日本列島
海洋博と医療及び衛生対策—沖縄県
伊波 茂雄
pp.511
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205050
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沖縄国際海洋博覧会が7月19日の開会式についで20日からはなやかにスタートしたが,その開催の裏には多方面に亘る分野での長期間の苦労が秘められている.その中で最も重要かつ深刻な問題として医療の確保と衛生対策がある.沖縄県には人口10万対でみると全国平均の1/2以下の医療施設しかなく,特に入院治療のできる一般病院は1/4にすぎない.従って医師等の医療従事者も1/2程度しかいない.このような量的な問題があるため,夜間,休日における医療の確保が困難な状況にあるのは勿論の事,日常の診療のうちでも重症患者の入院治療が非常にむつかしい.更に,亜熱帯に多い伝染病の対策上必要な隔離病舎も,市町村立で使用できるのは25床から30床しかなく,その運営を委託すべき市町村病院はゼロで,県立病院が多忙な救急,外来及び入院診療と共に引受けざるを得ない状況にある.
大阪万国博覧会の時には入場者1,000対1.2人の傷病者が発生したし,沖縄若夏国体では1.5人の罹患率であった.海洋博時にはおそらく2.5人以上の傷病者がでるであろうと予想すると1日平均200人となる.会場内には診療所2,救護所5を設置し,70人程度の医療従事者が配置されている.又,食品衛生,防疫監視センターが設置され,県の食品・防疫監視員7名がいる.重症者はすべて会場外の病院へ搬送されることになっているが,既に航空機によって東京へ空輸された外人患者もいる.
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