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はじめに
フェムト秒レーザー(femtosecond laser:FSL)は超短パルス(約600〜800フェムト秒)で照射可能なネオジウム近赤外線(波長1,053nm)レーザーで,極めて小さい範囲に高出力のレーザーを照射することができる。1点に照射されるレーザーのエネルギー量は,「照射エネルギー(J)/(ビームスポット面積・レーザーパルス時間幅)」で表すことができる。つまり照射エネルギー総量を抑えても,小さな範囲に超短時間でレーザーを照射することで,照射された部位に大きなエネルギーを与えることができる。例えば,1μJの照射エネルギー量で,600fs(フェムト秒)=600×10−15秒でレーザーを照射すると,1点にかかるエネルギー量は10−6/600×10−15=1.67MWとなる。この強い光エネルギーで分子結合を切断し,レーザー照射周囲に熱拡散することなく分子を除去する。これを光分裂(photodisruption)といい,この光分裂によって作製された点状の空洞をつなげて組織を切断するのがFSLの特徴である。フェムト秒とは照射可能なレーザー照射持続時間のことで,1フェムト秒は1×10−15秒にあたる。FSLはある程度透光性がある組織に対し,あらかじめ設定した任意の深さで種々の形状の切開を作製することができる(図1)1,2)。
近年,このFSLの眼科手術に対する応用が多く報告されている。これまでに屈折矯正手術3,4),白内障手術5),角膜移植1,2)などへの応用が報告されている。特にレーザー照射が浅層に行われるlaser in situ keratomilesis(LASIK)の角膜フラップ作製では本来のmicrokeratomeによるフラップ作製より,均一な深さで粗さの少ないフラップを作製できる3,4)。また,FSLを用いた独自の術式で小切開創から角膜実質層を角膜内で切開したうえでstripする屈折矯正手術(refractive lenticle extraction:ReLEx)が報告されている5)。LASIKと同様に角膜に対する手術である角膜移植への応用も数多く報告されており,これまでtrephine bladeで角膜に対し垂直に切ることしかできなかった角膜切開創を種々の形状で作製することによって目的に合った角膜移植を行うことができる。
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