連載 公衆衛生の道・5
保健所活動のスタート
山下 章
1
1東京医大衛生学公衆衛生学教室
pp.556-560
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205062
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防疫こそわが一生の仕事なり
20年近くも精魂打ち込んできたある日突然四谷保健所長を命ぜられた.公衆衛生院では保健所,保健所とよく先生方の話に出てきたし,防疫活動でも保健所との関係は深かった.だが,防疫という目だけで保健所を見ていた私には,本庁業務の下請機関という認識を一歩も出ていなかった.ところが,保健所には保健所長室があって,大きな机と肘掛椅子が置かれており,隣の部屋には応接間まである.古汚い机と椅子でごちゃごちゃしている防疫課とは大きな違いである.何か急にえらくなってしまったような気分になる.それだけに防疫課長とは違った責任みたいなものが重く感ぜられもした.
人口5万,3方キロしかないこじんまりした四谷保健所は,しんまい所長には最適の場所だった.だが,こんなこじんまりしたところでさえ,どうも住民と保健所の間にカーテンみたいなものがあって,少なくとも保健所と住民とがとけあっている,といった感じはない.
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