生体の科学 65巻4号 (2014年8月)

特集 古典的代謝経路の新しい側面

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 解糖系やTCAサイクルをはじめ,現在多くの教科書に掲載されている代謝経路の概略は附表に示すように1960年までにほぼ確立され,現在では古典として位置づけられている感があります。本特集号は,こうした古典的な代謝経路にかかわる酵素や分子の新しい機能と調節機構,近年になって同定された代謝経路の実体などを中心に,教科書的な代謝学を新しい視点から見つめ直すことを趣旨として企画しました。

 今日,代謝経路に関する研究は,様々な研究領域と関連しながら,この10年ほどで大きく発展しています。その要因として,① イメージングやオミックス解析などの新手法の開発,② 個体レベルの遺伝子機能解析の充実,③ 疾患原因遺伝子同定の急速な展開,④ バイオインフォマティクスによるデータ解析の高度化,などが挙げられます。さらに,ポストゲノム研究の潮流の一つとして,生命現象を大きくシステムとして捉え,それを支える要素や階層間の連携という観点から,代謝経路の新しい生理的意義が明らかになってきている点も見逃せません。

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 生体のエネルギー代謝は厳密に制御されている。摂食時に働くシグナル経路として,最も代表的なものはインスリンシグナルであろう。インスリンは肝・筋・脂肪などに働き,肝臓では糖新生系の抑制,筋肉や脂肪ではGlucose transporter 4(Glut4)による糖取り込みの促進などを行い,細胞内にエネルギーを蓄える方向に働く。一方,空腹時や運動時など,低エネルギー状態で働く代表的な因子として,AMP-activated protein kinase(AMPK)が挙げられる。当初,AMPKの役割は視床下部での摂食調節や筋肉での役割に焦点が当てられていたが近年の精力的な研究により,多くの基質をリン酸化することで,ダイナミックにエネルギー代謝を制御していることが明らかとなりつつなる。本稿ではAMPKの役割を中心に,そのエネルギー代謝制御機構の知見を紹介したい。

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 細胞が自身を維持する,あるいは増殖するためには,エネルギーを外から取り込む必要がある。動物細胞の場合は糖や脂質が主要なエネルギー源である。よく知られているように,それらに含まれるエネルギーの多くは,一度アデノシン三リン酸(ATP)のリン酸結合にいったん蓄えられ,その後に細胞の様々な場所で利用される。しかし,生きた細胞内でのATPの時空間的な振る舞いについては驚くほど知られていない。

 動物細胞では,主に細胞質における解糖系とミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によってATPが合成されている。一方でATPは細胞内の様々な場所で消費されている。ATPが合成される場所から消費される場所まで辿り着くには決して簡単ではない(図1)。第一に,負に強く帯電したATPはそのままでは疎水的な膜を透過できない。ミトコンドリア内膜のATP:ADP交換輸送体1),神経小胞のVNUT2)など,ATPの膜輸送にかかわる分子は一部知られているが,小胞体やゴルジ体といったオルガネラへどのような仕組みでATPが運ばれているかはいまだに多くが謎である。第二に,細胞の内部は分子が非常に込み合った状態であり,かつATPと相互作用するタンパク質に非常に富んでいることを考えると,たとえ低分子と言えども希薄溶液中と比べてATPの拡散速度は大きく制限されていると考えられる。こうした制約の中でどのようにして細胞は必要なときに必要な場所にATPを届けているのか,実際はまだよくわかっていない。それどころか,細胞の中でATPがどのように分布しているのかさえも不明であった。

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 ミトコンドリアは,細菌(α-プロテオバクテリア)の共生を起源とした二重膜のオルガネラであり,細胞内のエネルギー産生としてだけでなく,細胞内のシグナルや分化・発生などにも重要な機能を持っている。ミトコンドリアが各組織で様々な形態をとっていることは古くから電子顕微鏡解析などから知られており,また,外部からの刺激(ストレス)に応答する際にもダイナミックな形態の変化が観察される。近年,ミトコンドリアは細胞内で分裂と融合を頻繁に繰り返すことで非常にダイナミックな形態をとっていることが知られ(図1),ミトコンドリアの形態変化とその生理的意義に着目した研究が飛躍的に進みつつある。本稿ではミトコンドリアの形態変化が及ぼす細胞内機能と個体に及ぼす影響について概説する。

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 複合体Ⅱ(コハク酸-ユビキノン還元酵素複合体)はTCA回路の酵素中で唯一膜結合性の酵素であり,細菌では細胞膜,真核生物ではミトコンドリア内膜に局在している。真核生物ではミトコンドリアのマーカー酵素としても知られており,四つのサブユニットすべてが核にコードされている。複合体ⅡはTCA回路と呼吸鎖を直接結ぶ重要な酵素であるが,最近,複合体Ⅱがエネルギー代謝の調節に直接関与し,また,そのサブユニットの変異が褐色細胞腫や傍神経細胞腫などの腫瘍形成にかかわっていることが明らかになってきた1,2)。さらに好気性生物でのコハク酸酸化の逆反応であるフマル酸還元酵素活性を持つ複合体Ⅱが低酸素適応において重要な役割を果たしていることが報告され3),その生理機能の多様性が注目されている。また,これまで呼吸鎖からの活性酸素(reactive oxygen species;ROS)の発生部位は複合体Ⅰ(NADH-ユビキノン還元酵素複合体)と複合体Ⅲ(ユビキノール-シトクロムc還元酵素複合体)と考えられていたが,変異の入らない野生型の複合体Ⅱからも相当量のROSが遊離されていることが報告された4,5)。しかもヒト複合体Ⅱでは,その触媒サブユニットであるフラボプロテインサブユニット(Fp)に二つのアイソフォームが存在し,保存性の低いタイプのFp(Type Ⅱ Fp)を持つ複合体Ⅱが低栄養・低酸素下で誘導され,また,多くの腫瘍組織やがん細胞,さらに胎児の一部の器官や組織で発現されていることが報告された6)。以上のような複合体Ⅱの新しい側面に関する研究の現状について低酸素適応とヒト複合体Ⅱのアイソフォームを中心に紹介する。

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 分化した組織の細胞は好気的条件では解糖系で2分子のATP(adenosine triphosphate)と酸化的リン酸化によって36分子のATPが,1分子のグルコースから産生される。Louis Pasteurはグルコース代謝が酸素存在下で減少することを見いだした。多くの細胞では酸素の存在により解糖系にかかわる酵素の活性が抑制され,ミトコンドリアを介する酸化的リン酸化が可能となる。この酸素による解糖系の抑制は,パスツール効果と呼ばれる1)。嫌気的条件では,酸素に依存した酸化的リン酸化によるエネルギー産生ができなくなり,グルコースをピルビン酸まで分解し,さらに乳酸に変える嫌気的解糖によってエネルギーを産生する2)。一方,Otto Warburgにより増殖が盛んな細胞およびがん細胞は,酸素の存在下でさえもそのエネルギー産生の多くを解糖系に依存していると報告された3)。多くの総説でも述べられているように,がん細胞の好気的解糖系によるエネルギー産生はWarburg効果と呼ばれる。実際にがん細胞は好気的条件下でそのATP産生の60%を解糖系に依存しているという報告もなされている4)。臨床の現場において,Warburg効果はグルコースの取り込みをイメージングしてがんを局在診断するFDG-PETに応用されている。

 上述したように,がん細胞は正常細胞に比べ解糖系に依存している。本稿ではWarburg効果を支えるメカニズムを概説した後,この効果を標的にした治療の可能性についても紹介する。

脂質メタボローム 北 芳博
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 メタボロミクスは概念的にはあらゆる代謝物を包括的に解析する研究手法であるが,実際にはすべての化合物に適用できる汎用的な分析法は存在していないため,通常,複数の分析手法を組み合わせてサブセットごとに解析が行われる。脂質メタボローム(リピドーム)はメタボロームのうち脂質関連代謝物に限定したサブセットである。中性脂質やコレステロール,脂肪酸,グリセロリン脂質,スフィンゴ脂質,糖脂質など多くの重要成分がこのサブセットに含まれ,解析対象となる分子種も数千種に及ぶ。近年,がんや糖尿病,精神・神経疾患,免疫・炎症疾患など重要な疾患において,脂質代謝物がその発症や進展のメカニズムにかかわる可能性が示されるようになってきたが,その背景には質量分析計システムを用いた網羅的な脂質解析法が利用されるようになってきたことがある。本稿では,筆者らが主に取り組んでいる脂質メディエーター解析およびリン脂質の網羅解析を中心に紹介したい。

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 生体膜や肺サーファクタントの主成分であるグリセロリン脂質のアシル基組成は組織や細胞種,正常時や病態時で異なり,その様々な機能に影響すると考えられている。リン脂質のアシル基多様性の形成に重要な働きを持つリゾリン脂質アシル基転移酵素群(lysophospholipid acyltransferases;LPLATs)をコードする遺伝子の多くが近年同定された。これにより,リン脂質への多価不飽和脂肪酸の蓄積や肺サーファクタント脂質の合成に関与すると考えられていたLands回路の分子レベルでの理解が大きく進み,この回路の意義も見直されるきっかけとなった1)。Lands回路の理解が今後,様々な病態時にみられるアシル基組成の異常と疾患の関連を説明できるようになると期待される。本稿ではLPLATの分子同定によってLands回路の理解がどのように進んだか,この回路が肺サーファクタント脂質の代謝と機能にどうかかわるのか,という2点について,ホスファチジルコリン代謝に焦点を当てながら解説させていただく。生体膜には多様なリン脂質とそれらを代謝する多くのLPLATが存在し,興味を持った読者は他の優れた総説も参考にして欲しい2-4)

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 高脂血症は血中に脂質,―特にコレステロールエステル(cholesterol ester;CE)や,中性脂肪(triacylglycerol;TG)などの中性脂質―が蓄積した状態である。これらの中性脂質はリポ蛋白のコア部分に含まれることから,高脂血症は,すなわち高リポ蛋白血症である。リポ蛋白は生理的には末梢の組織への脂質の運搬や除去を担っているが,病的なリポ蛋白過剰状態では,動脈硬化や急性膵炎の原因となる。リポ蛋白代謝は古くから研究されている領域であるが,近年多くの新たな制御因子が発見され,代謝動態に合わせて細やかにチューニングされていることがわかってきた。新しい制御因子の幾つかは実際に治療応用に近づいている。本稿では,まず古典的代謝経路について復習し,次に最近の知見を紹介したい。

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 尿酸と言えば健診などで従来から血清尿酸値を測定され,プリン体の取り過ぎによる痛風と関係する,というのが世間一般のイメージと思われるが,近年様々な疾患との関連が明らかとなり,特に生活習慣病の基盤となっている可能性が指摘されている。本稿では古くて新しい尿酸代謝,特に尿酸生成にかかわる因子と疾病との関係について焦点を当てて述べて行きたい。

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 生体は絶食時に栄養代謝を大きく変化させ,飢餓に適応する。われわれの体では食事による栄養供給が絶たれたとき,肝臓などに備蓄してあるグリコーゲンや脂肪やタンパク質を分解して栄養供給を図る。この分解と供給にはオートファジーが重要な役割を果たすと考えられている。近年,様々なモデル生物においてオートファジー不全変異体が解析され,オートファジーが様々な生命現象に関与することが明らかになってきているが,そのうち飢餓応答としての役割は,酵母から哺乳動物まで共通したオートファジーの最も基本的な役割である。本稿では飢餓応答としてのオートファジーについて栄養代謝学的意義を中心に最近の知見を紹介したい。

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 細胞は必要なときに必要な量のビルディングブロックを合成するように精緻な代謝調節系を発達させている。代謝経路の調節には,主に転写制御によって酵素量を調節するメカニズム(例,カタボライト制御)と,アロステリック制御や翻訳後修飾のように酵素を質的に調節するメカニズムがある。近年,代謝酵素を調節するメカニズムとして,アセチル化に代表されるタンパク質のアシル化修飾が注目されている。この翻訳後修飾はヒトから細菌まで進化的に保存されており,生物に普遍性の高い解糖系,クエン酸回路,脂肪酸代謝系のような主要代謝経路の調節にかかわっている。アセチル化による代謝経路調節の異常は代謝異常疾患やがん疾患とも関連している。

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 エピジェネティクス(epigenetics)という用語は,歴史的に遺伝学の原理では説明できない事象を言及することに用いられてきた1)。現在でもエピジェネティクスの定義は十分に定まっているとは言い難いが,近年では“DNA配列の変化を伴わず,染色体の変化によって安定に継承される表現型を決定するメカニズムおよび現象の総体”として言及されるようになった1,2)。エピジェネティクスの分子メカニズムにはクロマチンの化学修飾,リモデリング,ヒストンバリアント,ノンコーディングRNAによるクロマチンの構造修飾・高次構造変換が含まれる。クロマチンは真核生物においてDNAを核内にコンパクトに収納する構造物で,DNA・ヒストン・非ヒストンタンパク質により構成され,ヌクレオソームと呼ばれる構造が繰り返されている。ヌクレオソームは4種のコアヒストン(ヒストンH2A,H2B,H3,H4)それぞれ二つから成るヒストン八量体の周りに147bpのDNAが巻き付いた構造物であり,クロマチンの基本単位となっている。クロマチンの化学修飾には,DNAのメチル化やヒストンの翻訳後修飾が含まれ,修飾を付加または除去するクロマチン修飾酵素により制御されている。興味深いことに,クロマチン修飾酵素の多くが基質や補因子に細胞の代謝産物を用いており,代謝とエピジェネティクスの関連が示唆されている3-5)。本稿では代謝酵素やその代謝産物とクロマチン化学修飾制御の関連について,現在までに明らかにされた知見を紹介する。

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 人体は約60兆個,270種類以上の細胞によって形成されていると言われている。そして,種々の細胞は多様な組み合わせよって臓器・組織を形成し,個体を成立させている。臓器・組織は構成要素である細胞が糖質,脂質,蛋白質などの栄養素をエネルギー源として活用し機能することで,生命活動の維持に寄与している。一方,閉鎖空間である個体において利用できるエネルギー量は有限であり,個体レベルでのエネルギー代謝調節が適切になされることが,個々の臓器・組織,ひいては細胞が円滑に機能するために重要なことである。そして,臓器間ネットワークが,その調節に必須の役割を担っていることが示されてきた。古くは,クロード・ベルナール(実験医学序説の著者)が,個体レベルの糖代謝調節が神経支配のもとにあることを示唆したが,その後,インスリンやグルカゴンなどホルモンの発見が相次ぎ,臓器間ネットワーク研究は内分泌系において飛躍的に進展した。一方,近年の分子生物学的,発生工学的手法を用いた動物実験の進歩により,自律神経を介した臓器間ネットワークの重要性が再認識されてきている。

 臓器間神経ネットワークの統御中枢である脳は,個体レベルの糖・エネルギー代謝を制御するために,末梢の各臓器・組織で生じる代謝の変化を感知,統合し適切な出力に変換している。レプチンの発見は,このような脳が統御する臓器間神経ネットワークの理解を進展させる端緒となった。レプチンは主に白色脂肪細胞から分泌され血流を介して視床下部に作用し,摂食抑制や交感神経系活性化によるエネルギー消費増加(褐色脂肪組織での熱産生亢進)などをもたらすアディポサイトカインである。これらの作用は視床下部の弓状核のNPY/AGRPニューロンやPOMCニューロンに存在するレプチン受容体を介して,メラノコルチン系を活性化することで得られる。レプチンの産生は脂肪細胞の中性脂肪の蓄積(=貯蔵エネルギー量)増加に相関して増えるため,長期的なエネルギー代謝の恒常性維持に役立っている。

連載講座 細胞増殖・9

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 細胞の遺伝情報であるDNAは,外来性(電離放射線,紫外線,DNA障害性薬物など)および内因性(フリーラジカル,細胞内代謝産物など)の要因によって,絶え間なく損傷されている。DNA傷害を受けた細胞は細胞周期の進行を停止させること(細胞周期チェックポイント)で,DNA修復に必要な時間を生み出している。また,修復機能を上回るDNA損傷や欠損の場合は細胞周期の進行を半永久的に停止したり(細胞老化),細胞死を導いたり(アポトーシス)して,傷害細胞を増殖細胞集団から排除する。このようなDNA損傷応答は,(ヒトでは約60兆個の細胞からなる)個体全体における遺伝子(ゲノム,染色体)の恒常性を維持するうえで必須の役割を担っている1,2)

 DNA損傷から細胞周期停止に至るチェックポイント機構においては,まず,ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼ)類縁の二つの蛋白質リン酸化酵素が重要な役割を担っている(図1)。一つは,ATM(ataxia-tel angiectasia mutated;毛細血管拡張性運動失調症[AT]の原因遺伝子として同定されたことが名前の由来である)で,主に(電離放射線などで引き起こされる)DNAの二重鎖切断の際に活性化される3)。もう一つは,ATR(ATM-and Rad3-related)で,DNA修復過程などで生じる一本鎖DNAによって活性化される4)。このように活性化したATM,ATRは,それぞれ,チェックポイントキナーゼ2,1(Chk2,Chk1)をリン酸化することで活性化へと導く(図1A)。Chk2,Chk1はチェックポイントシグナルをDNA損傷部位から核全体に伝えるトランスデューサーとしての役割を担っている。以下に細胞周期停止に至る分子機構を各シグナル伝達経路に分けて概説する。

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 亜鉛は生体にとって必須の微量金属元素である。亜鉛は多数のタンパク質の構造・機能維持や酵素の活性・調整因子として重要な役割を果たしている1,2)。さらに,細胞内外の遊離亜鉛イオンがシグナル因子としても重要な機能を持つことが明らかにされていることからも,亜鉛の生理機能が非常に多岐にわたり,亜鉛が生命活動に必須の因子であることは明らかである3,4)。そのため,生体には亜鉛ホメオスタシスを厳密に制御する機構が備わっており,金属貯蔵タンパク質であるメタロチオネインをはじめ,膜輸送を介して細胞質の亜鉛レベルを制御する亜鉛トランスポーターは,その制御にかかわる重要な因子である。

 近年,亜鉛トランスポーターの発現変化や機能破綻が,生活習慣病をはじめとした多くの疾患に密接に関連するとの報告が数多くなされており4,5),亜鉛の多様な生理機能と疾患との関連性を論じるうえで,亜鉛トランスポーターの生理機能を理解することは必要不可欠な要素となっている。本稿では亜鉛トランスポーターの特徴・機能を生理学的な面から概説し,その重要性を紹介する。

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次号予告

あとがき 栗原 裕基
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 昨年から本誌の編集委員を拝命し,今回初めて特集を企画させていただきました。私が研究を始めた1980年代は遺伝子クローニングの全盛期で,私などの浅学な駆け出しの研究者の眼には,教科書に載っているような代謝経路は既に過去のものに見え,魅力ある研究対象とは映りませんでした。それから30年ほどたった現在,代謝経路に関係する研究は様々な分野で脚光を浴び,本特集でご執筆いただいた先生方の研究をはじめ,時代の最先端をリードする研究領域として花開いています。そして現在に至る状況を振り返ったとき,時代の流行り廃りにとらわれずに代謝生化学の流れを着実に発展させてきた少なからぬ先達研究者による蓄積が基盤となったことが思い起こされ,若き日の己の至らなさを恥じる次第です。

 さて,1973年から42年間にわたって本誌の編集委員を務められた藤田道也先生が,本年の3月を以てご勇退されました。藤田先生は本誌の編集企画においてご専門の生化学の領域のみならず,生命科学全般にわたる幅広い見識と先見性を遺憾なく発揮されて来られました。私も大変短い間ではありましたが,編集委員として藤田先生の謦咳に接することができ,お年を召されても探求心旺盛な先生から大変多くのことを学ばせていただきました。今回の「古典的代謝経路の新しい側面」と題した特集を企画するに当たり,藤田先生にわがままを申し上げて序文の共同執筆をお願いさせていただきましたが,本特集企画自体を,生化学の研究と教育に情熱を注いでこられた藤田先生に捧げたいというのが私のささやかな思いでもあります。この場をお借りし,長年のご尽力に改めて敬意を表しますとともに,益々のご健康をお祈りしたいと思います。藤田先生,長い間どうもありがとうございました。

基本情報

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生体の科学
65巻4号 (2014年8月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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