臨床眼科 60巻12号 (2006年11月)

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (9)

  • 文献概要を表示

要約 目的:Bazin硬結性紅斑がある症例に発症した網膜静脈炎の報告。症例:59歳女性の両下腿に有痛性皮疹が生じ,その1か月後に左眼の霧視が起こった。ツベルクリン反応が強陽性であった。下腿紅斑の生検で皮下組織にLanghans巨細胞を伴う類上皮肉芽腫があり,Bazin硬結性紅斑と診断された。霧視の出現から6週後の検索で矯正視力は右1.2,左1.0pであった。右眼には異常がなく,左眼に網膜静脈の口径不同,狭細化,白線化があった。皮膚科でのステロイド投与は奏効せず,2か月後に右眼に網膜静脈炎が発症した。ステロイドパルス療法に続くステロイド経口投与により,皮疹と静脈炎は発症から約2年後に軽快した。結論:Bazin硬結性紅斑に続発した網膜静脈炎に対し,ステロイドパルス療法が有効であった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:漿液性網膜剝離を初発症状とした肺癌と転移性脈絡膜腫瘍の症例の報告。症例:77歳女性が急激な左眼霧視を自覚し,その2日後に受診した。所見:矯正視力は右0.9,左0.2であり,左眼の後極に扁平な漿液性網膜剝離があった。中心性漿液性網脈絡膜症や原田病が疑われたが,その後の精査で原発性肺癌と遠隔転移が発見された。光干渉断層計では網膜下に扁平な隆起病変が認められ,これは化学療法により縮小を示し,肺癌からの脈絡膜転移と診断された。結論:漿液性網膜剝離による視力障害が唯一の臨床症状として,これを契機に未発見の悪性腫瘍が判明することがある。

連載 今月の話題

近視進行予防とEBM 長谷部 聡
  • 文献概要を表示

 学童期の近視進行予防法として注目される3つの方法,アトロピン点眼液,ピレンゼピン眼軟膏,累進屈折力眼鏡について,現時点で得られる臨床比較試験の結果をメタアナリシスにより統合し,近視進行抑制効果を推定する。さらに,それぞれの予防法の問題点と今後の展望について述べる。

連載 日常みる角膜疾患44

  • 文献概要を表示

 症例

 患者:28歳,男性

 主訴:左眼眼痛

 現病歴:2005年4月中旬より左眼の霧視を自覚していた。4月24日,左眼眼痛が出現したために近医を受診した。抗菌点眼薬で経過観察されていたが,軽快しないため4月27日,当科を紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:特記事項なし。

 初診時所見:視力は右0.6(1.0),左0.01(矯正不能),眼圧は右12mmHg,左25mmHgであった。両眼瞼にはアトピー性皮膚炎を認めた。右眼結膜,角膜には異常所見はみられなかった。左眼結膜充血を認め,角膜中央部にフルオレセインおよびローズベンガル染色でよく染色されるterminal bulb(末端部の瘤状膨大部)を伴った樹枝状角膜炎がみられた(図1)。さらに角膜実質には円板状に浮腫性の混濁を認め,角膜実質の浅層5~10時方向にかけて免疫輪を認めた。角膜内皮面には散在性に角膜後面沈着物を認め,前房内には炎症細胞を認めた。硝子体および網膜には異常所見は認められなかった。角膜知覚検査では右55mm,左10mmと左眼の知覚低下を認めた。角膜上皮擦過物からは単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:以下,HSV)Ⅰ型抗原が検出された。

連載 眼形成手術手技21

眼瞼の眼窩脂肪脱 出田 真二 , 野田 実香
  • 文献概要を表示

はじめに

 眼窩内の脂肪は眼球を包むように存在し,眼球に接する部位ではテノン囊で,それ以外のところでは眼窩隔膜で周囲の組織と隔てられている。加齢性変化などでこの隔壁が破綻すると眼窩脂肪が脱出してくる。テノン囊の破綻により筋円錐内の眼窩脂肪が眼球に沿って脱出してくる結膜下脂肪脱と,眼窩隔膜の破綻により筋円錐外の眼窩脂肪が眼輪筋層下で突出してくる眼瞼の脂肪脱がある。

 本稿では眼瞼の脂肪脱について述べる。結膜下脂肪脱については本連載の第19回(60巻9号)を参照されたい。

連載 眼科医のための遺伝カウンセリング技術・1

遺伝カウンセリングの歴史 千代 豪昭
  • 文献概要を表示

はじめに

 2005年10月に東京で第1回目の認定遺伝カウンセラー制度による認定試験が行われ,5名のわが国で初めての認定遺伝カウンセラーが誕生した。この制度は日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の共同の認定によるもので,原則的には養成専門課程と認定されたコース(大学院)の修了が認定試験の受験資格となっている。現在,7つのコースが専門課程として認定を受け,遺伝カウンセラーをめざした学生が教育を受けているが,今後10数年の間には400名を超える遺伝カウンセラー(「認定遺伝カウンセラー」と呼称)が誕生する見込みである。21世紀はゲノム医学の時代といわれているように,研究領域のみならず,臨床領域でも遺伝子診断を始めとする遺伝医学的なアプローチが普及し,遺伝カウンセリングのニーズが高まると考えられる。遺伝カウンセラーは臨床遺伝専門医と並んで遺伝医療をささえる主なマンパワーであるが,今ようやくわが国でもこれらのマンパワーの養成がスタートしたところである。

 もともと眼科の領域には先天異常や遺伝性疾患が少なくなく,多くの先駆的な眼科医がわが国の臨床遺伝学の発展に貢献してきた。また,視覚障害者のサポートや色覚障害に対する社会運動など,眼科医の社会貢献には大きいものがある。遺伝性の眼疾患の診療やカウンセリングに精通しておられる眼科医も少なくない。しかし,日本人類遺伝学会など遺伝医学に関係する学会の会員名簿をみると眼科医の数は必ずしも多くはないし,筆者(小児科医)の遺伝臨床の経験のうえからも,現場で気軽に専門的なコンサルテーションに応じていただける眼科医の数は決して多くはなかった。1つには眼科医そのものの数が少ないうえ,眼科医は日常診療に多忙なことと,その診療の性格上,眼域あるいは視覚に限定した治療が主で,生活全般や遺伝の問題にまで包括的に介入する機会が少ないためかも知れない。

 今回の企画は,現場の眼科医の方々に遺伝医療を理解し,臨床遺伝専門医の資格取得をめざしていただき,今後現場に参入する認定遺伝カウンセラーを上手に使いこなしていただくことが目的の1つである。筆者は小児科医であるため眼科の専門知識はないが,筆者らのカウンセリング技術や患者の援助技法は眼科医の方々にも参考になるのではないかと考えこの連載をお引き受けすることにした。眼科領域には遺伝性疾患が多いが,筆者が眼科臨床の素人ということもあり,この連載では個別の疾患情報の解説よりもカウンセリングの基礎技術に焦点を当てたいと思う。臨床家の方々が日常の眼科臨床に遺伝カウンセリングの技術を応用していただければありがたいし,さらに臨床遺伝専門医の資格取得をめざしていただければこれ以上の喜びはない。

カラー臨床報告

  • 文献概要を表示

要約 目的:水晶体脱臼の2症例の報告。症例:1例は自傷癖があるDown症候群の65歳男性,他の1例は85歳女性で転倒による顔面打撲の既往があった。男性には左眼水晶体が前房に脱臼し,緑内障が続発していた。女性には両眼の水晶体が硝子体内に脱臼していた。男性例では水晶体の囊内摘出を行い,眼圧が安定した。女性例では両眼に硝子体手術を行い,水晶体を摘出し,眼内レンズを縫着した。結論:今回の2症例には水晶体が脱臼する素因が乏しい。チン小帯が脆弱であり,鈍的外傷が加わったために水晶体脱臼が生じたと解釈される。

  • 文献概要を表示

要約 目的:正常眼圧緑内障での網膜神経線維層欠損と視神経乳頭の形態との関連の検索。対象と方法:正常眼圧緑内障17眼を対象とした。男性7例11眼,女性4例6眼で,年齢は39~73歳(平均57歳)であった。走査レーザー検眼鏡(SLO)で全例に網膜神経線維層欠損があった。視神経乳頭の形態はハイデルベルク網膜断層計で解析し,神経線維層欠損に接する部位と接しない部位について,rim area,rim volume,cup/disk area ratioをそれぞれ算出した。結果:網膜神経線維層欠損に隣接する視神経乳頭の部位が,隣接しない部位よりも緑内障性変化が強い傾向があったが有意差はなかった。結論:正常眼圧緑内障では,網膜神経線維層の構造的な変化が視神経乳頭の形態の変化に先行する可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:デジタルカメラによる静止画像を計測することで眼鏡レンズの偏位を測定する方法の結果報告。対象と方法:屈折異常に対して眼鏡を常用する外来患者78名を対象とした。男性41名,女性37例であり,年齢は4~85歳(平均29歳)であった。水平に置いたカメラを自由頭位で注視させ,50cmの距離から前眼部を撮影した。角膜反射像とレンズ光心を示すマーカーを測定点として,眼鏡レンズの偏位を定量した。結果:レンズ光心は理想的な位置に対して,右眼で4.0±3.6mm,左眼で3.8±3.5mm下方に偏位していた。レンズ光心間距離は,瞳孔間距離よりも平均1.6±2.0mm大きかった。結論:顔面に対応する眼鏡枠のフィッティングと視軸に対するレンズ光心のアラインメントはしばしば一致しない。意図した屈折矯正効果と良好な装用感を提供するには,眼鏡レンズの偏位についての臨床的な評価が必要である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:超音波水晶体乳化吸引術での連続発振モードとインクリメンタルパルスモードとの比較。対象:超音波水晶体乳化吸引術を行った134眼を対象とした。内訳は連続発振49眼,ハイパルス45眼,ローパルス40眼で,超音波発振以外の手術条件は統一した。結果:超音波発振時間は連続発振群で有意に長く,超音波エネルギーは連続発振群よりもパルス群で短く,ローパルス群とは有意差があった。平均超音波出力,手術時間,角膜内皮細胞減少率については,3群間に有意差がなかった。結論:パルスモードを使うことで超音波発振時間を短縮できるが,破砕と吸引効率が悪くなり,超音波発振時間が延長する。通常の硬さの核では連続発振モードよりもパルスモードを用いたほうが眼球への侵襲が小さいと思われる。

  • 文献概要を表示

要約 目的:眼瞼に発症したMerkel細胞癌2例の報告。症例と経過:症例は75歳と83歳の女性。1例は左上眼瞼,他の1例は左下眼瞼に急速に増大する腫瘤が生じた。いずれも原発巣を切除し,局所皮膚弁で再建した。1例は高齢なので頸部郭清術を行わず,術後に放射線療法を施行した。他の1例は高齢と認知症のため頸部郭清術と放射線療法を施行しなかった。2例とも局所再発はなく,頸部リンパ節転移によりそれぞれ術10か月と6か月後に死亡した。結論:眼瞼のMerkel細胞癌では,拡大切除,頸部郭清術と術後の放射線療法が望ましい。高齢や合併症でこれらが不可能であっても,原発巣の切除と再建は患者の生活の質(QOL)の向上に有用である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:視野闘争を用いて眼優位性を定量評価し,眼位との関連の検討。対象と方法:外斜視13例,間欠性外斜視14例,外斜位16例にっき,各眼の優位時間を測定し,優位時間差を求めた。測定には北里式眼優位性定量装置を用いた。結果:優位時間差は,外斜視8.9±4.1秒,間欠性外斜視5.1±4.2秒,外斜位2.3±1.6秒であった。外斜視と間欠性外斜視の値には有意差があった(p<0.05)。外斜視と外斜位の値には有意差があった(p<0.01)。結論:通常の検査では検出されにくい一眼の抑制を優位時間差として定量できた。眼位異常で両眼単一視が妨げられるほど優位時間差が延長し,眼優位性が強い傾向があるので,眼優位性は眼位に影響される。

  • 文献概要を表示

要約 目的:片眼性眼球突出の自験例の報告。対象と方法:過去25か月間に片眼性眼球突出と診断した17例を対象とし,診療録の記述をもとに検索した。結果:男性12例,女性5例であり,年齢は21~68歳(平均54歳)であった。炎症性偽腫瘍7例(41%),甲状腺眼症3例(17%),眼窩蜂巣炎2例(12%)などがあった。主な臨床症状は,結膜充血88%,眼球運動障害76%,結膜浮腫47%であった。治療として,視力または眼球運動障害が強い例にはステロイドパルス療法,軽症例には副腎皮質ステロイド薬内服,眼位または眼球運動障害に対しては手術を行った。結論:良性疾患が片眼性眼球突出の主要原因であった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:原発開放隅角緑内障(POAG)におけるマイトマイシンC(MMC) 併用線維柱帯切除術後の眼圧日内変動を調べる。症例と方法:対象は初回MMC併用線維柱帯切除術を施行され,術後無治療で2か月以上経過したPOAG 20例31眼である。眼圧は,入院にてGoldmann圧平眼圧計で10,13,16,19,22,1,3および7時に測定した。結果:術後1日平均眼圧は9.3±3.5mmHgであった。術後の全対象の各測定時刻の眼圧には有意な変動があり,10時の眼圧( 9.9±3.9mmHg)は1時の眼圧(8.8±3.5mmHg)より有意に高かった。術後1日平均眼圧と術後眼圧変動幅の間には,有意な正の相関を認めた(R=0.456)。結論:MMC併用線維柱帯切除術後の眼圧は日中高く夜間は低く日内変動する。また,術後の眼圧日内変動をより小さくするためには,術後眼圧をできるだけ低くする必要がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:高度硝子体出血に対して行った硝子体手術の結果の報告。症例:過去5年間の自験例24例24眼を検索した。外傷や糖尿病など,原因が推定できる症例は除外した。男性14例,女性10例であり,年齢は34~88歳(平均63歳)であった。発症から手術までの期間は1~110日,(平均25日)であり,19例(79%)では発症から30日以内に手術を行った。結果:14例(58%)で1.0以上の最終視力が得られた。再手術を必要とする重大な合併症はなかった。手術中に判明した原因疾患は,網膜静脈分枝閉塞症9例,網膜裂孔7例,加齢黄斑変性症2例,裂孔原性網膜剝離2例,網膜細動脈瘤2例,網膜中心静脈閉塞症2例であった。結論:原因が同定できない高度硝子体出血には早期に硝子体手術を行うべきである。

  • 文献概要を表示

要約 目的:水溶性チモロールから熱応答ゲル化チモロールに変更したときの眼圧下降効果と副作用の検討。対象と方法:0.5%水溶性チモロールを1日2回点眼中の緑内障または高眼圧患者103例103眼を対象とした。年齢は33~84歳(平均66歳)であった。点眼を0.5%熱応答ゲル化チモロール1日1回に変更し,その後1か月ごとに眼圧を3か月間測定し,両点眼薬の使用感とどちらを好むかを調査した。結果:変更前の眼圧は16.6±2.6mmHg,変更後の平均値は15.7~15.9mmHgであり,有意に下降した(p<0.0001)。使用感は水溶性チモロールではしみる,熱応答ゲル化チモロールではべたつくまたはしみるが多かった。11例が水溶性チモロール,62例が熱応答ゲル化チモロールを選択した。結論:熱応答ゲル化チモロールには水溶性チモロールと同等の眼圧下降効果がある。点眼時の使用感は水溶性チモロールが優れていたが,1日1回点眼の利便性からから熱応答ゲル化チモロールが好まれた。

基本情報

03705579.60.12.jpg
臨床眼科
60巻12号 (2006年11月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

文献閲覧数ランキング(
8月3日~8月9日
)