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原稿を書いているのは2016年の師走です。今年の驚きは,何と言っても米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利でしょう。トランプ氏勝利の日に,各国の友人とメールのやり取りをしましたが,勝利を予想していた人はいませんでした。トランプ氏勝利の理由についてさまざまな分析がなされていますが,社会の分断とそのことに対する感情的反発が底流にあるというのが大方の答えです。しかし,それが所謂革命という形を取らず,ポピュリズムあるいは反知性主義に向かうと早くから喝破していたのが英国のGuardian紙です。最近の同紙の論評では,この動きは国の政治だけでなく,世界中のあらゆる投票行動に影響するとのこと。わが国でも,地方間あるいは大学間格差が拡大し分断されつつあります。そのことに対する感情的反発が,反知性主義的行動に向かうと考えるとぞっとしますが,あながち杞憂とは言えないでしょう。難しい時代になったものです。
さて,「今月の話題」は視野検査の新しい流れについてです。緑内障は,現在のわが国の中途失明原因の首位を占める重要な疾患です。緑内障研究が進むにつれて,個々の状態を的確に判断すること,予後を考えたきめ細かな治療が重要であることがわかってきました。それには,視野検査は不可欠のものです。視野検査のゴールドスタンダードは長らくGoldmann視野計でしたが,最近は別の方法に変わられつつあり,本稿ではそのことについてわかりやすく解説されています。さらに,前眼部診療のトピックスについて,気鋭の研究者にご寄稿いただいております。前眼部は,わが国が世界をリードする領域であり,世界初の診断や治療の試みがなされつつあります。ただし,わが国の患者が,それら最先端治療の恩恵に浴するには,臨床家がその治療を正しく理解する必要があります。各項では,多くのイラストを用いて説明されていますので,多忙な診療の合間の短い時間でも,前眼部診療について理解することができると思います。
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