病院 78巻8号 (2019年8月)

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1990年代,病院におけるICT化の先陣として,亀田総合病院は世界初の統合情報システムによる電子カルテを開発・導入した.

以来,常に時代の先を読み,殻を破り続ける亀田総合病院の行動力の源泉は何か.

亀田信介病院長にその哲学を聞く.

特集 ICTが変える病院医療

巻頭言 神野 正博
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 一般産業でのICT活用は進み,毎日のように新たな知見や話題がニュースに上る.医療界では,他産業に後れを取った感もある.しかし,ヘルスケア産業への政治・経済的な注目によって,病院による改革ばかりではなく,起業家や大手企業の参入が目立ってきた.

 医療においてICT活用は,臨床現場で診断や治療における医師の補助機能,遠隔・オンライン診療の他に,先端技術としての機器の進歩,遺伝子解析や疾病管理・予防・健康経営のためのビッグデータの解析などに貢献することだろう.

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●わが国の医療ニーズの変化と労働人口減少,地域の医療提供体制維持のための「働き方改革」推進などを鑑みると,医療分野においても,AI・ロボット・ICTなどのテクノロジーの徹底活用や組織マネジメント改革による効率化と生産性向上が求められる.

●ICT・AI導入によって代替可能な医師の業務が減るとしても,システム構築など周辺産業での需要は増加する.また,患者を「分析する」,患者を「説得する」,患者に対して「責任をとる」の3つが,医師の役割として残ると考えられる.

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●高齢化の進展の下,主たる疾患が感染症型から生活習慣病・老化型にシフトしている.従来対応が困難であった重症化予防を実現するため,健康経営を通じて職場環境を変えるなど,本人の行動変容を促す取り組みが必要である.

●健康・医療データの活用には,ビッグデータへの過度の期待から脱却し,本人性が確保された質の高い健康・医療情報(クオリティデータ)の収集・活用により,AI(人工知能)やIoTを用いたツールの整備が求められる.

●全医療機関をつなぐ情報ネットワークを構築することにより,同時期に進む治療行為の相関性の把握,結果の予測も含めた治療方針の提示といった,全医療機関を頭脳とする常に進化し続ける医療システムの実現が期待される.

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●AIは,疾病体系,診断,治療,医療開発のそれぞれを大きく変える.

●AIは,医療や医師の真価を問いかけてくる.

●病気だけでなく,病人を診ることのできる医師(医者)になろう.

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●医療・介護の現場業務を俯瞰し,各業務に役立つロボットや予測システムなどのAIを概観する.

●AIは医療従事者,介護従事者ら,各専門家の知識を構造化し共有する.

●AIはデータ分析により知識を改良し,各専門家のパフォーマンスを向上する.

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●2018年4月より昭和大学でtele-ICUが日本で初めて臨床運用されている.

●tele-ICUで診療の質を向上させるには,医療スタッフのワークフローの最高値が必要である.

●米国では医療の質と効率を上げることが報告され,日本においても今後普及することが予測されている.

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●労働時間の短縮や生産性の向上が求められるようになってきている.本稿では当院におけるiPhoneを用いた音声入力によるカルテ記載の効率化について紹介する.

●リハビリテーション科セラピストを対象に,AI認識音声入力システムであるAmiVoice® iNote(アドバンスト・メディア)を用いてiPhoneによるカルテ音声入力を実施し,その効率性と生産性について評価した.カルテ入力時間の短縮が,リハビリテーション単位数の増加,時間外労働時間の削減につながった.

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■病院組織における多職種連携の課題

 医療制度改正や医療の高度化に伴う業務の増大により,医療現場が疲弊している.産業医科大学病院(以下,当院)を含む多くの病院で,各部門・職種はその使命の下,精一杯の努力で職務に当たっているが,その役割や専門性ゆえに医療のプロセス全般や多職種の実情を俯瞰的に把握できていない部分がある.そのため,多職種間でのスムーズなコミュニケーションが十分とは言えない状況があり,各部門間の無用なトラブルの発生や連携不足による「非効率」がさらに業務負荷を増やしていることもまれでないと考えられる.

 そこで,当院の取り組みとその成果を紹介したい.

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 内田病院(群馬県沼田市)の玄関を入ると,大きな樹の絵が目に入る.近づくと,一枚一枚の葉っぱには同院で最期を過ごした方のイニシャルと亡くなった日付が記されている.これを「ハッピー・エンド・オブ・ライフ・ツリー」と名付けた田中志子理事長は,「病院が『幸せな看取り』を打ち出すことには勇気がいった」という.しかし,慢性期病院は患者が亡くなることと向き合わざるをえない.統括看護部長の樋口はるみ氏は,「年に一度ツリーの前で開かれるお茶会で,ご遺族が語る『よかったと思うケア』を職員が聞くことは,ケアの成果を確認することであり,次のケアにつながるのです」と語る.

 ここには,幸せに生ききることを支える文化が根付いている.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・56

医療福祉建築賞2018 筧 淳夫
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■はじめに

 本賞が1991年に創設されてから28年目に当たる2018年度は,2014〜2016年度(3年間)に竣工した作品が選考の対象となった.応募作品の総数は36作品(うち病院18作品,診療所6作品,保健・福祉施設等11作品,その他1作品)であり,前年度の29作品に比較して増加していた.

 その他1作品は募集要項に記載されている本顕彰が対象としている施設種別には該当しないことを確認して,残りの35作品を受理して選考対象とした.選考委員会では,まず受理した35作品全てに各委員がそれぞれの意見や感想を交換した.その上で,審議を重ねて11作品を現地視察の対象として決定している.それを受けての現地審査では1作品について2名の委員で視察を行った.その後の最終選考委員会では,まず委員全員が必要な情報を共有するために,視察委員が作成した視察メモと現地で撮影した写真を資料に加えて,現地視察を行った委員から作品の運営状況や評価などについて順次報告を求め,質疑応答を行った.そして,複数回投票を繰り返しながら,その都度慎重な審議を進めた結果,4作品を医療福祉建築賞として選定した.

 なお,選考委員は前年度と同様に,伊藤正(鹿島建設),伊藤恭行(名古屋市立大学),岡本和彦(東洋大学),武村雪絵(東京大学),正木義博(神奈川県済生会),三浦研(京都大学)と筧淳夫(工学院大学・筆者)の7名である.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・30

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■はじめに

 人口の高齢化とそれに伴う傷病構造の変化は,わが国のみならず先進国共通の問題となっている.いずれの国も,脳血管障害の後遺症などによるADL障害や認知症に罹患した高齢者の医療・介護ニーズへの対応に加えて,衣食住の日常生活支援など,わが国と共通の課題に直面している.また,こうした要介護高齢者のケアを担う労働力が不足しているため,ドイツ,オーストリア,オランダといった欧州諸国は外国人の活用を精力的に進めている.

 他方,欧州諸国においては住宅政策が社会保障制度の一環として行われてきたため,わが国に比較すると地域包括ケア的な対策を行っていく基盤整備ができている.具体的には,第一次世界大戦後,都市部の労働者階級の居住環境整備の一環として,日常生活上の便宜にも配慮された大規模アパート群が建設されてきた.例えば,ドイツのジートルンク(代表的なものとして世界遺産に登録されたジーメンス・シュタットなどがある),ウィーンのカール・マルクス・ホフ(全長1.2km,1,400戸からなる巨大集合住宅で現在も使われている)などがその例である.これらの施設は当時の先進的建築家の「庶民にも快適な生活をいきわたらせよう」というユートピア建設に係る強い信念に基づいて行われたものであり1),これまでその画一性などに種々の批判はあったものの,現在もなお都市部における低所得層の住民の住まいを保障する上で重要な役割を担っている.

 わが国においても,例えば東京の同潤会アパートの建設に当たってそのような欧米の経験が参考にされたが,その後の高度経済成長の過程で住宅政策が経済政策の一環(持ち家政策)として行われてきたため,地域包括ケアシステムを構築していくための住宅保障の基盤が貧弱であり,このことが今後地域包括ケアシステムの構築を進めていく上で障害の一つになっている.

 本稿では,住宅政策から地域包括ケアを考えるための基礎資料を提供する目的で,Geriatriereform(高齢者ケア制度改革)の一環として大規模型高齢者複合居住施設を整備しつつあるオーストリアの実践例を紹介する.

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 前回は,ハラスメントが病院経営に及ぼす影響の大きさについて説明した上で,ハラスメントの中でも特に発生頻度が高い,パワーハラスメント(以下,パワハラ)に関する意義や実例,留意点などを説明した.

 今回は,パワハラと並んで頻度の高いセクシュアルハラスメント(以下,セクハラ)について,実際の裁判例を中心に,その意義や予防,発生時の対応に関する留意点を説明したい.

連載 多文化社会NIPPONの医療・23

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 いっとき減っていた「英語対応できる医療機関を教えてほしい」という相談が増えている.ベトナム語やネパール語の通訳が見つからなくて困っているのは各地で共通した悩みであるが,英語で,しかも都市部からの相談である.英語対応医療機関といっても実際には医師が話せるということであって,電話での問い合わせや受付対応は日本語のみのところが多い.東京都の医療機関案内サービス「ひまわり」にも,「英語は対応だが要相談」とあるのはそのためである.そして「頑張って診ているけれど,これ以上は無理」というキャパシティ問題は,在住者だけでなく留学生や訪日客など増加が著しい層を受け入れている地域では切実な問題になっている.

 困っているのは当事者だけではない.仲介会社や保険会社は日本で体調不良となった顧客からコールセンターに入るSOSに対応をしなければならないが,「XXX病院が対応しますので受診してください」という紹介ができなくなると,受診が遅れたり,結果として重症化したり後遺症が残るようなリスク案件にもなりうる.各社はこれまでの実績を元に独自に医療機関リストを作成しているが,それでは追いつかない状況となっている.

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病院
78巻8号 (2019年8月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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