助産婦雑誌 16巻7号 (1962年7月)

口絵

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 虎の門病院は,昭和37年5月20日で開院以来満4周年を迎える。この病院の占める位置的特徴として官庁街の中心にあることから,内科,外科の設備が重点的となり産科,小児科は比較的小規模に設計されている。産科施設は5階の約1/4を占め,南側に面している。哺育室,新生児室,未熟児室,陣痛室,分娩室があり,北側が病室となっている。助産婦9名看護婦1名,助手3名で新生児室,分娩室を受持ち,病室とは別の勤務体制になっている。病室の勤務人員は助産婦3名看護婦12名,助手3名,病棟事務手1名で54ベットを受持っている。当院では,母子別室になっているので,そのための欠点を補うために哺育室を設けて母親の哺育教育が充分にできるように現在内部を改造中である。扉の向う側に分娩室,陣痛室がある。

巻頭随想

乳幼児の義務栄養 栗山 重信
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 将来のわが国を担当する子供の育成にあたつては心身共に健やかにするために教育と保健とは鳥の両翼,車の両輪のごとく平行して推進されるべきである。わが国の子供の教育は明治の始めより義務教育制が行なわれ,その効果はきわめて立派にあがり,世界に誇るべき状態となつている.子供の保健の方は教育に比して著るしく立ち遅れた感があり,先進文明国に比して長い間耻しい思いをしてきた.近年著るしく改善されてきたとはいえ,教育の面に比しては相当遅れている状態である.乳幼児の保健は大体家庭にまかせ適当に行なわせて,学齢期になると国家社会が非常なる努力をし大きな費用を投じて熱心に運営する.学童の保健も学校保健,学校給食,学校安全といろいろ努力せられる.乳幼児期は教育も大切であるが,保健に対する対策がことさら大切である.

 その中でも特に栄養が第一に大切な問題である.義務教育が津々浦々に行きわたると同様にすべての子供に必要なる食物は必ず摂り得るようにしなければならない.僻地,低所得層の家庭の子供には充分な栄養を摂り得ぬものが相当あると思われる.

講座

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 日本婦人の月経,とくにその周期についての調査研究は,いままでに多数報告されている.しかし,その大部分は,病院や産院に来た患者を対象として,患者の記憶をもとにして,調べたものである.したがつて,対象者が健康な婦人でないこと,記録の正確性などの点で,多少問題がある.この研究の特徴は,第1に健康な婦人を対象としたこと,第2には同一人について連続的な観察を行なつたこと,第3には記録の正確性である.

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 分娩に伴なう苦痛を除く方法として,スコットランドのSimpson(1811〜1870)がクロロホルムによる開放点滴吸入麻酔法を分娩時に使用したことに始まつた無痛分娩法は,その後麻酔医学の発達に伴なつて進歩してきたが,ごく最近になつてはじめて本格的な体制の上に行なわれるようになつた.無痛分娩法は分娩に伴なう苦痛を除くという単なる介補法ではなく,産科学,麻酔学はいうにおよばず,その他全くの医学能力を発揮し,二つの生命を分娩中,最も安全に快適に処理しようとする文化的な意味があるのである.したがつてその方法にも薬剤を使用しないで,いわゆる産婦の産痛に対する精神的諸因子を好転させるような精神予防性無痛分娩法,催眠術,あまり麻酔の知識を必要としない陰部神経麻酔法,および全身麻酔,局所麻酔,鎮痛剤投与などあり,これらの麻酔法にて,各症例にまた分娩経過中に最も適した方法を選択し併用しているのである.

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Ⅲ.前期破水および早期破水

 前期破水や早期破水はそれ自体直接的にアノキシアの原因になるというわけではないが,間接的に,アノキシアの原因となるような事態をひき起こすことがまれではない.アノキシアの原因としては,特異な存在ですが,必ずしもアノキシアということに限定せず,前期破水や早期破水を巡る諸問題といつた内容でお話を進めていきたいと思います.

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はじめに

 私達の教室では,分娩異常の原因について種々の面より追求を行なつているが,分娩時の疲労が子宮収縮に影響を与え,その結果,分娩の三大要素の一つである娩出力の微弱,分娩の遷延,出血量の増加など,分娩異常の重要な原因の一つとなる事が予想されるので分娩時の疲労について調査検討を加え,いささかの知見を得ているので報告する.しかしながら現在の所,基礎的研究の段階にあるものが多く,症例も少ないので,分娩取り扱い上直ちに役立つとは考えられないが多少とも参考になれば幸である.

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はじめに

 分娩開始時期を客観的にしかも正確に予知することができるとすれば,産科臨床上きわめて有意義なことでありますが,真の陣痛発来機序がなお未解決な問題として残されている今日,未だ適切な方法が見当りません.

 ところで1954年Smythはオキシトンを妊婦に注射することによつてある程度分娩開始時期が推定できると発表致しました.彼はこの方法を子宮筋のオキシトン感受性試験と名ずけました.

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新生児の観察と記録 藤井 とし
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はじめに 新生児期に見られる症状の特徴は,第一に子宮外の生活に適応するために現われ,その後の乳児期では当然病的と判断される症状を生理的に現わすことがある.第二に新生児は分娩による障害,妊娠中の母体の異常の影響をうけるため特有な症状を示す.第三に感染に対し抵抗が弱いことである.たとえばチアノーゼは,外界へ適応する生後しばらくの時期に全身或いは口周囲,四肢末端に見られ,病的では,呼吸障害,先天性心奇形,また分娩時の障害による脳内合併症に際して見られる.症状の観察に際し,生理的と病的とを鑑別し,異常を早期に発見するためには,新生児の生理,疾患に対する知識をもととし,精細な観察が非常に大切である.

 新生児の訪問指導に際し,観察する症状とその所見を記録するのに役立つよう具体的に述べたいと思う.

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 新生児訪問指導が実際に実施されるようになつてから半年たつた.50円という安い指導料とともにこの中にはいろいろな問題が多い.その障害の中で,なんとかこの半年間を歩んでこられた福島地方の成果をここに紹介する.

スイスの友へ② 長谷川 泉
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 友よ,文明都市の水飢饉というものを想像したことがあるか.水洗便所は使えないし,病院の手術にも制限が加えられ,そして伝染病はまんえんし,大火災が起こればお手あげだという恐るべき状態を想像したことがあるか.

 山と水の国スイスは美しく,そしてジュネーブも,ベルンも,バーゼルも,そしてチューリッヒも水の都である.スイスにいては想像もできないことが,いま世界一の大都市にみじめにもふくれあがつた東京に起ころうとしている.目下東京は時間給水である.

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 1週間の保健所実習では,働きを充分に理解するまでには行きませんでしたが,ひと通りの断面を覗く事ができました.

 特に母子衛生だけに絞りましたので直接つながりがある助産婦との関係を考えながら実習できましたのは,有意義なことであつたと思います.

巨大児に関する統計 奥田 佳子
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 巨大児の定義は,従来きわめて種々の提唱があり,基準体重をみても,学者により,きわめて多種多様にわたつている現状であります.

 最近万国婦人科学会において,各国の平均体重の20%増しをもつて巨大児と規定するよう決定したということであります.

連載 女性という時期・2

成熟加速の原因 大島 正雄
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10.成熟加速の原因

 近年,小学校,中学校,高校生の身長,体重,胸囲は男女共にその増加は著しく,性機能もまたこれに伴なつて促進されてきました.すなわち女子においては初潮年齢の低下,男子においては声変り,夢精年齢の低下等の事実となつて現われております.これ等の現象を一まとめに成熟加速の現象と呼ばれていることは,前回にも触れた通りです.

 そして女性の経閉期もおそくなつて,大部分は50歳以後という状況となつております.月経の現われている期間の女性を「医学上の女性」とすれば,「女性の生命」は両端に延長されたと言つてよいことになります.

連載 妊産婦保健指導の実際・16

分娩時の指導 青木 康子
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 分娩時の指導を,今迄の続きとして,保健指導の実際という名目の中に,入れるかどうかについて,ずいぶん迷いながら,書き始めましたが,書いている中に,当然書くべきであつたと,自分の思慮の足りなかつたことに気がつきました.それは,私どもの仕事が,その目的を理想の人間あるいは社会をつくりあげることにもつ教育に,より直接的な面,つまり人間つくりの根本である.人間が生れ出づるのを助けるという,大へん重要な点で接しているということを,改めて痛感させられたからなのです.とかく分娩をたくさん扱えば扱う程,分娩そのものだけに目をむけ,機械的になり勝ちですが,上記のことを考えながら分娩を取扱う時,始めて,助産婦の使命の重要性や崇高さが納得されるのではないかと思います.従つて分娩時の指導も,よりよい人間,赤ん坊をこの世の中に送りだすための指導であり,今迄の妊婦指導も,この劇的な場面へもつてくるための,前奏曲であつたといつても過言でないと思います.ただこの場では,主役が分娩介助であり,指導は脇役に廻るわけですが,見せ場における脇役の重要さはくどくどと申す迄もないことと存じます.

 さて,私がまだ看護婦学生であつた頃「日本のように,分娩介助が上手に行なわれている所は少ない.

ニユース

日本助産婦会昭和37年度総会
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 5月28,29日の両日九段会館において開かれた日本助産婦会総会は全国から参加した2500名余りの助産婦を迎えて終日業界の発展のために熱心な討議が続けられた.この日は厚生省児童局母子衛生課長も参加して,母子衛生事業と地区助産婦の持つ問題点の解決のため今後のそれぞれの役割について話が進められたのは新しい会のあり方として興味深いものがあつた.

 討議され議決された事項の主なるものは,

 1.新生児訪問指導,受胎調節実地指導などの指導料の増額

 2.保健所勤務の助産婦を増員して,地区開業助産婦と保健所の連絡を緊密にする.

 3.勤務助産婦の待遇改善

 4.助産婦再教育費の補助要請

 5.助産院の許可定員数の増加

 6.准助産婦養成に対する反対,今後の助産婦教育制度の検討などである.

現代のカルテ

総裁公選の底にくすぶる暗躍
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 この雑誌が発行されるころは,参議院選挙が文字どおり最後の土壇場で,7月1日の投票日を目前に控えて,必死の追い込みである。したがつて政界の表面は,参議院選挙一本に絞られ,他の話題はそうたいした動きはみられないが,底に流れるものは,どうしてそんなナマやさしいものではない.それはむしろ参議院選挙のために手控えているから,かえつて内攻型となつて,ジメジメしたものとさえいえそうだ。だから参議院選挙が終れば一ぺんに表面化し相当の混乱を起こしかねない形勢である。

 それはいうまでもなく,参議院選後すぐ目の前に迫る自民党の総裁公選についてである.こんどの総裁公選は九分九厘まで,池田総裁の再選が常識になつているが,いま党内の底流にくすぶつている大きな問題は池田再選にしても,公選の方法に問題があるというのが,早くから論議されている。というのは,公選という名称はいかにも立派で,自由に自分の信ずる人格高潔の人物に投票する制度のようにみえるが,いままでのどの総裁公選を顧みても,買収や饗応によつて莫大な金が動き,公選という字が泣き出しそうなものばかりだつた.しかも,この公選は公職選挙ではないから,選挙違反で検挙される心配もなく,それだけにおよそ腐敗選挙の横綱といつてもさしつかえない腐敗ぶりである.

漫画

助産婦 梅代さん 佐野 瓢人

基本情報

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助産婦雑誌
16巻7号 (1962年7月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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