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昨年から本誌の編集委員を拝命し,今回初めて特集を企画させていただきました。私が研究を始めた1980年代は遺伝子クローニングの全盛期で,私などの浅学な駆け出しの研究者の眼には,教科書に載っているような代謝経路は既に過去のものに見え,魅力ある研究対象とは映りませんでした。それから30年ほどたった現在,代謝経路に関係する研究は様々な分野で脚光を浴び,本特集でご執筆いただいた先生方の研究をはじめ,時代の最先端をリードする研究領域として花開いています。そして現在に至る状況を振り返ったとき,時代の流行り廃りにとらわれずに代謝生化学の流れを着実に発展させてきた少なからぬ先達研究者による蓄積が基盤となったことが思い起こされ,若き日の己の至らなさを恥じる次第です。
さて,1973年から42年間にわたって本誌の編集委員を務められた藤田道也先生が,本年の3月を以てご勇退されました。藤田先生は本誌の編集企画においてご専門の生化学の領域のみならず,生命科学全般にわたる幅広い見識と先見性を遺憾なく発揮されて来られました。私も大変短い間ではありましたが,編集委員として藤田先生の謦咳に接することができ,お年を召されても探求心旺盛な先生から大変多くのことを学ばせていただきました。今回の「古典的代謝経路の新しい側面」と題した特集を企画するに当たり,藤田先生にわがままを申し上げて序文の共同執筆をお願いさせていただきましたが,本特集企画自体を,生化学の研究と教育に情熱を注いでこられた藤田先生に捧げたいというのが私のささやかな思いでもあります。この場をお借りし,長年のご尽力に改めて敬意を表しますとともに,益々のご健康をお祈りしたいと思います。藤田先生,長い間どうもありがとうございました。
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