病院 79巻6号 (2020年6月)

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病院運営において,事務長に求められる責務は年々重要度を増している.

福井県済生会病院事務部長として「済生会クオリティマネジメントシステム」を導入し,経営と組織マネジメントの改善に携わった齋藤氏に,事務長はどう育て,どうあるべきかを聞く.

特集 できる事務長の育て方

巻頭言 川原 丈貴
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 最近,事務長を紹介してくれないかという話をよく耳にする.なかなか良い事務長に出会うことができないのが実情であろう.

 なぜ「できる事務長」が求められるのであろうか.病院を巡る環境は激変しており,従来から取り組みが求められていた医療の質の向上や病院のネットワーク化,医療従事者の確保などだけでなく,地域医療構想や働き方改革,そして直近では新型コロナウイルス感染症への対応も求められている.いろいろな病院を見てきて,このような環境の下,伸びている病院には特長があると感じている.例えば,経営状況などを数字で客観的に判断でき,病院長と事務長が危機感を共有できている病院は伸びている.ヒト・モノ・カネ・情報を最大限活用し,多岐にわたる課題に対処するためには,病院長と思いを同じくし補完し合える「できる事務長」が求められているのであろう.

事務長の役割とは 佐合 茂樹
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●本稿では,事務長の役割を,使われる立場と使う立場から論じ,心得ておきたい役目について私見を述べる.これは,筆者のこれまでの経験上の話と自身が日頃から考えていること,そしてあるべき論としての個人の「思い」である.

●事務長の役割を制限するものとして,権限委譲のみでは通らない組織規律が存在する.事務長の立場であっても権限委譲の範囲なら自由に何をしてもよいというものではなく,理屈通りにやれないことは多々ある.

●部下の育成では,専門的な業務よりもマネジメント能力を伸ばすこと,日常の仕事を通して管理職としての経験を積ませることに重点を置くことが賢明だと思う.

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●医療不信,少子高齢化,医療費抑制など近年の医療環境の変化は激しく病院経営の厳しさは増している.

●これに対応して進化すべき病院機能の中で「事務力」の占める重要性が増しており,総括する事務長への期待も大きい.

●経営戦略,組織運営,多方面とのコミュニケーション,職員教育など,事務長に要求される能力は多種にわたる.

●医療のプロである院長・副院長と経営のプロである事務長との親密な連携が最も重要と考える.

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●筆者が経営に関わり始めた当時,最大の課題は職員の定着率を上げることであった.そこで,アンケート調査により実態把握と問題解決を進めた上で,教育の充実を図った.

●整形外科単科病院として何かできることはないかと考えた中で,“からだの音プロジェクト”がスタートした.地域への貢献と共に病院のブランディングにもつながった.

●医師でない理事長だからできることは何かということを考え,決断,実行した.経営者として“当たり前のことを当たり前にできること”と合わせて“創意工夫”が必要とされる.

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●医療を特殊な事業として捉えるのではなく,「特性」として要素に分解する.

●医療職とのパートナーシップ構築のため,リーダーシップとマネジメントの違いに着目する.

●「非営利組織は変革に弱い」と言われている中で,多様性のある経験を強みとして発揮する.

●経営数値を使ったデータ分析を医療現場で活用してもらうため,医療職の動機付けを理解し,議論ではなく対話を心がける.

●医療現場の「特性」を実感するため,実際に現場に立ち,改善指導を通じて声に耳を傾ける.

●医療制度などの知識を吸収する機会として,外部審査への対応でマネジメントに関与する.

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●現在の高度専門化した医療専門職の協働を成功させるには,高い調整能力が必要であり,チーム医療を支えるインフラとしての事務系職員育成は必達課題となっている.

●その事務職員には“万能人”が求められており,その育成はプログラムに基づいて組織的に行う必要がある.そこで,社会医療法人愛仁会での実際の取り組み状況を具体的に紹介した.

●事務部門における専門化と効率化の過剰な追求は組織の縦割を招き,そのタコツボ化した組織は病院機能を支えられない.医療人として共通の精神と理念を有する事務系職員を育成することが,現在の医療制度改革を乗り切るカギになる.

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●病院最大の資源は「人財」であり,人財育成の基本は「接遇」である.

●なりたい将来像を照らす道標として「キャリアパス・キャリアラダー」を体系化している.

●人財育成によって事務職のプライドを醸成し,次世代リーダーを育成したい.

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●医療業務以外は事務職が行うようにした方が病院の経営・運用はうまくいく.しかし,事務職員の戦力化には教育が不可欠であり,またその質および永続性・効率性担保の観点から,それを1病院で実施するには限界がある.

●特に事務長の育成のためには,全国の公私の病院から希望者を募って,病院収入増加やコスト削減,医療スタッフ確保などの病院経営上必要な具体的・実践的な方法論を集合教育の形で教えていくことが望ましい.そのため,今年度から病院経営者(事務長)育成塾をスタートさせることにした.

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■はじめに

 従来の健康保険証とは違い,顔写真が掲載され,ICチップがあるマイナンバーカードの仕組みを利用し,令和3(2021)年3月から,マイナンバーカードを健康保険証として利用できることとなる.

 各医療機関は,社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会が構築している「オンライン資格確認等システム」とつながる.患者が,医療機関の窓口にある顔認証付きカードリーダーに自分のマイナンバーカードを置くと,マイナンバーカードのICチップを通じて,確実な本人確認と加入する保険の資格確認がオンライン資格確認等システムからできる仕組みだ.

 この仕組みが実現すると,医療機関の窓口での保険証入力作業や資格過誤による返戻レセプトへの対応作業が極力解消されることになる.また,患者本人から同意を取得した上で,患者自身の過去の薬剤情報等をかかりつけ医に提供することも実現できる.他にも,患者は,高額療養費の限度額認定に関する認定証の情報も取得できることとなる.

 医療機関の窓口や診療の現場など,医療機関での受診の流れを大きく変える一方で,従来はできなかった,より充実した診療環境が提供される可能性のある仕組みが「マイナンバーカードの健康保険証利用」であり,「オンライン資格確認等システム」である.本稿では,マイナンバーカードが健康保険証になることに関する全体像をオンライン資格確認等システムの内容とともに紹介する.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・66

鳥取県立中央病院 岡本 和彦
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■はじめに

 鳥取県立中央病院は,1891年に設立された私立因幡病院を源流とする歴史ある病院である.戦中に日本全土の医療施設普及を目的につくられた日本医療団により鳥取県中央病院となり,医療団が戦後解散したのに伴い,1949年に鳥取県に経営が移管され,現在の鳥取県立中央病院が発足した.

 現在の敷地に移転したのは1975年であり,今回の建て替えはその築43年の建物の敷地内解体新築である(図1).この旧建物というのが建設当時,建物とその運用が大きな話題となったため,本稿では旧建物との比較を通じて論じたい.

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■はじめに:札幌市東区の状況

 今回紹介する東苗穂病院のある札幌市東区は,同市北区に次いで人口の多い地区で,2019年10月現在で129,152世帯,総人口264,164人(男:125,607人,女:138,557人)が居住している1).人口が増加している地域であり,2010〜2015年の人口増加率は2.36%で,その主たる要因は人口流入による社会増である.高齢化率は2015年現在で23.6%であるが,図1に示したように2045年まで増加が続き,65歳以上人口の割合37%,75歳以上人口割合21%になると予想されている2).図2からも明らかなように,高齢者人口が数としても増加するために,医療および介護需要は2015年を100とすると,それぞれ2045年には124,174まで増加する(しかも,増加傾向は継続する)2)

 表1は,2017年度のNDBデータを用いて札幌市の各区の入院および在宅関連の年齢調整標準化レセプト出現比(Standardized Claim Ratio:SCR)を見たものである3).東区は一般病棟,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟に関しては十分な提供量があるが,療養病棟に関しては少なくなっている.また,在宅関連は提供量が多い.療養病棟への入院が必要な高齢者は他地域に入院していると考えられるが,住み慣れた地域で「時々入院,ほぼ在宅」の体制を構築していくためには,慢性期の患者の地域での受け入れ態勢を今後強化していくことが必要であると考えられる.図2からも明らかなように,東区では今後介護を必要とする高齢者が急増すると予想されること,病床過剰地域であり療養病床の増床は難しいことなどを勘案すると,地域包括ケアの体制づくりが急がれなければならない.

 このような都市部における高齢化に対応するためには,地域包括ケアに積極的にコミットする病院を中心にシステムづくりを行うことが実際的であると筆者は考えている.本稿では,札幌市東区で地域包括ケア体制構築に積極的に取り組んでいる豊生会東苗穂病院の実践について報告する.

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■感染症は過去のものではない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威が世界を覆っている.グローバル化によるヒト,モノの移動もあって,医学・医療の領域だけでなく,社会的・経済的にも大問題となっている.

 COVID-19に関する学問的な解説や診療のポイント,症例報告などは,他の雑誌やネット記事で数多く見ることができる.そんな中で,筆者自身はウイルス学の専門家でも臨床家でもない.病院における危機管理やBCPなどについてそれほどの知識・経験を持ち合わせているわけでもない.しかしながら,30年余にわたって,厚生省(厚生労働省)や地方衛生行政に携わった経験がある.そこで,本稿ではCOVID-19について公衆衛生学的視点・社会学的視点から書くことにした.

連載 医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・6

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,「医療崩壊」が起こる可能性さえ出てきた.もはや対岸の火事ではなく,いつ起こってもおかしくはない状況だが,それでも労働基準監督署などの法令順守の考え方は揺るがないのだろう.重症感染症患者が集中する医療機関などでは,例えば36協定の範囲内でしか勤務できないと承知していても,人命を優先するためには働き続けざるを得ない状況が生まれてくるかもしれない.果たして,「医療従事者の労働時間が法令違反となる上限を超えるため患者を受け入れません」ということが言えるのだろうか.しかし,疲弊した医療従事者への感染が広がれば,さらに悲劇的な状況となるだろう.それを阻止するためには十分な休養が求められることも理解しなければならない.あらゆる知恵を結集させて,患者を守り,医療従事者を守る最善の対策を考えなければならないことだけは確かだ.

 従前から,医療機関においては,医師および他の医療従事者の絶対数の不足,地域および診療科の偏在,医療機能の分化が不明確であるなどの要因で,厳しい労働環境に置かれ,労働基準法を遵守したくてもできない状況があった.しかし,法律はそれを許さない.特に,労働時間の制限,時間外割増賃金の支払い,休日・年次有給休暇の付与,当直などの問題は,どの医療機関でも多かれ少なかれ存在する.こうした諸問題に対して,労働基準監督署が是正勧告を通して改善を求めてきた.そこで今回は,是正勧告および是正報告の実例を通して,病院等の医療機関が抱える勤務環境上の問題を提示し,改善のヒントにつなげたいと思う.

連載 多文化社会NIPPONの医療 外国人患者受け入れの課題解決Q&A・33

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 2020年4月末の時点で,日本は新型コロナウイルス感染症の流行を食い止めるために,全ての都道府県に緊急事態宣言が出ている.外出や店舗の販売活動について自粛するよう呼び掛けられ,通常とは異なる生活や他者との距離の取り方に戸惑っている人も多い.医療もまた,通常とは異なる対応をしなくてはならない状況がある.グローバルな感染症によって起きている問題を,現場から寄せられている質問・相談を紹介しながら共有したい.

連載 病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・2

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■アプローチ

 希望する治療を打ち切られた,薬がもらえないという患者の不満はしばしば聞かれます.保険診療は必ずしも,受けたいと思う医療をカバーしているとは限りません.患者により良い医療を届けたいと思った時に,不便や歯痒さを感じた経験をお持ちの方は少なくないと思います.

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基本情報

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病院
79巻6号 (2020年6月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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