助産婦雑誌 42巻1号 (1988年1月)

特集 「待ち」の出産,「待ち」の子育て

[対談]

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 本特集は,今大きな潮流を形成しつつある"自然出産"の根底にある思想を明らかにしようと意図している。

 吉村正先生は本誌にも何回かご登場いただいている哲学的自然主義派の医師。山田桂子氏は著書『「待ち」の子育て』が"天声人語"(朝日新聞)でも激賞された気鋭のフリー・ライター。その二人が共同して昨年『お産って楽しいね』を出版,吉村病院における手づくりふうお産の実践記録を世に紹介した。

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子供は親の価値観の影響下にいる

 毛利 山田さんがお書きになった『「待ち」の子育て』という本は,ずいぶん評判になったようですが,このタイトルはどのような意図でつけられたのですか。

 山田 いまのお父さん,お母さんというのはすごく焦っているといいますか,競争社会におくれをとるまいというので,子供たちに「早く,早く」とせきたてますでしょ。最近は特に2歳からでは遅過ぎる,胎児から教育しなければとかいうようにだんだん過熱してきていて,そういうふうに子供を追い込むというか,親の価値観を押しつけてしまうというか,それで果たしていいんだろうかということへの反論みたいな意味をこめたんですけどね。

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 NHKテレビの『はっさい先生』を,毎朝楽しみに観ている。食べもの,ことば,習慣などのまるで違う大阪へ中学教師として赴任した新米の女先生は,チャキチャキの江戸っ子。そのせいか,彼女のおもむくところ,なぜか決まって大なり小なり事件が持ち上がる。

 しかも,その原因たるや例外なくご当人のへま,おっちょこちょい,頓馬,ずっこけ,早とちり,勘違い,無鉄砲などに由来する,つまりは,身から出た錆なのである。すなわち,このヒロインは,のっけからきわめて未熟・未完成な人間として登場してくる。

"いのち"の重さを思う 岡村 裕
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母と子のきずなの実感

 私たちは赤ちゃんが生まれた瞬間,顔の清拭と気道の吸引がすむと,臍帯のついたまま股間から抱き上げて,赤ちゃんをただちにお母さんとお父さんの前にお見せする。この世に生まれて初めて対面する人が,お母さんであり,お父さんであってほしいからである。

 お母さんには長い妊娠期間中,種々様々な不安・心配・苦慮・悲喜交々があったに相違ない。在胎日数が加わるにつれて,身体的・精神的負担が増してきたことであろう。

私を育てる私自身 坂西 歌子
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妊娠から出産心も体もあけ放つ訓練の始まり

 私は現在,6人の子供の母親ですが,6人を産んで,その間に私は確かに変わってゆきました。一言でいえば,心も体もさらけ出すことによって6人の子供に出会うこともでき,私自身の姿にも向きあうことができた,そのプロセスだったといえます。

 昭和51年5月24日の早朝に,私は妊娠前半の苦しみが嘘のように,1時間余りの軽いお産で3,500 gの男の子(長男)の母親となりました。

小特集 奇形・障害児を出産した母と児への看護・Ⅱ

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はじめに

 分娩直後,ほとんどの母親は「五体満足ですか」「どこか,奇形はありませんか」とたずねる。妊産婦にとって,妊娠前期から出産後まで一番気にかかるのが「奇形」の有無といえる。

 各年度の奇形出産頻度をみると0.7〜0.9%に各種外表奇形がみられ,その中でも口蓋裂が出生1万に対して12.24と多く,ついで口唇裂11.38が占めている。この2種類の奇形の発生率が最も高いのであるが,口唇・口蓋裂は顔面の中央でみられるため,ショックも大きいようである。

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はじめに

 現代は,超音波画像診断により,出生前から胎児の性別を知ることができ,施設によっては希望者に子どもの性別を教えている。親にとっては,生まれてくるわが子が"五体満足"であることと性別が一番気がかりなのは,臨床の現場にある者は誰もが感じているところであろう。

 人間にとって自分が男であるか女であるかは,あまりに当り前なこととして日常は意識しないが,性別は生きていく上でのアイデンティティの基盤となっているものである。だからこそ,親はまず「男の子ですか,女の子ですか」とたずねるのである。

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ロンドンへ

 私は昨年の8月まで10か月ほどニュージランドのネピアという小都市に滞在していた。格別の仕事もせず気楽な日々,ホーム・パーティには毎週末と言えるほどに招待していただいた。そこで知り合った人々は,助産婦であるのらしい私に,"日本では自宅出産がどの位あるの"や"自宅出産に立ち合ったことは?"などとよく質問してきた。

 どうやら何でも進んでいそうな日本は,出産についてもそうなのかを確認したいがための質問であった。しかし,初めのうちは,何事によらずムーブメントの遅れている日本では"まだそんな動きはないでしよう!"と言いたげにも聞こえて気にもなった。

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 マダガスカルはアフリ力大陸の東南に位置する島国.フランスから独立後27年の,まだ若い国である.面積は日本の1.6倍,18種族から成り立つ人口は1,000万人,国民性はいたってノビノビしている.

 シスター遠藤は首都のタナナリブに近いアンチラベのアベマリア産院で8年間,分娩を中心に妊産褥婦とベビーのケアにあたってきた.日本を出発後,2年間はフランス語研修のためパリに滞在,今回の帰国はまったく10年ぶりのことである.日本の変貌ぶりには感嘆を禁じえないとはおっしゃるものの,里帰り中の今も心はいつもアフリカの妊産婦とベビーたちの上にあるようだ.

連載 いのちの詩を読む・1【新連載】

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 明治三十四年八月、与謝野晶子はその第一歌集『みだれ髪』によって明治歌壇にさっそうとデビューした。

連載 助産婦が好きだから・10

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 「助産婦が好きだから」というタイトルをいただいて,やっと9回まで書いてまいりました。フーフー言いながらの仕事ではありましたが,残すところ3回ということになりますと,あれもこれもと書きたいことが結構あるような気がします。ですので,少し書いては心が移りでなかなか筆がすすみません。原稿も遅れがちになってしまっています。

 さて,ここまでずっと妊産婦さんのことをお話ししてきました。「助産婦が好きだから」なのですから当然のことなのですが,私はよく「看護者としての助産婦」という表現を使ってまいりました。ここらあたりでちょっと1回だけ道草をくわしていただき,少しだけ母性看護を離れて「看護」について書いてみたいと思います。

ニュースを読む

21世紀;モノも心も 牧 智子
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月面基地と嫁の立場

 1988年を迎え,21世紀が目前に迫ってきた感がある。今年生まれた赤ちゃんが小学校を卒業するころには,もう21世紀だ。歳月の流れ去る速さを思えば,これはまたたく間のことである。

 というわけで,このところ21世紀の世界について思いを馳せてみることが多い。未来を想像してみることは心楽しいことだ。困難な問題は山積しているものの,生きていれば明るい方向を探っていかれるものと信じたい。

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A 乳管が開通していないということは,乳管がなんらかの原因で詰まり,疏通性がない状態のことですが,その原因として,表のようなことが考えられます。これらはいずれもうつ乳の原因となりますので,乳汁産生が始まればうつ乳状態をきたし,乳房内に硬結・疼痛を伴います。

 通常乳口(乳腺葉)は15〜20個ありますので,搾乳の際5〜6か所からしか排乳されなかったり,排乳の仕方に太い細いがあると,細い原因は乳管が十分開通していないなどと診断,往々にして乳管開通法という手技を行なうようですが,それはあまりにも短絡的過ぎます。なぜなら,乳口は15〜20個あっても,各乳腺葉の発育状態は異なり,乳腺組織がたくさんある乳腺葉もあれば,ほとんどない乳腺葉もあるからです。また,それぞれの乳腺組織も,機能的に活発であったり,そうでなかったりする場合もあるので,乳汁が排出されていない,または,分泌状態が細いからといって,排乳障害と決めつけられないのです。先に述べたように,排乳障害があれば,必ずうつ乳状態を伴いますので,うつ乳状態をきたしていなければ,それぞれの乳腺葉の個性と考えて様子を見ていてよいわけです。

愛子さんの助産術ノウハウ・10

赤ちゃんの娩出のさせ方 長井 博
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 赤ちゃんの受けとり方一つにしても,医学的対応と愛子さんの対応との間には大きな隔たりを感じる。これをたとえば整体の心得のある人が見くらべると,いささか不穏当な表現になるかもしれないが,医師の扱い方を野蛮だと感じるかもしれない。

開業助産婦の週間日記・10

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 今月は福岡県中間市で開業の柴田エミ子さんです。柴田さんは,昭和22年に助産婦資格を取得したあと,熊本県で約10年間,自宅分娩の介助を中心に開業,転居後,総合病院産科で勤務助産婦を約20年務められたベテランです。

 現住所での開業は昭和58年。4年間の活動で,しっかり地域に根づいた着実な歩みを続けておられます。

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 わが国ではジョン・マネーの名はバトリシア・タッカーとの共著,『性の署名』で知られているが,その発展ともいえる『ラブ・アンド・ラブシックネス—愛と性の病理学』が同じ訳者によって翻訳された。題名は直訳すれば「恋と恋わずらい」となるだろうが,内容は生物学から心理学,社会学を含むマネーの性科学・哲学(彼の用語によればセクソロジー/ジェンダーオロジー)の体系的叙述である。『性の署名』は"Man and Woman, Boy and Girl"という本を一般向けに書き直したもので親しみやすい本であるが,「ラブ・アンド・ラブシックネス」はそのしゃれた題名にもかかわらず,内容のずっしり詰まった労作で,難解と言わないまでも歯ごたえ十分である。

 ジェンダー・ロール(性役割)という言葉は,今や専門家のみならず一般人の会話にも登場するようになったが,訳者の註によれば,もともとジョン・マネーが言語学の用語から借用して使い始めたとのことで,とくにジェンダー・アイデンティティ(性自認性同一性)とはコインの裏表であるとして,ジェンダー・アイデンティティ/ロールという形で用いられている。セックスとジェンダーの使い分けも,セックスは生物学的な性の側面,ジェンダーは心理・社会的な性の側面を表わす言葉として,用いられるのが普通だが,このような使われ方もマネーの意図とは異なるようだ。

JJM誌上講座・10 効果的な専門職教育のために

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 前回に引き続き,読者がよりよい教師のあり方(望ましい教師像)を考える具体的な手懸かりになりそうなものとして,筆者が大学生に調査したものの一部を紹介することにしたい。今回は,最も悪かった先生として回答されたものを紹介しよう。掲載にあたっての原則は前回と同様である。

知っておきたい産科免疫学の話・10

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はじめに

 妊娠中毒症は,ご存じのとおり,妊娠に伴い発症してくる疾患で高血圧・蛋白尿・浮腫を3主徴とする症候群ですが,その原因には不明の点が多くあります。また古くからいろいろな説が唱えられており,「学説の疾患」とも呼ばれています。

 これまでのシリーズで妊娠と免疫のかかわりについてお話ししてきましたが,産科領域で非常に重要な疾患であるこの妊娠中毒症にも免疫が関与しているのではないかということが,最近注目されています。もちろん,免疫反応だけで妊娠中毒症の発症原因や病態のすべてを説明することはできませんが,その発症のメカニズムの1つとして免疫反応の関与が考えられています。そこで今回は妊娠中毒症の病態と免疫反応とのかかわりについてお話ししたいと思います。

ペリネータルパソコン入門・10

パソコン通信の実際 山田 恒夫
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 前回はパソコン通信の基礎ということで,パソコン通信とは何か,準備すべきハードウェアおよびソフトウェア,通信条件などについて説明した。今回はこのパソコン通信の実際例について紹介することとする。

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 この表題の意味が分かりますか? 分娩中の胎児心拍数モニタリングは,分娩中の胎児監視の1つの手技として,ルチーンに用いられるようになりました。そして,胎児心拍数図から多くの胎児仮死が診断され,新生児の予後が著しく改善されたことは言うまでもありません。

 胎児心拍数図の所見が悪化したとき,胎児仮死だと思って帝切すると,胎児は思ったより元気で,何が原因でそうなったのか分からないような症例にぶつかることがあります。そんなとき,さっきの胎児仮死を思わせる胎児心拍数図の変化は胎児のどんな状態を示していたのだろうか,ひょっとしたら,みせかけの胎児心拍数図の変化で,胎児自身は元気だったのではないだろうか,といった疑問もおきてくるのです。

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 誰にでも,現在の自分を律する過去のできごとが1つや2つはある。助産婦ならなおのこと。こんなことは今後絶対にすまいと,肝に銘じていることが必ずあるはずだ。

 私の場合は,高年初産婦にぶつかると,自ずと気がひきしまる。あの日のできごとが鮮明に蘇ってくるのだ。

基本情報

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助産婦雑誌
42巻1号 (1988年1月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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