特集 "環境"を考える
寿命と環境
野瀬 善勝
1
1山口大学医学部公衆衛生学教室
pp.522-526
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205053
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寿命の地域集積性
過去90年間(1880〜1970)における世界各国の平均寿命(0歳時の平均余命,以下単に寿命という)の年次的な移り変わりを概観してみると1〜3),昔長命だった国は最近でも長命であり,昔短命であった国は依然として短命である.が,寿命の国別の特性をかき乱そうとする傾向もあって,昔短命といわれたドイツ,イタリー,日本など,近年寿命が大幅に伸びて,国別の差違が逐年縮小される傾向にある.このことは,わが国の府県別にみた寿命の地域差についても全く同じことが指摘される1〜3).昔長命であった県は最近も長命であり,昔短命であった県は依然として短命である.が,寿命の地域差をかき乱そうとする傾向もあって,東京,神奈川,大阪,京都,兵庫などの大都市所在府県は,北陸,東北の諸県と共に大正10〜14年には,もっとも短命で不健康な地域であったが,時代が移り変わるにつれて,大都市の健康改善が他の農業県より目立って著しく,戦後の昭和23〜24年には,寿命の最優良部類に属し,府県別の差違が逐年縮小される傾向にある.このように寿命の地域差を存続しようとする傾向と,それをかき乱そうとする相反した傾向が交錯している.が,大正10〜14年の生命表と昭和23〜24年の生命表との間には統計的に有意の順相関が認められる4).
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