連載 医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・6
医療機関の是正勧告・是正報告からみる改善例
福島 通子
1
1塩原公認会計士事務所
pp.470-475
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211213
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,「医療崩壊」が起こる可能性さえ出てきた.もはや対岸の火事ではなく,いつ起こってもおかしくはない状況だが,それでも労働基準監督署などの法令順守の考え方は揺るがないのだろう.重症感染症患者が集中する医療機関などでは,例えば36協定の範囲内でしか勤務できないと承知していても,人命を優先するためには働き続けざるを得ない状況が生まれてくるかもしれない.果たして,「医療従事者の労働時間が法令違反となる上限を超えるため患者を受け入れません」ということが言えるのだろうか.しかし,疲弊した医療従事者への感染が広がれば,さらに悲劇的な状況となるだろう.それを阻止するためには十分な休養が求められることも理解しなければならない.あらゆる知恵を結集させて,患者を守り,医療従事者を守る最善の対策を考えなければならないことだけは確かだ.
従前から,医療機関においては,医師および他の医療従事者の絶対数の不足,地域および診療科の偏在,医療機能の分化が不明確であるなどの要因で,厳しい労働環境に置かれ,労働基準法を遵守したくてもできない状況があった.しかし,法律はそれを許さない.特に,労働時間の制限,時間外割増賃金の支払い,休日・年次有給休暇の付与,当直などの問題は,どの医療機関でも多かれ少なかれ存在する.こうした諸問題に対して,労働基準監督署が是正勧告を通して改善を求めてきた.そこで今回は,是正勧告および是正報告の実例を通して,病院等の医療機関が抱える勤務環境上の問題を提示し,改善のヒントにつなげたいと思う.
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