特集 生殖補助医療
生殖補助医療で生まれた子どもの心
渡辺 久子
1
1慶應義塾大学小児科学教室
pp.131-137
発行日 2002年2月25日
Published Date 2002/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902818
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はじめに
世界で初めて体外受精によるベビーが1978年に生まれてから,約四半世紀経った。日本では最初の体外受精児が1983年に東北大学医学部で生まれたのを皮きりに,1990年までに1708人,1991年だけで1700人にと,生殖補助医療(ART:assisted reproductive technology)で生まれた子どもの数は急増している。今日生殖補助医療は,女性週刊誌に体験者の記事が紹介されるほど日常化し,商業主義化している。インターネットには日本人に,アメリカでの体外受精を勧める情報が流され,卵ドナーや代理母を提供する「国際受精機能センター」や「家族創造社」といった会社に費用をだせば,体外受精を受けることができる状況がある17)。
しかし,それでよいのであろうか。 生殖補助医療は「ひとつの命」を生み出し,その人が人類史上,前代未聞の人生を,時代のパイオニアとして生きなければならないことにつながる。私たちは今,「生まれてくる子どもの幸せを保障できるのか」という現実的な課題に直面している。
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