特集 "環境"を考える
環境権論の意義と現状
森島 昭夫
1
1名古屋大学法学部(民法)
pp.531-534
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205056
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環境権論の背景
環境権ということばは,今でこそかなり耳慣れたものとなっているが,このことばがわが国で提唱されたのはつい5年ほど前のことである.
周知のように,わが国における公害問題は,高度経済成長政策が具体的な実を結びはじめた昭和30年代,とくにその後半から,いっきょに噴出した感があり,大気に水に広汎かつ深刻な汚染が進行していることが認識されるようになつた.そして,水質保全法,工場排水法,あるいはばい煙規制法など,なにがしかの法的規制がおこなわれたにもかかわらず,公害問題の深刻化は,その後の経済成長とともにいよいよ速度を早め,将来の世代にわたってとり返しのつかない環境破壊がもたらされることが憂慮されるにいたった.昭和40年代に入ると,水俣病,イタイイタイ病,四日市ぜん息病に対する損害賠償訴訟が提起され,従来の法律の枠組みがこのような大規模な環境破壊にとうてい対応できないことが痛感された.
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