綜説
季節順応の人種的差異について
中村 正
1
1長崎大学医学部衛生学教室
pp.548-555
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205061
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I.はじめに
大変大きな,そして難しいテーマで私の手に負えそうにはない.また,季節順応の云々ということになると季節に対する生体の対応態勢という事に限定されるので,与えられた紙面を満たすだけの知識と経験とを私は持ち合わせない.ところが,民族差ということになるとこれは大問題であり,非才の小生はその荷に耐えない.編集子にお伺いを立てた所,お前のこのテーマに関係して経験した事を述べ考えればよいとのこと.よって敢えてお引受けする次第である.
そもそも此のテーマは云うなれば生理学と衛生学との境界領域にある問題または両学にまたがり横たわる広領域の問題である.季節順応のメカニズムを云々すれば生理学であり,季節変動の主因を環境の諸要素を求め変動の生体の健康への影響をみるのは衛生学ことに環境衛生学の重要領域になる.さらに民族差となれば,それが民族固有の遺伝的又はそれに近い体質差なのか,それとも民族固有の生活習慣にもとづく出生以後の獲得性差異なのか,という点に到ればこれは遺伝学の問題ともなりかねない.
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