病院 78巻10号 (2019年10月)

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石川誠氏は早くから,「地域」を見つめながら医療とリハビリテーションを実践してきた.

その中で組織を「多職種の混成チーム」とした仕掛けが,スタッフの成長に貢献したと語る.

変革期にある「地域」にどう関わり,今後の医療・福祉の担い手をどう育てるか,先駆者の思いを聞く.

特集 病院の生産性を向上させる人材育成戦略

巻頭言 山田 隆司
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 労働者の働き方改革が叫ばれる昨今,限られた人材でいかに効率よく病院を運営していくか,病院における生産性の向上は喫緊の課題である.しかし一方で,医療は多くの専門職で成り立っており,一定の配置基準があり,タスクシェア,タスクシフトにも一定の制限がある.また,得られる報酬は公定価格であって,サービスの質を良くしたとしても収益性の向上は望めない.この厳しい経営環境のなか,各病院には地域ニーズに対応できる人材育成が求められている.

 この病院という特殊な事業での生産性向上について,飯田論文はそもそも病院だけが特殊ではないと説き,医療の生産性について質向上という視点での人材育成の必要性を述べている.これに沿った自院での取り組み,全日本病院協会での活動の紹介など,示唆に富んだ内容となっている.

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●最初に,病院,生産性,人材育成を考える.生産性向上の方策の第一が人材育成である.病院の生産性,生産性向上の方策は他分野と基本的には同じである.

●練馬総合病院は経営戦略として,組織管理の基本である品質管理(QM)・総合的質経営(TQM)の考え方と方法を導入している.その一環として,教育研修と医療の質向上活動(MQI)の年間統一主題を設定し,計画的に人材育成を実践している.

●練馬総合病院における人材育成の経験を,全日本病院協会の筆者が担当する研修会に適用し,成果を得ている.会員病院および非会員病院職員の参加も得ている.

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●スタッフ全員で理念を共有するにはどうしたらよいか,どうしたらスタッフの業務負担感を減らして楽しく働ける環境を作れるかということに注力する.

●トップとスタッフの歯車をしっかりと噛み合わせてよりよいグループを作っていくことが大切であり,そのためには,風通しをさらによくしていくことが重要だと考える.

●チーム力を高める,組織全体が学ぶ,楽しむ,こういったことに力を注ぎ続けていきたいと考えている.

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●中小規模病院の新人教育は,組織全員で取り組むことが基本である.

●看護部で「認知症看護」「退院支援」の教育実践コースを設けた.

●多職種協働のフラット型チーム医療実践により,看護師としても,より幅の広い知識が身に着く.

●看護師特定行為研修修了はジェネラリストとしての第一歩である.

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●済生会熊本病院の病院総合医は,多職種協働によるチーム医療を推進し,医療の質向上と働き方改革を実践している.

●病院総合医のような医療マネジメントを行う医師は,地域包括ケアシステム推進に必要な人材と考えられる.

●医師のセカンドキャリアとして,また医師の新しい働き方として,診療科横断的に業務を行う病院総合医の役割には大きな可能性がある.

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●病院薬剤師の生産性を踏まえた育成には,薬剤部門としてISO9001を基盤に持続成長する組織風土を作ることが重要である.

●さらに,ICT技術を積極的に導入することで,データに基づく効率的な薬剤業務の見える化と職員満足度の向上による離職ゼロを目指すべきである.

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●医師事務作業補助者は近年,医師の負担軽減の他,患者サービスと医療の質の向上に貢献し,医師の働き方改革でもタスクシェアの受け皿として期待が大きい.

●その一方で,雇用問題,人材不足,教育制度の不備などによって医師事務作業補助者の専門知識とスキルの病院間格差が広がっている.

●その育成と活用には,病院管理者が医師事務作業補助者の使命・役割を正しく認識して多様な働き方のできるキャリアパスを導入し,教育・研修制度を充実させることが肝要である.

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 1960年に竣工した晴和病院(東京都新宿区)は,故・内村祐之氏(当時・東京大学精神科教授)が,自由で温かく開放的な雰囲気の中で先端的な治療・研究の拠点となる精神病院を目指して開設した.看護師の「詰所」など往時をしのばせる部分も残っているとはいえ,築60年以上とは思えないモダンな雰囲気である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・58

JA香川厚生連 屋島総合病院 宇田 淳
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■はじめに

 源平合戦の一つ,源義経が殊勲を挙げた屋島の戦いで知られる屋島の麓にある香川県厚生農業協同組合連合会(JA香川厚生連)屋島総合病院(香川県高松市)は,1947年に開設された総合病院である.旧病院は,3棟で構成され,老朽化や狭あい化が進み,最も古い南棟は1969年の完成で耐震基準を満たしていなかった.このため,移転新築により災害対応や救急医療を強化し,2016年11月に耐震構造の新病院をオープンした.

 高松琴平電気鉄道・志度線「潟元駅」目の前にあった旧病院から,相引川・新川沿い北西に約1km離れた同市屋島西町子の浜塩田跡地に全面移転し,救急を含む急性期医療から回復期,訪問看護と幅広く医療を提供する病院に生まれ変わった.敷地面積は約1haから約2倍,駐車場も約2倍程度と広くなった(図1).規模はRC造4階建て延べ2万m2,診療科は内科や外科,産婦人科など24科を維持し,病床は279床である.1階に外来部門を集約し,2階に救急部門を設け,3・4階を病棟とした.災害対策として建物の耐震性を確保するほか,津波や高潮に備え,病院の地盤をかさ上げした.

連載 医療提供体制の変貌 病院チェーンと保健・医療・福祉複合体を中心に・4

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■はじめに

 本連載第3回では「1991〜2011年の医療法人病院チェーンの推移と構造」を分析しました.本稿では,医療法人以外の私的病院チェーンの分析を行います.具体的には,第3回と同じく,主に矢野経済研究所『全国病院開設法人・団体名鑑2012年版』を用いて,公益法人・会社・社会福祉法人・医療生協・宗教法人および私立学校法人の6法人の病院チェーンを検討します.私立学校法人の大半は私立医科大学で,その病院チェーンは規模と機能の両面で,それ以外の法人の病院チェーンとは大きく異なるので,区別して扱います.上記資料のデータは2011年で少し古いですが,これらの法人の病院チェーンが分かる資料はこれ以降出版されていないので,ご了承ください.

 本稿のポイントは以下の通りです.

1)医療法人以外の私的病院の病院チェーンの病床シェアは私立医科大学が突出して高い(93.3%).この割合は公益法人で51.7%,会社で58.0%,社会福祉法人・医療生協・宗教法人(旧・その他の法人)で40.3%であり,いずれも医療法人の28.7%を大幅に上回っている.しかも,1988〜2011年のシェア拡大も,医療法人のそれを上回っている.

2)ただし,病院チェーン病床数の2/3(65.5%)は医療法人が占めている.

3)私立学校法人を除けば,公益法人・会社・社会福祉法人・医療生協・宗教法人の病院チェーンの平均規模は,医療法人病院チェーンに近い.

4)私立学校法人を含めて,私的病院チェーンの大半は,大規模なものも含めて「地域的存在」である.

5)1,000床以上の医療法人以外の巨大病院チェーンは45存在する(私立学校法人25,その他20).

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・31

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■はじめに

 今回レポートする医療法人博愛会宇部記念病院(以下,宇部記念病院)は,山口県宇部市にある一般病床66床(地域一般入院基本料1),医療療養型病棟62床(療養病棟入院基本料1),障害者施設等一般病棟62床(障害者施設等入院基本料10:1),介護医療院60床〔Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅱ)(看護6:1,介護4:1)〕からなるケアミックス病院である1).標榜科目は内科,外科,放射線科,循環器科,整形外科,歯科,神経内科,泌尿器科,肛門科,性病科,皮膚科,呼吸器科,消化器科,脳神経外科,リウマチ科,リハビリテーション科で,また人間ドックや健診などの予防医療や,老人保健施設,デイケア,訪問リハビリテーション,訪問看護などの介護保険サービスの提供にも力を入れている.

 図1に示したように,宇部・小野田医療圏は急速な人口減少の過程にあり,今後さらなる少子高齢化の進展により後期高齢者の増加とそのケアを担う若年者の減少という課題に直面する2).DPCの公開データを見ると,すでに急性期の入院患者数はピークアウトし始めているが,2019年6月に建て替えを終了した山口大学医学部附属病院への急性期患者の増加が予想される中,周辺の医療機関の機能の見直しが課題となっている.

 表1は2015年のNDBに基づく宇部・小野田医療圏と隣接する山口・防府医療圏,下関医療圏のSCR(Standardized Claim Ratio)を示したものである.入院に関しては急性期から慢性期まで,全国に比較して数倍の医療提供が行われており,特に療養病床の入院が多くなっている.外来に関しては全国平均並みであるが,在宅に関しては提供量が少なくなっている.このSCRのデータから考えても,宇部・小野田医療圏における医療提供体制のあり方については,今後の人口動態と合わせて検討が行われる必要がある.

 宇部記念病院はこうした社会環境変化にいち早く対応し,ニーズの変化に合った医療機能および介護などの周辺サービスの整備を行ってきている.国の政策動向を注意深く分析し,地域の傷病構造およびそれに伴う医療・介護需要の変化に適切に対応し,その上で理想の高齢者医療・介護サービスを提供している同院の実践は,今後同様の状況に直面する他地域の病院にとって,今後の方向性を考える上で参考になるものと考える.今回は,特に介護医療院への転換に着目して同院の経営戦略について紹介する.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・17

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■はじめに

 「同一労働同一賃金」という言葉を耳にしたことがある読者は多いと思われる.

 2018(平成30)年6月29日に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下,働き方改革法)において,長時間労働の是正と共に改革の目玉となった制度であり,近時,社会的耳目を引いた最高裁判所の判決もあって,世間でも広く浸透しつつある.

 具体的には,短時間・有期雇用労働者について,同一企業内における正規雇用労働者(無期雇用労働者)との不合理な待遇が禁止され,派遣労働者についても,①派遣先の労働者との均等・均衡待遇,②一定の要件を満たす労使協定による待遇,のいずれかを確保することが義務化され,厚生労働省も,平成30年12月28日付で「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)を策定し注1,同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間でのいかなる待遇差が不合理とされるかについて具体例を挙げて示している.

 紙幅の都合上,同一労働同一賃金ガイドラインの詳細まで紹介することは叶わないが,基本給,賞与および各種手当などの待遇について,非正規雇用労働者であることを理由に正規雇用労働者との間で区別を設けている病院においては,それが不合理な待遇差となっていないかを検証し注2,働き方改革法や同一労働同一賃金ガイドラインに照らしても合理的と言えるような待遇差の理由を説明できるよう準備する必要がある.

 そもそも,同一労働同一賃金の根本には,賃金が労働者の「生きる糧」であり,最も守られるべき権利である以上,差別的な取り扱いは許されないという基本的理念があり,裁判所も,賃金を労働者の権利の中でも最重要視し,同一労働同一賃金だけに限らず,賃金制度の有効性は厳格に解される傾向にある.

 今回は,病院経営においてよく問題になり,なおかつ見落としがちな賃金に関する問題を取り上げる.

連載 多文化社会NIPPONの医療・25

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■アウトブレイクなど地域の緊急情報を誰が翻訳するか

 2018年の末に三重県でワクチン接種率の低い集団に麻疹ウイルスが持ち込まれた.その集団内でアウトブレイクしただけでなく,地域や周辺県へと感染が拡大した.このような時,自治体は麻疹が流行していることをアナウンスし,ワクチン接種の呼びかけを始める.周辺の医療機関の感染管理スタッフは,救急外来を受診する人たちの中に麻疹患者がいるかもしれないことを院内に周知し,迅速に隔離対応ができるよう一時的に体制を強化する.しかし,行政や病院だけではどうにもならないことも多いので,市民や受診者に協力をしてもらう必要がある.このような「事件」は各地で起こりうる.そして,今や多言語対応なくして感染症の対策はできない時代になっている.

 麻疹流行の注意喚起を地域の外国人に伝えるためにはどうすればいいだろうか.まず,保健所や行政は日本語で資料を作成するので,それを翻訳するのがシンプルな方法だ.院内で翻訳できるのは英語くらいで,他の言語になると院外の誰かにお願いをしないといけない.ボランティアでやってくれる人がいればラッキーだが,それが正確な翻訳なのかはどう確認すればいいだろうか.翻訳業者に依頼するとなれば費用もかかるし,資料は急ぎ作りたいから,仕様書を作成したり見積もりをしている時間もない.

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病院
78巻10号 (2019年10月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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