Japanese
English
特集 前眼部診療の最新トピックス
角膜ジストロフィの遺伝子診断
The genetic diagnosis of the corneal dystrophies
山田 直之
1
Naoyuki Yamada
1
1山口大学医学部眼科
pp.164-174
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212155
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
本稿では,角膜ジストロフィが疑われる患者が来院した場合,どのように考えて診察をし,遺伝子診断を行っていくべきかについて,山口大学医学部附属病院(以下,当院)での自験例を基に私見を記していきたいと思う。
角膜ジストロフィは,日常診療で時に遭遇するどちらかといえば稀な疾患である。角膜ジストロフィは,角膜所見が典型的な症例であればその遺伝子変異まで類推することも可能である。筆者らは今まで200人以上の角膜ジストロフィを遺伝学的に同定してきた。しかしながら,予想が間違っていたり,想定していなかった遺伝子変異が見つかったりしたこともあった。角膜ジストロフィ症例については,その表現型(角膜所見),病理学的所見,遺伝学的所見から総合的に診断することが理想的である。しかしながら,角膜ジストロフィが遺伝性疾患である以上,やはり遺伝学的所見が最も診断的価値が高い。特に,非典型的な角膜所見を呈する角膜ジストロフィの症例では,遺伝子検査のみが確定診断に至ることのできる大切なツールといえる。
炎症所見の乏しい両眼性の角膜沈着を診察したときに,まずは角膜ジストロフィを考えるものだが,当然角膜ジストロフィ以外の可能性もある。例えば,角膜変性症(degeneration),全身疾患の一症状としての角膜病変,内服薬などの投与薬剤と関連した角膜病変などさまざまな可能性がある。角膜所見のみから診断が確信できないとき,とかく「何らかの角膜ジストロフィではないか」と考えたくなるものである。この場合に遺伝子検査を行い角膜ジストロフィの可能性の有無を確定することにも重要な意義がある。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.