Japanese
English
特集 古典的代謝経路の新しい側面
Warburg効果を治療への応用
Application to treatment by Warburg effect
大和田 賢
1
,
江角 浩安
1
Owada Satoshi
1
,
Esumi Hiroyasu
1
1東京理科大学 生命医科学研究所 臨床研究部門
pp.311-314
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101630
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
分化した組織の細胞は好気的条件では解糖系で2分子のATP(adenosine triphosphate)と酸化的リン酸化によって36分子のATPが,1分子のグルコースから産生される。Louis Pasteurはグルコース代謝が酸素存在下で減少することを見いだした。多くの細胞では酸素の存在により解糖系にかかわる酵素の活性が抑制され,ミトコンドリアを介する酸化的リン酸化が可能となる。この酸素による解糖系の抑制は,パスツール効果と呼ばれる1)。嫌気的条件では,酸素に依存した酸化的リン酸化によるエネルギー産生ができなくなり,グルコースをピルビン酸まで分解し,さらに乳酸に変える嫌気的解糖によってエネルギーを産生する2)。一方,Otto Warburgにより増殖が盛んな細胞およびがん細胞は,酸素の存在下でさえもそのエネルギー産生の多くを解糖系に依存していると報告された3)。多くの総説でも述べられているように,がん細胞の好気的解糖系によるエネルギー産生はWarburg効果と呼ばれる。実際にがん細胞は好気的条件下でそのATP産生の60%を解糖系に依存しているという報告もなされている4)。臨床の現場において,Warburg効果はグルコースの取り込みをイメージングしてがんを局在診断するFDG-PETに応用されている。
上述したように,がん細胞は正常細胞に比べ解糖系に依存している。本稿ではWarburg効果を支えるメカニズムを概説した後,この効果を標的にした治療の可能性についても紹介する。
Copyright © 2014, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.