公衆衛生 39巻8号 (1975年8月)

特集 "環境"を考える

環境論序説 土屋 健三郎
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はじめに

 かけがえのない地球(only one earth)を旗印にかかげたストックホルムの人間環境会議は,世界の人々に環境とは何かを考えさせる絶好の機会であった1).しかし,このストックホルムの花々しい「環境」の打上げに対して,その会議の内容,その後の活動などを理解している人はごく少数のように思われる.

 環境という言葉,特にそれと人間との係わり会いについての認識と学問とは,すでに何十年も前から存在していたが,最近になって新しく認識され始めたのはいろいろな理由による.人類にとって生命や生活の脅威である悪い側面の自然環境をほぼ克服した先進諸国にあっては,今度は産業による自然環境の破壊という側面で「環境」をとらえ始めるようになった.しかし,いわゆる発展途上国にあっては環境問題はあい変らず悪い側面の自然環境の脅威に対する対策でしかあり得ない.

環境論ノート 庄司 光
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はじめに

 環境論は医学,理化学,工学はもちろん,人文科学,社会科学のそれぞれの立場から色々の議論ができる訳であるが,ここには公衆衛生のなかの環境衛生の立場から考えてみたい.これは,環境を直接の研究対象としている環境衛生学の系譜を辿ることにもなるし,今後の研究方向を探求することにもなろう.すでに本誌39巻3号で安倍三史氏が「環境保健と地域住民」という論文のなかで環境論について本格的に述べておられる.私は公衆衛生関係者の一人として,主として昭和年代を回顧し,社会の変遷に伴って環境に対する考え方がいかに変ってきたかを述べる.それはおよそ2期に分けられる.

人間の環境適応能 伊藤 真次
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 人類がはじめて出現したのは今からおよそ100万年前で,オーストラロピテックスと呼ばれるサルと人間との中間のものがそれであるとされている.彼らは石器をつくり,火も使ったらしい.この動物の化石はアフリカで発見されている.しかし,アフリカでは200万年くらい前の人類の化石も発見されたというから,あるいはこれが最初の人類であるかも知れない.もう少し新しいのはジャワ島で発見されたピテカントロプスと中国の北京の近くで発見された北京原人で,これらはおよそ50万年前に生きていた.また,ネアンデルタール人と呼ばれるものは,今から十数万年前にヨーロッパ,中央アジアおよび北アフリカにひろく住んでいたらしい.しかし,これらの人類が現在の人間の直接の祖先であるとはいえない.現在の人類と同じクロマニヨン人は今から約5万年前から約1万年前までの時代にヨーロッパに住んでおり,彼らは氷河時代に洞窟の中に起居し,狩猟生活をいとなんでいた.

 その時代はいわゆる大氷河時代で,北半球の陸地のかなりの部分が氷河でおおわれており,ことに北アメリカ大陸の北半分,ヨーロッパの北半分,シベリアの大部分が数十メートルの厚い大陸氷河におおわれていた.しかし,この時代の地表の温度は極端に低いわけでなく,熱帯地方で現在より約5℃,温帯地方ではおそらく10℃くらい低かったものと推測されている.

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保健所における環境衛生

 環境衛生は主体となる人間と発病の要因と環境との3つの要素のつながりを究明してその対策をたてることが目標であって,外的な発病要因と環境に対する対策が主体となるものである.そして衛生工学に基ずく環境づくりがその中核をなすものと考える.

 保健所に於ける環境衛生業務の内容をあげると(1)水の利用汚染防止に関するものとして,水道法の施行に関すること,水道水源調査に関すること,小規模水道条令に関すること.(2)環境汚染防止に関するものとして,ゴミし尿処理施設の設置及び指導に関すること,一般廃棄物処理体係の指導に関すること,産業廃棄物の処理計画に関すること,産業廃棄物処理施設に関すること,事業所産業廃棄物処理営業者等の指導監督に関すること,下水道終末処理の維持に関すること,プール海水浴場の衛生確保に関すること.(3)多数集合する場に於ける衛生確保に関するものとして理容師法,美容師法,興業場法,公衆浴場法,クリーニング業法に関すること,環境衛生関係営業の運営の適正化に関すること,環境衛生関係営業に係る同業組合に関すること,環境衛生金融公庫に関すること,旅館業法に関すること,建築物に於ける衛生的環境の確保に関すること,(4)公害関係では公害の苦情処理,公害保健に関すること.及び各種調査に関すること,(5)食品問題として食品衛生に関すること,乳肉衛生に関すること.

公害と母子保健 森山 豊
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はじめに

 わが国では,四日市における亜硫酸ガスによる大気汚染に端を発した公害問題は,その後土壌・水質汚染,騒音,振動,悪臭などによる公害のほか,食品,薬公害など,非常に大きな社会問題となってきた.

 公害は直接,間接に人の健康に大きな影響を及ぼすものであるが,今後の大きな問題は,この公害が胎児あるいは乳幼児にどのような影響を及ぼすかということである.

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快適な作業環境

 地域の環境保健などは,一番広い環境問題として当然取りあげられるはずなので,ここでは主として労働環境を中心に考えてみたい.

 この労働環境,ことに作業環境に対する考え方も大きく変化してきつつある.

老年期と環境の関係 大和田 国夫
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はじめに

 外部環境の変動に対する内部環境の恒常性は生体がもつ重要な性質であると約1世紀前にClaude Bernardは述べた.そしてこの内部環境の恒常性こそ,自由な生命,いいかえれば健康の条件である.従って,健康の維持には内部環境の恒常性が必要であり,ひいては外部環境が健康に対し重大な鍵を握っていることを意味している.他方,生態学的にみると,人体の健康状態は宿主(host),病因(agent),環境(environment)の3要因の相互関係によって決定されるから,このバランスがくずれることにより,健康の破綻を来たすことになる.ここにいう病因も広い意味では環境の一部をなすものであるから,人体(健康)にとって環境は重要な要因であることがわかる.

 一般に環境とは,ばく然と生物あるいは無生物の周囲にあるすべてのものを意味し,とくに人間生態学では人間をとりまくすべてのものであって,この環境と人間との相互関係を研究する科学であるから,とくに健康の維持・増進や健康の阻害・破綻との関係を重要視している.

寿命と環境 野瀬 善勝
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寿命の地域集積性

 過去90年間(1880〜1970)における世界各国の平均寿命(0歳時の平均余命,以下単に寿命という)の年次的な移り変わりを概観してみると1〜3),昔長命だった国は最近でも長命であり,昔短命であった国は依然として短命である.が,寿命の国別の特性をかき乱そうとする傾向もあって,昔短命といわれたドイツ,イタリー,日本など,近年寿命が大幅に伸びて,国別の差違が逐年縮小される傾向にある.このことは,わが国の府県別にみた寿命の地域差についても全く同じことが指摘される1〜3).昔長命であった県は最近も長命であり,昔短命であった県は依然として短命である.が,寿命の地域差をかき乱そうとする傾向もあって,東京,神奈川,大阪,京都,兵庫などの大都市所在府県は,北陸,東北の諸県と共に大正10〜14年には,もっとも短命で不健康な地域であったが,時代が移り変わるにつれて,大都市の健康改善が他の農業県より目立って著しく,戦後の昭和23〜24年には,寿命の最優良部類に属し,府県別の差違が逐年縮小される傾向にある.このように寿命の地域差を存続しようとする傾向と,それをかき乱そうとする相反した傾向が交錯している.が,大正10〜14年の生命表と昭和23〜24年の生命表との間には統計的に有意の順相関が認められる4)

大都市における生活環境 柴田 徳衛
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よい都市,よい生活環境とは

 一体よい都市とは何であろうか.またよい生活環境——換言すれば,健康で快適な生活環境——とは何であろうか.またそれらを実現させるための条件は何であろうか.

 これまで一般に考えられ主張されたこと,そしてまた指標としてとられてきたものは,施設の物的な数量であった.よい都市とは一般に立派な建物——とくに近代的超高層ビル——摩天楼が壮麗に建ちならんで朝日にキラキラ輝き,それらが全館すばらしいガラスでもはめこまれており,その間に能率よい道路と駐車場があって超モダンな自動車が走りまわり,そのビルのなかに高級ショッピングセンターがならび,パリッとした服装の会社員が高級アクセサリーを身につけてキビキビと働き……といった形で考えられてきたようだ.

環境権論の意義と現状 森島 昭夫
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環境権論の背景

 環境権ということばは,今でこそかなり耳慣れたものとなっているが,このことばがわが国で提唱されたのはつい5年ほど前のことである.

 周知のように,わが国における公害問題は,高度経済成長政策が具体的な実を結びはじめた昭和30年代,とくにその後半から,いっきょに噴出した感があり,大気に水に広汎かつ深刻な汚染が進行していることが認識されるようになつた.そして,水質保全法,工場排水法,あるいはばい煙規制法など,なにがしかの法的規制がおこなわれたにもかかわらず,公害問題の深刻化は,その後の経済成長とともにいよいよ速度を早め,将来の世代にわたってとり返しのつかない環境破壊がもたらされることが憂慮されるにいたった.昭和40年代に入ると,水俣病,イタイイタイ病,四日市ぜん息病に対する損害賠償訴訟が提起され,従来の法律の枠組みがこのような大規模な環境破壊にとうてい対応できないことが痛感された.

公害の経済学 市川 洋
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国土と人口

 日本は狭い国土に多くの人々がひしめきあっていると言われている.これは統計によって確かめる必要がある.「国際比較表」(表1)は世界主要各国のうち,必要な数字の得られているものの,おもなものを示したものである.この表の重点は,面積1平方キロメートル当りの国民所得および人口である.

 全国土当り人口密度は,日本の1平方キロメートル当り人口は279人で,オランダの318人,ベルギーの312人より1割強少なくなっている.最も人口密度の低い国は,この表ではカナダであって,1平方キロメートル当り2人であり,この人口密度は日本の100分の1以下である.さて,日本は山岳地帯が多くて,可住地域が少いと言われている.この実情は国際比較表の「可住地域比率」により明らかにされる.ここで言う「可住地域」とは,国連統計上「森林」に分類されている土地を除いたものであり,実際の可住地域よりも範囲が広いと考えられるけれども,日本の状態をかなり明らかにすることができる.

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はじめに

 ここ10年間は環境という言葉が盛んに,しかも無造作に,色々な場面で使用されている.ことに高度の経済成長の波の影響として,公害問題が大きく叫ばれるようになって来た現在は,ほんとに環境という言葉の意味するものを,充分に考えて見なければならぬ時代になったと申してよい.

 衛生学の領域では,この環境という言葉のもつ意義は大きなのである,環境衛生といえば衛生学の領域の中では,学問としてその領域は広く,しかも深いものであって,これが勉強はそう簡単なものでなく,またたやすくできるものではない.衛生学領域でいう3大環境条件すなわち空気,水,そうして土が健全なことは,人間生活にとって最も重要な条件であり,しかも人間生活を快的なものにするのである.

自然環境といのち 石神 甲子郎
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いのちとたましい

 生物共通の生存目的として,先ず個体維持を計り,次いで,種族維持を計ることが生物固有の営みである.この原則は植物であろうと動物であろうと差異はない.人間も動物の一種族に過ぎぬので,同様に個体維持と,種族維持とが,何物にも優先する本能である.いいかえれば,人にとって最も大切なものはいのちであり,次は子孫を残すことである.ところが,わが国の人々は平常の生活に平和や安全について,特に努力することを要せず,また,生命の不安もなく過しているので,己の生命の貴重さや大切さについて無反省な生活を送っている者が多い.

 しかし,一度天災や人災などが発生して,己の生命の危機が身に降りかかった場合には,俄然自己防衛のために無意識の間にも全力をつくして,生命の防護に努力せぬ者はない.このことは,人に取ってかけがえのない最も貴重なものは生命であるということを,本能的に身につけている証拠である.ちなみに自己防衛力を失った生物は必然的に消滅する運命となる.

発言あり

注射禍 , , , ,
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体の自主管理と衛生教育

 一般に「薬に副作用は付きもの」といわれる.副作用に対して,病を押える効能をより大きく活用出来る時,はじめて薬の効用が認められる.ところで,「副作用をより低く押える」には,その人の体質や,その時の体調に左右される,それには,薬を投与する前に,投与される側と,する側双方に「注意義務」が課せられる.この「注意義務」のどちらかに誤謬があれば,不幸な事態の発生をさけることが出来ない.昨今話題になっている「注射禍」も,こうした過程の中で発生していることを先ず押えておきたい.

 予防接種等の事故に対する補償問題は,事故の発生結果にのみ固執されがちだが,それは,社会福祉が慈善や恩恵でごまかされるのとよく似ている.もちろん,現実問題をさけて通れとはいわない,社会的にhandicapを背負った人の社会生活を保障する社会的systemは,人権上からも確立されねばならない.が,それと同時に,公害問題等でも明らかにされつつあるように,その「発生源」をいかに断ち切るかを考えねばならない.

綜説

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I.はじめに

 大変大きな,そして難しいテーマで私の手に負えそうにはない.また,季節順応の云々ということになると季節に対する生体の対応態勢という事に限定されるので,与えられた紙面を満たすだけの知識と経験とを私は持ち合わせない.ところが,民族差ということになるとこれは大問題であり,非才の小生はその荷に耐えない.編集子にお伺いを立てた所,お前のこのテーマに関係して経験した事を述べ考えればよいとのこと.よって敢えてお引受けする次第である.

 そもそも此のテーマは云うなれば生理学と衛生学との境界領域にある問題または両学にまたがり横たわる広領域の問題である.季節順応のメカニズムを云々すれば生理学であり,季節変動の主因を環境の諸要素を求め変動の生体の健康への影響をみるのは衛生学ことに環境衛生学の重要領域になる.さらに民族差となれば,それが民族固有の遺伝的又はそれに近い体質差なのか,それとも民族固有の生活習慣にもとづく出生以後の獲得性差異なのか,という点に到ればこれは遺伝学の問題ともなりかねない.

連載 公衆衛生の道・5

保健所活動のスタート 山下 章
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防疫こそわが一生の仕事なり

 20年近くも精魂打ち込んできたある日突然四谷保健所長を命ぜられた.公衆衛生院では保健所,保健所とよく先生方の話に出てきたし,防疫活動でも保健所との関係は深かった.だが,防疫という目だけで保健所を見ていた私には,本庁業務の下請機関という認識を一歩も出ていなかった.ところが,保健所には保健所長室があって,大きな机と肘掛椅子が置かれており,隣の部屋には応接間まである.古汚い机と椅子でごちゃごちゃしている防疫課とは大きな違いである.何か急にえらくなってしまったような気分になる.それだけに防疫課長とは違った責任みたいなものが重く感ぜられもした.

 人口5万,3方キロしかないこじんまりした四谷保健所は,しんまい所長には最適の場所だった.だが,こんなこじんまりしたところでさえ,どうも住民と保健所の間にカーテンみたいなものがあって,少なくとも保健所と住民とがとけあっている,といった感じはない.

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はじめに

 48年度第1回測定に際しては毛髪生長率を季節の変動にかかわりなく一定(0.3mm/日)として計算した.これは毛髪生長が季節や年齢,性,個体差により多少の相違があり,疫学的立場からの考察には一つの基準が必要とされたからである.従って測定結果の分析において,規制前と後との比較には一つの問題点が残された.即ち,前回の測定結果では常識的な予測に反して規制後にむしろ毛髪水銀蓄積量増加の傾向が認められる.この原因の一つに季節による生長率を一定としたことも関与しているのではないだろうかという問題も残る.今回の測定は,昨年とほぼ同時期に,同一被検者で,同一部位より毛髪採取しており,前回問題となった季節の相違による毛髪生長率の違いという問題は一応解決された.

 今回の追跡調査では対象を前回の一般市民男女に限定し,前回行なった魚介類取扱者は除外した.

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 ABS系合成洗剤は,常識的な普通の使い方で洗うことは無害である(厚生省)1)とされている.しかし,ABSなどの界面活性剤を含む合成洗剤は,使用方法や暴露量・濃度などによっては,生体に有害作用を生ずることもある2,3).ところで,合成洗剤の毒性に関する研究は,従来,動物実験が多く,直接人体に関して検討した成績は比較的乏しく,その毒性もなお確定的とは言い難いように思われる.

 かかる観点から,著者は,某合成洗剤製造工場の作業者について,合成洗剤の人体への影響をうかがうべく健康調査を行い,その結果,合成洗剤の健康への影響を示唆する若干の成績を得たので報告する.

日本列島

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 沖縄国際海洋博覧会が7月19日の開会式についで20日からはなやかにスタートしたが,その開催の裏には多方面に亘る分野での長期間の苦労が秘められている.その中で最も重要かつ深刻な問題として医療の確保と衛生対策がある.沖縄県には人口10万対でみると全国平均の1/2以下の医療施設しかなく,特に入院治療のできる一般病院は1/4にすぎない.従って医師等の医療従事者も1/2程度しかいない.このような量的な問題があるため,夜間,休日における医療の確保が困難な状況にあるのは勿論の事,日常の診療のうちでも重症患者の入院治療が非常にむつかしい.更に,亜熱帯に多い伝染病の対策上必要な隔離病舎も,市町村立で使用できるのは25床から30床しかなく,その運営を委託すべき市町村病院はゼロで,県立病院が多忙な救急,外来及び入院診療と共に引受けざるを得ない状況にある.

 大阪万国博覧会の時には入場者1,000対1.2人の傷病者が発生したし,沖縄若夏国体では1.5人の罹患率であった.海洋博時にはおそらく2.5人以上の傷病者がでるであろうと予想すると1日平均200人となる.会場内には診療所2,救護所5を設置し,70人程度の医療従事者が配置されている.又,食品衛生,防疫監視センターが設置され,県の食品・防疫監視員7名がいる.重症者はすべて会場外の病院へ搬送されることになっているが,既に航空機によって東京へ空輸された外人患者もいる.

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 沖縄県の7つの保健所には565名の定員がある.これは1保健所あたり平均約81名になり,医師2〜6名(平均3名余),歯科医師1名,保健婦26名を含んでいる.このように比較的多くの職員を有する理由として主なものは,保健所において結核,性病等の治療業務を行っていることと,54市町村に県保健婦を駐在させていることである.第二次大戦終結後,鼡族昆虫駆除等環境衛生を中心とした伝染病対策を実施していた保健所が,結核治療,伝染病治療,性病及び寄生虫病の治療と次第に社会情勢に対応して疾病治療を担当するようになったが,その結果,保健所の存在が地域住民に重要な医療の担い手として認識され,高く評価されてきた.又,その実績もすばらしいものがある.昭和47年5月15日沖縄の日本復帰後,特別措置等によって保健所における結核,性病の治療業務が認められ,現在結核患者の通院治療は主として保健所で行われている.これは全国平均の1/2しかない医療施設が一般疾病治療に忙殺され,結核治療は伝統的に保健所が行うものであり,又,現実的にもそのほうが最も好ましい適切な方策であるという関係者のコンセンサスがあって円滑に行われている.

 結核患者は昭和49年末で登録数7,427,うち肺活動性3,650(感染性537,非感染性3,063,予防投薬50),肺外活動性が242,不活動性2,568,不明967となっている.

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 沖縄県には本島以外には39の有人離島があり,そのうち,昭和48年末で24島に水道施設がある.又,昭和49年中に施設が完備した島が5島あり,残り10島が水道のない島となっている,これら有人離島は元来水資源が全くない所もあり,島の水資源の調査結果によって対策がとられているが,①水が豊富で上水道又は簡易水道整備が容易な島,②水が不足勝ちで一部雨水を利用する島,③水が得られず,雨水,海水の淡水化,又は近くの島から海底パイプによって送水することによって対応している島の3グループに大別される.

 現在(昭和49年3月末)29島の人口139,295人のうち125,876人が給水をうけているが,そのうち淡水化施設が1,海底送水完成したもの4(6島)となっている.前者は1,868人,後者は4,429人に給水しており(6つの島が給水対象),水資源のないこれら島々の住民は大喜びしている.現在水道のない10島を調査した結果,海底送水計画のあるものが1,将来計画2,水道施設着工2,貯水池又は各家庭に天水タンク設置しか方策がない島2,残りの2島は地下水調査が必要であり,そのうち1島は簡易水道計画があるが,他は淡水化装置の設置も検討する必要がある.

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 岐阜県,岐阜県公衆衛生協議会などの共催の岐阜県保健衛生大会は,8月1日午前10時半より,岐阜市の岐阜産業会館で,関係者約550名の参加のもとに,盛大に開かれた.

 この大会は公衆衛生活動に従事するものが一堂に集まり,地域の健康づくりへの認識を新たにすることがねらいで,年1回開かれるものである.

基本情報

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公衆衛生
39巻8号 (1975年8月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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