臨床眼科 59巻12号 (2005年11月)

特集 第58回日本臨床眼科学会講演集 (9)

学会原著

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目的:腫瘍がなく,癌関連網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)に類似した自己免疫網膜症2症例の報告。症例:年齢が41歳と48歳の女性で,いずれも視力障害を主訴として受診した。矯正視力は,1例は右眼0.3と左眼指数弁,他の1例は右眼0.01と左眼0.07で,3年後に右眼指数弁,左眼0.02になった。1例では動脈の狭細化が高度で,びまん性の網膜色素上皮の萎縮があった。他の1例には動脈の狭細化があり,蛍光眼底造影所見はほぼ正常であった。両症例とも,全身検査で腫瘍はなく,CAR自己抗体は陰性であった。結論:腫瘍と自己抗体の存在が証明できなかったが,2症例ともその経過と眼底所見から,自己免疫網膜症が強く疑われる。

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目的:上咽頭癌に外転神経麻痺が併発した2症例の報告。症例と経過:症例は47歳と52歳男性である。1例では複視が突発し,左眼が固視眼で右眼の内方偏位と外転制限が生じた。頭頸部の磁気共鳴画像検査(MRI)で,上咽頭部から斜台に浸潤する腫瘍があり,生検で非角化性扁平上皮癌と診断された。他の1例では,上咽頭癌に対し放射線療法と化学療法が行われていたが,著効しなかった。発症から6か月後に複視が生じた。右眼が固視眼で左眼に外転制限があった。MRIで上咽頭部から斜台,蝶形骨体部,錐体骨尖部への広範な浸潤性病変があった。結論:外転神経麻痺では,その原因として上咽頭部腫瘍が関与していることがある。

連載 今月の話題

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移植医療やゲノム解析などの医学全体の進歩により,再生医学という新しい学問が発達し,再生医療として臨床の場に取り入れられてきた。この再生医療を利用して,これまで治療不能であった疾患にまで治療が試みられようとしている。加齢黄斑変性や網膜色素変性などの難治性網膜変性疾患は,この再生医療で治療を試みられようとする代表的な疾患の1つといえる。ここでは,加齢黄斑変性に現在までに取り組まれてきた科学的根拠に基づいた新しい試みと,すでに開始されたアデノウイルスを用いた遺伝子治療を紹介する。

連載 眼の遺伝病75

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IMPDH1遺伝子のLys238Arg変異をもつ常染色体優性網膜色素変性の1家系を報告する。IMPDH1遺伝子は,視細胞でのcyclic nucleosidesの代謝に関与していると報告されている。2002年に常染色体優性網膜色素変性の10番目の原因遺伝子として報告された。海外ではAsp226Asn変異が高頻度変異であるが,筆者らが96人の日本人常染色体優性網膜色素変性をスクリーニングした結果,Asp226Asn変異はなかった。

 今回は,IMPDH1遺伝子変異のLys238Arg変異を認めた常染色体優性網膜色素変性の1家系を報告する。Lys238Arg変異は新規変異であり,現在までに報告がない。

連載 日常みる角膜疾患32

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症 例

 患者:70歳,男性

 主訴:両眼の視力低下

 現病歴:特に誘因なく視力低下を自覚していた。近医眼科を受診した際に両眼白内障を指摘され,同時に角膜内皮細胞数の減少も指摘された。白内障手術を目的として2003年3月当科を紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:高血圧,蓄膿症

 初診時所見:視力は右眼0.3(0.6),左眼0.2(0.6),眼圧は右眼9mmHg,左眼8mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では両眼ともフルオレセインで染色される点状表層角膜症がみられた。角膜実質には軽度の浮腫による混濁がみられ(図1a,b),角膜内皮面には反帰光線で観察されるdark spotが散在性にみられた(図1c,d)。前房内に細胞やflareなどの炎症所見はみられなかった。中間透光体には両眼ともに核・皮質白内障がみられた。スペキュラマイクロスコープでは角膜内皮細胞の観察が両眼とも困難であったが,共焦点顕微鏡ではデスメ膜の隆起による無細胞領域が認められ,角膜内皮細胞密度は右眼1,200cells/mm2,左眼900cells/mm2であり(図2a),角膜厚は右眼583μm,左眼586μmであった。

 治療経過:初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断したが,角膜内皮細胞密度は両眼ともに1,000cells/mm2前後あり,角膜実質浮腫が軽度であり角膜の内眼手術による侵襲に対して透明性は確保できると考え,2003年4月に左眼,同年5月に右眼の白内障手術(超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術)を施行した。2年後の受診時には左眼でわずかに角膜実質浮腫を認めたが,視力は右眼0.8(矯正不能),左眼0.5(矯正不能)であり,角膜厚は右眼740μm,左眼820μm,共焦点顕微鏡による内皮細胞密度は右眼562cells/mm2,左眼560cells/mm2であった。

連載 眼形成手術手技9

霰粒腫(1)理論編 野田 実香 , 小幡 博人
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診断

 霰粒腫は,マイボーム腺の導管が梗塞を起こしたことを契機に生じるマイボーム腺の炎症で,病理学的には非感染性の慢性肉芽腫性炎症である。外分泌物がマイボーム腺内に過剰に貯留している病態に始まり,周囲の軟部組織を破壊して肉芽腫を形成するに至る。

 病期分類

 霰粒腫は病変の広がりによって3つのタイプに分けられる。これを,①瞼板内に限局している場合(限局型)と,②瞼板前面を破壊し,眼瞼前葉を含む眼瞼全体に炎症が及ぶ場合(びまん型),③瞼板後面を破壊し,結膜よりポリープ状に破裂している場合(瞼結膜ポリープ型)と分類させていただく。HarryとMissonの眼病理の教科書では,①をlocalized lesion,②をdiffuse lesionと呼んでいる。

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アレルギー性結膜疾患49例について,涙液サイトカイン各成分の濃度と相関関係を検索した。内訳は,アレルギー性結膜炎14例,アトピー性角結膜炎14例,春季カタル21例である。それぞれから採取した涙液中のインターフェロンγとインターロイキン(IL)-2,4,5,6,8,13の濃度をELISA法で測定し,サイトカイン間の相関を解析した。インターフェロンγとIL-13,IL-4と13,IL-5と6,IL-8と13の相互間に有意な正の相関があった。3疾患それぞれに特有な違いはなかった。涙液サイトカイン各成分濃度の相互関係が多様であり,サイトカインには複雑さと冗長性があることを示す所見である。

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視神経症を合併した眼窩筋炎の3例を経験した。60歳男性,61歳女性,64歳女性で,いずれも片眼性であり,視力低下,色視症,眼痛が初発症状であった。初診時の罹患眼の視力は,0.8,0.3,光覚弁であった。磁気共鳴画像検査(MRI)などで,複数の外眼筋の肥厚が全例にあった。自己免疫抗体を含む諸検査から甲状腺眼症は否定され,眼窩筋炎と診断した。ステロイドパルス療法後にステロイドを漸減し,2例で症状が著明に改善した。最終視力はそれぞれ1.5,1.2,光覚弁であった。視神経症の原因として,眼窩内の炎症が視神経に波及したこと,肥厚した外眼筋による圧迫などが考えられた。眼窩筋炎では視神経症の合併に留意し,視神経症では眼窩筋炎の可能性を疑う必要がある。

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統合失調症の22歳男性が,妄想体験に伴い発作的に自ら眼球摘出を試みた。矯正視力は右眼光覚弁,左眼1.2であり,右眼の眼圧は低眼圧で測定不能であり,右眼に強い前房出血があった。眼窩CTで右眼球が虚脱し,強膜裂傷が推定された。硝子体手術で鋸状縁断裂による網膜剝離が広範囲にあり,冷凍凝固,輪状締結,20% SF6ガスを併用した。網膜は復位し,1.0の矯正視力を得た。以後の5年間,自傷行為はない。統合失調症患者が発作的に眼球摘出を試みたが,自傷行為の反復がなく,積極的な手術治療で視力が維持できた例である。

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59歳男性に全身痙攣が起こり,心房粗動,多発性脳硬塞,閉塞性動脈硬化症の診断で内科に入院し,その半月後に眼科を受診した。両眼とも,視力,眼圧,瞳孔反応,限界フリッカー値(CCF)はいずれも正常範囲であり,相対性求心性瞳孔障害(RAPD)は陰性であった。両眼に視神経乳頭腫脹があった。画像検査で占拠性病変や脳室拡大がなく,乳頭腫脹と関係する臨床症状がなかったので,脳脊髄圧の検査は行われなかった。1か月半後の腰椎穿刺による脳脊髄圧検査では初圧が300mm H2Oであり,脊髄液の組成は正常であった。その後の造影検査で上矢状静脈洞血栓症に続発した偽脳腫瘍が推定された。腰椎穿刺後うっ血乳頭は急速に改善し,20か月後の現在まで良好な視機能を維持している。臨床症状を欠き,画像検査で脳室拡大などがなくても,うっ血乳頭は偽脳腫瘍による可能性がある。

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過去33か月間にくも膜下出血の患者58例が某病院に入院した。男性23例,女性35例であり,年齢は36~89歳,平均62歳であった。入院直後に眼科医が網膜出血と硝子体出血の有無を検索した。網膜出血は116眼中27眼(23%),硝子体出血は8眼(7%)にあり,81眼(70%)には出血がなかった。症例数では網膜出血のみが14例(24%),硝子体出血のみが6例(10%)にあり,38例(66%)には出血がなかった。世界脳神経外科学会(WFNS)によるくも膜下出血の重症度分類では,眼内出血がある20例は出血がない38例よりも有意に高い重症度を示した(p=0.003)。頭部CT所見と眼内出血の有無には有意差がなかった(p=0.11)。くも膜下出血の転帰は,眼内出血がある症例では出血がない症例よりも有意に不良であった(p=0.004)。眼内出血は,くも膜下出血による意識障害や運動麻痺が高度で経過が不良な症例に好発する傾向があった。くも膜下出血に併発する硝子体出血(Terson症候群)の頻度は10%であった。

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29歳男性が1週間前からの右眼中心暗点と視力低下で受診した。矯正視力は右眼0.01,左眼1.2であり,右眼後極部の網膜深層に白斑が多発していた。黄斑に斑状病変があり,その周囲に漿液性網膜剝離があった。フルオレセイン蛍光造影で白斑に相当する部位が過蛍光を呈した。黄斑下病変は早期から過蛍光であり,後期では色素漏出があった。これらの所見から黄斑下病変を伴う多発一過性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome:MEWDS)と診断した。1か月後に白斑は消失し,黄斑下病変が瘢痕化したが視力には変化がなかった。発症早期からあった黄斑下病変が萎縮化し,非可逆的な視力障害の原因になったと解釈される。

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角膜輪部に接する球結膜に生じたconjunctival intraepithelial neoplasia(CIN)4例4眼を治療した。男性3例,女性1例で,初発が2例,再発が2例であり,年齢は53~72歳,平均64歳であった。病理組織学的検索を全例に行い,CINの診断が確定した。ローズベンガル染色で腫瘍の範囲を同定し,健常結膜を含めて腫瘍を切除し,結膜欠損部に冷凍保存羊膜を縫着した。全例で0.04%マイトマイシンCを術中に塗布し,再発例である2眼では冷凍凝固を併用した。5~38か月,平均20か月の経過観察で再発はなく,結膜の過剰な瘢痕化もなかった。CINの切除と羊膜移植の併用が奏効した症例群である。

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目的:糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術の長期成績の報告。症例:同一術者が8年間に硝子体手術を行った239例351眼を対象とした。全例がびまん性糖尿病黄斑浮腫で,後部硝子体膜の肥厚と剝離がなかった。324眼(92.3%)に汎網膜光凝固の既往があった。結果:術後の観察期間が5年以上の237眼と5年以内の81眼との間に,術前背景因子と術後最終視力に差がなかった。術後5年以内に死亡した33眼では,年齢,HbA1c,ヘマトクリット値,腎症,術前視力について,ほか2群の318眼と有意差があった。すべての3群で,術後1年の視力と最終視力に差がなかった。すべての3群で,術後視力が不変または改善した症例は約80%であった。結論:糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術の長期成績は概して良好であった。

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25ゲージ硝子体カッターを角膜サイドポートから挿入する前部硝子体切除術を5眼に対して行った。症例は眼内レンズの縫着2眼,角膜サイドポートに硝子体が嵌頓した2眼,白内障術中に破囊した1眼である。前部硝子体切除術は23ゲージ前房メインテナーで灌流し,別の角膜サイドポートから25ゲージ硝子体カッターを挿入して行った。全例で合併症はなかった。無縫合で行える点と,術者が任意の部位に角膜ポートを作製し,容易にアプローチを変えることができる点が従来の方法よりも有利であった。角膜のひずみや虹彩への侵襲が小さいために,術後の細隙灯顕微鏡検査で角膜の浮腫混濁や前房内の細胞が少なく,経過が良好であった。

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59歳男性が両眼の視力低下で受診した。23年前に両側の眼窩リンパ過形成と診断され,副腎皮質ステロイド薬の投与を受けた。16年前に左眼窩に放射線照射を受けた。4年前に右眼窩腫瘍の生検で,眼窩粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫と診断された。右眼窩に放射線照射と,cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone(CHOP)療法が行われた。矯正視力は右眼0.1,左眼0.5であった。両眼窩腫瘍の増大,全身リンパ節腫脹,胃腫瘍が発見され,生検で胃腫瘍はMALTリンパ腫と診断された。頸部リンパ節生検で,リンパ球のクローナリティは検出されなかった。血清のIgG値が基準範囲の上限の6倍に増加していた。化学療法を行い,腫瘍は部分寛解し免疫グロブリン値が低下した。本症例のMALTリンパ腫は眼窩原発と推定された。

基本情報

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臨床眼科
59巻12号 (2005年11月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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