科書では3〜4cmと記されることが多いが,日本人の生体の調査では平均36mm(23〜54mm)であり,例数全体の7割強が31〜40mmの範囲に収まるという1).女性尿道は全長にわたり生殖器から分離して独立しており,また陰茎のように体表に露出していないので,男性尿道の後部尿道にしか相当しない.また前立腺のようにかたい構造物で囲まれた区間をもたない.

 女性尿道の口径は7〜8mmほどあり,拡張性に富み,2〜2.5cmの太さに広がる弾力性をもつ.したがって,平静時には食道や尿管に似て内腔には縦ひだが走り(図2)2),粘膜の表面は互いに接し,断面は星状に見える.

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 体外衝撃波腎砕石術を施行した患者のうち尿管留置ステントを挿入した18例について留置期間で,A群:4週以下(n=8),B群:4週から8週(n=4),C群:8週以上(n=6)に分類し,内腔の変化を解析した.尿管モデルによる疎通テストでは,A群で46%,B群で35%,C群で30%に流量が低下した.X線撮影では,60%にステント内腔に石灰化像を認めた(C群では100%).ステント内腔の変化は砕石後早期より始まり,とくに8週以上留置するとステントの機能が期待しえないと考えられた.

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 腎盂尿管癌160例について静脈性尿路造影,逆行性腎盂造影,X線CT,動脈撮影法の各種画像診断法の所見からみた診断率およびその異常所見と予後の関連について検討した.腎盂尿管癌の初期画像診断法の基本は,依然として静脈性尿路造影法である.逆行性腎盂造影法はカテーテル挿入不能例がある点が問題である.X線CTは腎盂尿管癌の初期診断法としては限界があったが,腫瘍の拡がりみるのに有用であった.各種画像診断所見と予後の関連では,予後不良な所見は静脈性尿路造影では腎の無造影,逆行性腎盂造影法ではカテーテルの挿入不能例を含めた逆行造影不能例であった.

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 52歳,女性.切迫性尿失禁と頻尿を主訴に来院.尿路結核後遺症のため,右尿管は全長にわたる多発性狭窄を,左尿管は中部以下に多発性狭窄を認め,膀胱は著明に萎縮していた.右腎部分切除,右腎を右腸骨窩へ移植,回盲部膀胱拡大術(右腎盂・拡大膀胱端側吻合,左尿管・拡大膀胱端々吻合)を施行した.術後5年結過した現在,頻尿,切迫性尿失禁は共に消失しており,両側水腎は改善を示した.

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 51歳,女性.右背部痛を主訴に当院内科を受診.超音波検査で右腎被膜下血腫を疑われ,当科を紹介された.DIP,逆行性腎盂造影,CTで右腎被膜下血腫,水腎症,尿管狭窄を認めた.入院後の検索で上行結腸癌,その肝転移が疑われ,上行結腸癌の尿管浸潤による腎被膜下血腫,水腎症と診断.回盲部切除,右腎尿管摘出術を施行した.病理診断は上行結腸の中等度分化型腺癌,その尿管および後腹膜腔浸潤で,腎では被膜下に出血を認めた.

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 患者 16歳,男性.

 主訴 無症候性肉眼的血尿.

 家族歴 特記すべきことなし.

 既往歴 12歳,胃潰瘍.

 現病歴 1989年3月,無症候性肉眼的血尿が出現したが,放置していた.6月検診にて顕微鏡的血尿を指摘されて,近医を受診した.CT,超音波検査にて後腹膜腫瘍を発見され,当科入院となった.

日本泌尿器科臨床史・4

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 故高橋明先生(1884.11.5〜1972.3.12)については,日泌尿会誌63巻8号(1972)に高安久雄先生による追悼文があり,さらにご逝去のすこし前に市川篤二先生が「師を語る」という一文を医海時報に寄せておられる.

 高橋明先生が東京帝国大学教授時代(1927〜1945)に著わされた二つの図譜は,日本泌尿器科学史上屈指の名著であるが,今回はその一つ,『膀胱鏡図譜』をとりあげてみたい.

病院めぐり

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 高知県立中央病院泌尿器科が岡山大学関連病院として開設されたのは,1963(昭和38)年で,以来,難波,松村,東野,荒木,近藤,高本の諸先生方が担当され,1982年4月から池が担当しています.1988年に瀬戸大橋が開通するまでは,岡山から宇野線,宇高連絡線,土讃線と乗り継いで,約6時間かけて赴任し,地方会その他の行事にも6時間かけて出席していました.瀬戸大橋が開通してからは随分便利になり,3時間たらずで,行けるようになっています.

 1976年に高知医科大学関連教育病院となり,高知医大ともつながりができました.もっとも医大開設時の現藤田教授,前近藤助教授ともに岡山大学の先輩になられますので,新しくつながりができたという感じでは全くなく,以前から通っていた感じで医大に出入りさせてもらっています.関連教育病院であるため,医大生の5年生から6年生が毎年9月から翌年7月まで本院に実習に来ます.学生の頃を思い出しながらポリクリ,病棟実習,オペ見などを行っています.

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 三方を海に囲まれた青森県は,美しい自然に恵まれ,ここに生活する人々は,豪雪とヤマセという宿命的気候にもめげず,人情も厚く,粘り強い.強情な一面もあり,俗に津軽のジョッパリと言われる.毎年夏に行われる青森ねぶた祭りは,世界の火祭りとしてすっかり有名となった.青森県立中央病院は県庁所在地青森市の東部,造道にあり,診療科は20科で,ベッド数740床の総合病院である.この病院のルーツは1873(明治6)年設立の済衆社とされている.その後幾たびかの変遷を経て,戦時中の1944(昭和19)年に開校された青森医専の附属病院となったが戦災で全焼し,戦後の1947(昭和22)年に青森医専は弘前市に移転し,現在の弘前大学医学部附属病院となった.また1952年に県は青森県立中央病院として青森市の中央部長島に再発足させた.しかしこの病院も老朽化し,1981年9月に現在地に新規移転した.地上10階の白い巨体は,すべてがゆったりとしている.「県病」の名前で親しまれ,県民の厚い信頼を受けている.この地方最大の第三次中核病院であり,各学会からの専門医研修施設の指定を受けている.病院の最大の努力目標は,患者の診療,看護などを最優先させるという点である.したがってどの診療科も忙しく,医師は患者の診療に追いかけ回されているが,経営上は大きな赤字を抱え,悩んでいる.

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 膀胱全摘後の尿路変更法は,長い間の回腸導管全盛期をへて患者の"生活の質"の向上という社会的,医学的要求により,最近では自己導尿による尿禁制型のコックパウチ法やインディアナパウチ法にかわってきつつあります.

 我々の教室でも1986年よりコックパウチ法を始め,1989年末までに9例施行しましたが,自己導尿の困難な症例や水腎症出現症例を経験し,それ以後はインディアナパウチ法に変更し,65歳以下で本術式に理解を示し積極的な社会活動を行っている患者さんを対象として本術式を施行しています.本術式は,採尿袋の装着の不便さもなく,確かに患者さんの社会生活における"生活の質"の向上に役立っていると思われます.しかし,本術式における一番大きな問題は,自己導尿を一生つづけていかなければならないことにあると思われます.インディアナパウチ法では,現在まで自己導尿操作においてカテーテル挿入はスムースに施行出来,肥満体の患者さんにおいてもとくに問題はないようです.

基本情報

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臨床泌尿器科
45巻8号 (1991年7月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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