特集 "環境"を考える
環境論序説
土屋 健三郎
1
1慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室
pp.492-496
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205045
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はじめに
かけがえのない地球(only one earth)を旗印にかかげたストックホルムの人間環境会議は,世界の人々に環境とは何かを考えさせる絶好の機会であった1).しかし,このストックホルムの花々しい「環境」の打上げに対して,その会議の内容,その後の活動などを理解している人はごく少数のように思われる.
環境という言葉,特にそれと人間との係わり会いについての認識と学問とは,すでに何十年も前から存在していたが,最近になって新しく認識され始めたのはいろいろな理由による.人類にとって生命や生活の脅威である悪い側面の自然環境をほぼ克服した先進諸国にあっては,今度は産業による自然環境の破壊という側面で「環境」をとらえ始めるようになった.しかし,いわゆる発展途上国にあっては環境問題はあい変らず悪い側面の自然環境の脅威に対する対策でしかあり得ない.
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