病院 78巻9号 (2019年9月)

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病院が持続可能な運営をしていくためには,多様な関係者が意思決定や合意形成をしながら組織の秩序をつくっていく必要がある.

ガバナンス強化によって病院はどう変わったか,院長としてのご経験をうかがう.

特集 ガバナンス改革で変わる病院

巻頭言 伊関 友伸
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 最近,病院の現場でも「ガバナンス」という言葉がよく使われている.「ガバナンス」は,企業の統治(コーポレートガバナンス)のみならず,政府の統治(パブリックガバナンス),さらには国際関係における統治(グローバルガバナンス)など,多様な領域で議論されている概念で,その定義は論じる者によってさまざまである.

 病院のガバナンスについて議論する場合,病院の統治構造からその適切なあり方を考えるホスピタルガバナンスと,診療組織を医療の質と安全で規律づけるクリニカルガバナンスに分けることができる.当然であるが,両者の領域は密接に関連している.

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●ガバナンスの欠如が問題になっているが,その実体はあまり理解されてない.

●組織内の相互牽制や外部からの監視で権限の集中を防ぎ,コンプライアンスを保持するのがガバナンスのあり方である.

●ホスピタル・ガバナンスにおける財務,人事,質管理,情報の4領域を理解することが重要である.

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●ガバナンスは道具にすぎず,その国の歴史,文化,それらに基づく社会規範に合った形の道具の使い方を模索することが,社会を豊かにし,強くする.

●非営利組織とは,配当財源となりうる利益(儲け)を上げない組織である.非営利組織の上げる利益は,名称は利益だが,その実質は将来のコストといえる.そのレベルは事業安定継続に必要なレベルが適切である.

●わが国の病院のガバナンスにおいては,①非営利組織にふさわしい経営であるか,②事業費が公的資金で賄われるにふさわしい経営であるか,③医療内容は適切か,④病院において社会的価値を創造する当事者である職員が,その存在意義を発揮する職場かのチェックと,それを実現する仕組みづくりが求められる.

病院におけるガバナンス 伊関 友伸
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●ガバナンスとは,多様な場面で,どのように社会や組織の問題を解決し,より良い方向に進めていくかのプロセスである.

●日本の病院政策を概観すると「階層構造(ヒエラルキー)」「市場」「ネットワーク」の3つの理念型の変遷に沿った動きをしていると考えられる.

●病院において良好なガバナンスを実現するためには,内部・外部からの統制に加えて職員の時代の変化に対応した自発的な行動が必要である.

【事例】

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●公益性が重要視される医療機関では,医療の質を維持し,安全性を担保できる組織を管理運営するためのガバナンスが求められる.

●JCI受審により,全ての医療行為を行う手順を指針・ポリシーとして文書化し,それを病院長および管理者がリーダーシップを発揮し監督することで,ガバナンスが機能する仕組みが構築された.

●安全で質の高い医療を提供するためには,適切なガバナンス体制を形成し病院の運営を行っていく必要がある.

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●「クリニカル・ガバナンス」とは,医療の質・安全の向上を目的に,1990年代に英国で提唱された概念であり,診療に関わる全ての関係者が責任をもって医療安全と質改善に取り組む組織的・体系的なプロセスを意味している.

●群大病院の医療安全改革に向けた取り組みは,病院幹部と現場職員が目的を共有し,一丸となって医療の質・安全を強化してきた活動であり,クリニカル・ガバナンスの実践である.

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●第7次医療法改正では,医療法人の経営の透明性の確保とガバナンスの強化が行われた.

●ガバナンスの一環として,適切な内部統制の整備・運用が必要不可欠である.

●「多額の現金管理」「限定的な事務部門の体制とIT投資」といった病院特有のリスクを考慮した内部統制を検討することが重要である.

●適切な内部統制の整備・運用を行うためには,監査法人などの外部専門家の指導・助言を活用することもポイントである.

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●医師の働き方改革は,平成31(2019)年3月に決定された水準によって,いわゆる36協定に基づく年間の定められた時間外労働時間内に勤務することが,令和6(2024)年4月から求められる.

●一方,労働基準監督署による病院への労働実態調査と調査内容に対する働き方の指導が続いており,当院でも対応を行った.

●医師を中心とした職場環境の改善は,提供する医療の質を向上させるが,現実的には勤務医の増員は容易ではなく,勤務形態の変更を余儀なくされた.

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■回復期リハビリテーション病院と老健との複合メリット

 医療法人社団健育会は,2017年4月,東京都練馬区と連携し,同区大泉学園の地に回復期リハビリテーションセンター「ねりま健育会病院」と介護老人保健施設(以下,老健)「ライフサポートねりま」からなる「大泉学園複合施設」を開設した.同病院の患者は平均75歳,在宅復帰率92%・自宅退院率82%.同老健の利用者は平均86歳,在宅復帰率70%.行政と共に利用者のための散歩マップを作成するなど,地域全体で進めるリハビリテーションの成果は数字にも表れている.

 「患者の人間力を回復させたい」と脳神経外科医からリハビリテーション医に転向した経験をもつ病院長兼施設管理者の酒向正春氏は,同老健の特徴を「回復期型老健」という.例えば,ここで行われるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)には,医師・看護師・ケアワーカー・リハビリテーション職・相談員・ケアマネジャー・歯科衛生士・薬剤師・管理栄養士といった多職種がチームとして参加する.これは「病院の感覚で作った老健だからできること」だという.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・57

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■はじめに

 松戸市立総合医療センター(図1〜5)については,かつて本誌で,伊関友伸氏が「松戸市立病院の建て替え問題」として,現在の千駄堀の敷地に建設が決まる過程と建設後に残された課題などを詳細に論じている1).そこで本稿では,その建設地決定後から進められた,基本設計から実施設計に至る設計プロセスを追いながら,建築,とりわけ設計・計画の分野から,現在さまざまな病院建設プロジェクトで採用が検討されているデザインビルド方式(以下,DB方式)に関わる課題について,事例的に検討してみようと思う.

 なおここでは,従来方式(いわゆる設計施工の分離発注方式)や,最近話題になっている設計の早い段階から施工者が関与するECI方式(Early Contractor Involvement)など,さまざまな発注方式の是非や,そこに係る建設費などを比較検討しようとするものではなく,また同時に,DB方式の是非を敷衍しようとするものでもないことを,お断りしておきたい.

連載 医療提供体制の変貌 病院チェーンと保健・医療・福祉複合体を中心に・3

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■はじめに

 本連載第3回と第4回では,各種の病院名簿を用いて,民間の病院チェーンの推移と構造を検討します.第3回では医療法人病院チェーンについて検討し,第4回ではそれ以外の病院チェーンについて検討します.

 本稿のポイントは以下の通りです.①1990〜2015年の25年間に全病院の病院数・病床数は減少し続けているが,医療法人の病院数・病床数は逆に増加し続けている.②医療法人病院チェーンは1984〜2002年に漸増した後,2002〜2011年に急増し,2011年には医療法人病院病床の3割弱(28.7%)を占めるに至っている.③2011年でも医療法人病院チェーンの8割弱(76.4%)は2病院のみの開設であり,7割弱(69.5%)が病院数500床未満であり,8割強(84.0%)が1都道府県でのみ病院を開設している.④医療法人病院チェーンの病床は4割強(42.5%)が一般病床であり,「一般病床主体」の法人が半数弱(45.1%),「ケアミックス」が7割強(72.3%)を占める.⑤1,000床以上の巨大医療法人病院チェーンは漸増し,2011年には31となっており,そのすべてが「ケアミックス」である.これらの巨大病院チェーンのうち20の本部は首都圏または関西圏にある.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・29

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 神奈川県横須賀市は,県の南東部の三浦半島に位置する人口39万人の市である.東京湾の入口に位置することから,軍港都市として栄え,戦前は大日本帝国海軍横須賀鎮守府や横須賀海軍工廠が置かれた.現在も米国海軍第7艦隊,海上自衛隊,陸上自衛隊の基地が設置されている.市の中央部を低い山や丘陵が占め,海沿いの地域の平地は少ない.かつては横浜市に次いで2番目に市制を敷いたほど勢いがあったが,最近は人口が減少傾向にある.

 横須賀市は軍港都市であった歴史から,陸海軍関係の病院であった施設が多い.横須賀共済病院(742床)は,横須賀海軍共済病院が戦後に国家公務員共済組合連合会に移管された病院である.また,横須賀市立うわまち病院(417床)は,横須賀陸軍病院が戦後に国立横須賀病院となり,2002年に横須賀市に委譲され,現在は指定管理者として公益社団法人地域医療振興協会が運営している.民間病院でも,衣笠病院(251床)は,旧海軍共済会病院衣笠分院が戦後はキリスト教の精神に基づく医療奉仕をすることを使命として存続し,現在は社会福祉法人日本医療伝道会により運営されている.聖ヨゼフ病院(182床)は,旧海軍軍人やその家族の診療を行った横須賀海仁会病院を発祥とし,現在は聖テレジア会により運営されている.さらに,横須賀市北部の追浜地域に接した横浜市金沢区には,横須賀海軍共済病院追浜分院が戦後に国家公務員共済組合連合会へ移管された横浜南共済病院(565床)がある.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・17

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 愛知県岡崎市本宿は,古くから交通の要所であり,東海道(現在の国道1号線)が通り,2016年開通した新東名高速道路の岡崎東インターチェンジから車で5分という立地条件にある一方,岡崎市街からは離れており,高齢化の進展や独居高齢者の増加などに加えて,周囲に医療介護・生活利便施設が乏しく,医療を担う人材が少ないなど厳しい医療環境に置かれている.

 このような地域で,48床と小規模とはいえ病院を運営することは,たやすいことではない.今回は,地域の人々やさまざまな医療関係者に支えられながら,地域医療に貢献する冨田病院を紹介したい.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・16

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■人手不足時代における採用の重要性

 厚生労働省の平成30年上半期雇用動向調査結果注1によれば,産業別入職・離職状況の統計において,「医療・福祉」の離職率は9.6%と高く,公益社団法人日本看護協会による調査注2でも,2017年度における正規雇用看護職員の離職率は10.9%と発表されている.このような統計を持ち出すまでもなく,慢性的な人材不足や人材の流動性の高さは,依然として病院経営者を悩ませる問題の一つと言えよう.

 そのため,医療機関では,さながら人材確保競争の様相を呈する場面もあるが,他方で人材の採用に当たっては,法的なトラブルも付き物である.

連載 多文化社会NIPPONの医療・24

薬剤部門のグローバル化 堀 成美
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 病院の外国人受け入れ体制がどの程度整っているかをチェックする指標として,JMIP(Japan Medical Services Accreditation for International Patients;外国人患者受入れ医療機関認証制度)の審査項目がある.開始当時にはなかった審査項目がバージョンアップのたびに追加されている.筆者の職場が初回の審査から3年後の再審査を受ける際には,薬剤部門も審査の対象となった(表1).体調不良となった外国人の薬についての相談先は,病院だけでなく,調剤薬局から駅前のドラッグストアまで幅広い.今回は,薬剤師や関連組織が取り組んでいる活動と,よくある相談事例を紹介する.

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病院
78巻9号 (2019年9月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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