- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
手術関係の学会に行くと,今や「眼科医総白内障surgeon時代」または「眼科医総硝子体surgeon時代」が到来したかの印象がある。確かに手術器械や手術手技が劇的に進化し,これまでよりはるかに低侵襲で,短時間で確実に手術が終了する時代になっている。しかし,内眼手術はあくまで眼科手術の一部であり,いくら白内障手術や硝子体手術が短時間で終了できてもそれが全てではない。これからの眼科専門医は白内障手術や硝子体手術以外の分野で,もう一つのサブスペシャリティを持つ必要がある。その中で眼科医にとって大きな割合を占めるものは緑内障や眼表面疾患,メディカルレチナの分野であるが,患者側からのニーズの割にサブスペシャリティとして選ばれていないのが眼形成の分野である。高齢者になると加齢性眼瞼下垂や上眼瞼皮膚弛緩症は必発と言ってよいほど高率にみられる。また,涙器の異常や眼窩の異常は年齢を問わず出現してくる。しかもこれらの患者は眼科専門医なら当然診療ができるはずとの認識で,まず眼科医を受診する。これらの患者に対応するためにも,眼形成手術の対象,基本的な手術手技,専門医へ送る基準などを知っておくことは極めて重要である。
本書は眼形成手術のそれぞれの分野のエキスパートが,豊富な臨床経験に基づいてさまざまな手術手技の解説を行うものであるが,まず総説と総論とで140ページを費やし「解剖」や「初診時にどう診てどう考えるか」「診断・治療に必要な検査」「形成手術概説」を「眼瞼」「眼窩」「涙道」それぞれについて解説している。もちろん対象患者が受診した際に,本書の「各論」を疾患ごとに読むのも一つの読み方であるが,ぜひ時間があるときには「総論」をお読みいただきたい。これを読むだけでも十分本書を購入された価値がある。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.