巻頭随想
乳幼児の義務栄養
栗山 重信
1,2
1東京大学
2国立東京第一病院
pp.9
発行日 1962年7月1日
Published Date 1962/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202362
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将来のわが国を担当する子供の育成にあたつては心身共に健やかにするために教育と保健とは鳥の両翼,車の両輪のごとく平行して推進されるべきである。わが国の子供の教育は明治の始めより義務教育制が行なわれ,その効果はきわめて立派にあがり,世界に誇るべき状態となつている.子供の保健の方は教育に比して著るしく立ち遅れた感があり,先進文明国に比して長い間耻しい思いをしてきた.近年著るしく改善されてきたとはいえ,教育の面に比しては相当遅れている状態である.乳幼児の保健は大体家庭にまかせ適当に行なわせて,学齢期になると国家社会が非常なる努力をし大きな費用を投じて熱心に運営する.学童の保健も学校保健,学校給食,学校安全といろいろ努力せられる.乳幼児期は教育も大切であるが,保健に対する対策がことさら大切である.
その中でも特に栄養が第一に大切な問題である.義務教育が津々浦々に行きわたると同様にすべての子供に必要なる食物は必ず摂り得るようにしなければならない.僻地,低所得層の家庭の子供には充分な栄養を摂り得ぬものが相当あると思われる.
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