Japanese
English
特集 関わり合う脳
Ⅰ.他者と関わる脳
自己と他者との協同的な認知の調整を行う“社会的メタ認知”の神経基盤
Neural basis of ‘social metacognition' for coordination of cognition between the self and others
宮本 健太郎
1
,
田中 志歩
2
Miyamoto Kentaro
1
,
Tanaka Shiho
2
1理化学研究所脳神経科学研究センター
2東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構
キーワード:
内省
,
想像力
,
社会的メタ認知
,
協同的認知
,
メンタライジング
Keyword:
内省
,
想像力
,
社会的メタ認知
,
協同的認知
,
メンタライジング
pp.12-16
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010012
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われわれは,他者と協力しチームとして新しい問題の解決を試みるときに,チームメンバーそれぞれが役割をどのように果たすかを予測して,その予測に基づいて自分が果たすべき役割を考え,自身の行動を調整する1,2)。この能力によって,われわれは初めて経験する状況・場面においても,1人では困難な仕事を他者との協調によって成し遂げることができる。われわれは,このときしばしば,もし自分自身が他者と同じ立場に置かれ,他者と同じ役割を担うとしたら,どのくらいうまくこなすことができるかを想像し,その結果から外挿して,他者のパフォーマンスを予測する。他者の経験や能力は自分と異なるため,他者が役割を果たす成功率や程度を正確に推定するには,“こころの理論”3)に基づいた単なる他者視点と自己視点の置き換えのみでは不十分である。他者のこころの存在を理解するだけでなく,自己の心的モデルに対する内省的評価である“メタ認知”4-7)を,他者のこころの状態の推定に適用する際に,他者の心的モデルに合致するように適合させる必要がある。しかし,そのための行動神経機構は,これまでにわかっていなかった。本稿では,筆者らが最近明らかにした,内省を他者に対して投影し,他者の認知状態を評価する“社会的メタ認知”の神経基盤8)について概説する。
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