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眼房水は後房から瞳孔領を経由して前房へ入り,前房隅角の線維柱帯からシュレム管を通って,眼球外へ流出する。生理的状態でも,虹彩の瞳孔縁と水晶体の前面はほとんど接触するように近接しているので,房水が後房から前房へ流出する際に軽い流出抵抗が存在する。これを瞳孔縁における生理的房水流出抵抗という。なんらかの機序で,瞳孔縁における房水流出抵抗が高くなったものを瞳孔ブロックpupillary blockという。瞳孔ブロックには,瞳孔縁が水晶体と癒着しておこる完全瞳孔ブロツクcomplete pupillary blockと,瞳孔縁の癒着を伴わない比較的瞳孔ブロックrelativepupillary blockとがある。
完全瞳孔ブロックは慢性の虹彩炎あるいは虹彩毛様体炎などでおこる。この場合,瞳孔縁の全周が水晶体と癒着して輪状の虹彩後癒着annular(ring) synechiaがおこったものを瞳孔遮断se—clusio pupillaeと呼ぶ(図1,2)。前房内に出たフィブリンが器質化して瞳孔領を覆ったり,あるいは増殖した線維血管膜が瞳孔領を埋めたものを瞳孔閉鎖occlusio pupillaeと呼ぶ(図3,4)。瞳孔遮断と瞳孔閉鎖は同時に存在することも多い。瞳孔遮断では,瞳孔縁と水晶体前面にできた結合組織が収縮し,瞳孔縁は水晶体側に引き込まれるので,しばしば瞳孔縁の虹彩色素上皮層が反転してぶどう膜の内反entropion uveaeがおこる。瞳孔遮断および瞳孔閉鎖のいずれの場合でも,後房から前房への房水の流れが遮断されるので,後房圧が上昇して虹彩を押上げる。その結果,水晶体と癒着のない部位の虹彩が膨隆する。これを膨隆虹彩iris bombéという。この状態を放置しておくと,周辺虹彩前癒着を生じて難治性の緑内障に進行する。
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