看護研究 47巻5号 (2014年8月)

特集 知的財産としての看護研究─研究成果の特許化

『看護研究』編集室
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 看護研究が日進月歩の進歩を遂げる中,日々さまざまな研究成果が創出されています。そうした研究成果は,それぞれが貴重な財産です。看護研究におけるアイデアを「知的財産」とし,看護・医療に適用してその一層の高度化を図っていくことで,多くの患者のQOL向上や健康・福祉に大きく寄与するとともにさまざまな課題を解決し,同時に,研究のさらなる活性化が促進されるものと期待できます。看護研究の世界には,そうした財産がまだまだ数多く眠っているといえるかもしれません。

 では実際に研究成果を「知的財産」として残していくには,何が必要なのでしょうか。知的財産活動においては,企業等との連携,すなわち「産学連携活動」がきわめて重要です。近年になって,こうした活動が徐々にみられるようになってきています。

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はじめに

 わが国では,2014年度に看護系大学が226大学となった。大学院についてみてみると,1994年度の修士課程7大学,博士課程3大学に比べて2014年度は修士課程149大学,博士課程75大学となっており(文部科学省資料),ここ20年間の間に飛躍的に増加している。それに伴い,看護研究・教育・実践も日々発展している

 このように発展し続ける看護における諸活動の成果を,研究論文や書籍などにまとめて公表することはきわめて重要である。また,同時に可能であれば,そうした研究成果を特許などの知的財産として登録し,その知的財産を発明者の特権として守るとともに,広く国内外に発信していくことも今後一層望まれる。看護研究・教育・実践活動を行なう中で,早い段階から常に,研究成果の知的財産としての価値や保護を視野に入れておくことが重要であると考えられる。

 知的財産としての特許は,医学や工学等の分野では一般的によくみられる(医学:4641件,工学:2701件,それぞれ2004~2013年度の総計)が,看護学においてはこれからのテーマといえる。今後さらに多く出願・取得されることが期待される。

 そこで本稿では,看護研究の知的財産としての特許を中心に,看護分野における動向と特徴などについてみてみたい。

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はじめに

 わが国は少子高齢化社会の加速という社会問題を抱え,医療,介護,福祉の充実は喫緊の課題といえる。また,わが国の貿易赤字は拡大しており,その要因の1つは医療機器や医薬品の輸入超過にあるといわれている。国内には優れた技術力が存在するにもかかわらず,医療産業として成立せず,現場のニーズが活かされていないことが問題視されている。

 このような社会背景の中で,いくつかの大学の看護研究分野からは,看護・介護の高度化・快適化につながるアイデアが創出され,製品として産業と結びつき,国民・患者の健康や福祉に貢献する事例も出てきている。さらに,看護研究が果たす役割,すなわち産業に直結する貴重な臨床ニーズ,社会の課題を解決する高度な知見が存在していると考えられる。

 看護研究を通じた社会貢献活動を効率的に展開するためには,産学連携活動・知的財産活動が必須となる。そこで本稿では,大学における産学連携活動・知的財産活動の重要性を知っていただくために,現状や歴史的背景,産学連携活動を実施する上での留意点などを紹介していく。

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知的財産全般の紹介

 研究成果の1つとして発明があり,いままでにない発明をした者には特許権が与えられ,その発明が保護されます。そして,特許発明が有効に活用され,利益を生むことによって研究開発がより一層充実したものとなり,新たな研究成果の創出につながります。

 東京医科歯科大学(以下,本学)においても,発明をはじめとする「知的財産」を管理し,大学における研究活動の活性化を図っています。そこで最初に,知的財産全般について説明します。

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概要

 本稿では看護系研究の産学連携活動・知的財産活動(以下,産学連携活動等)の特殊性と,その特殊性を活かした産学連携活動等の成功事例を通じて,「研究成果をベースにした産学連携活動の進め方」「臨床ニーズに基づく身近なアイデアが産学連携活動等のシーズとなりうること」を紹介したい。

 大学などの医療機関に所属する看護師・看護系研究者(以下,看護系研究者)の研究成果や臨床ニーズを実用化するためには,企業との産学連携活動等が非常に重要である。本稿を通じて産学連携活動等の具体的イメージを得ていただき,研究成果やアイデアの発表のみではなく,企業との産学連携活動等による実用化をめざしていただきたい。

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災害看護グローバルリーダーの必要性

 災害の現場において,看護職は常にフロントラインに立ち,人々の支援を行なってきた(Wall & Keeling, 2010)。全世界には約1930万人の看護職がいる。もし看護職が,防災や災害看護の知識や技術を十分に身につけたら,社会の安全・安心にとって,計りしれない力になる(Minami, 2014)。日本看護協会は災害を,「自然災害や人災と呼ばれる,不測のときに,多くの人々の生命や健康が著しく脅かされる状況であり,地震や火災などによる一次的な被害だけでなく,二次的な生命・健康への脅威を含む」と定義しているが,いま,世界各地で繰り返し起こる自然災害,紛争やテロ,感染症の蔓延などによって,人々の生命や健康が脅かされている。特に近年,グローバルウォーミングなどの自然環境の変化,人口の高齢化や都市への人口流入などの社会の変化も影響し,災害は多様化,長期化,グローバル化し,人々の生命・生活にますます深刻な影響を及ぼしている。

 災害サイクルは,急性期(発災直後~48時間),亜急性期(~1か月),中長期(~数か月~数年),静穏期に分けられているが,健康問題と療養生活支援に専門性をもつ看護職は,そのような災害サイクルすべてにわたり,人々の健康と生活を支えてきた。被災地において,自分が被災しているにもかかわらず,患者や被災者のケアに全力を尽くす看護職,被災地に駆けつけボランティア活動を展開する看護職など,災害時の救助や支援活動を担った看護職は数えきれない。

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 人を対象とする医学系研究における被験者保護に向けた専門職規範の確立が世界的に進められてきた。看護界では,1968年に米国看護師協会(ANA)が世界で最初となる看護学研究に関する倫理指針を策定した。本研究は,ANAによる米国での看護学研究に関する倫理指針の形成・発展経緯と,その背後にある米国での研究規制を巡る社会政策的要因について歴史的分析を行なうものである。本研究の分析から以下のことが明らかとなった。(1)ANAの1968年指針は,1950~60年代にかけて米国社会を揺るがした臨床研究での被験者保護をめぐる諸事件を端緒とする,国立衛生研究所や公衆衛生局レベルでの大きな政策転換の影響を強く受けて策定された,(2)1975年指針では,タスキギー梅毒研究事件等の発覚と米国社会での公民権運動の流れの中で,特に人権保障に焦点が当てられた,(3)1995年のSilva指針は,全米委員会によるBelmont Reportで示された研究倫理の基本的枠組みを採用するとともに,1980年代に相次いで明るみに出た研究不正事件に対する連邦政府による研究規制の強化並びに学術界による自主規制の高まりを受けて,その基本的な研究倫理の骨格が形成された。

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 研究費の獲得や研究対象者を集めるといった看護研究を行なう環境は,社会状況の変化に大きな影響を受けている。インターネットは近年さまざまな分野でその利活用が注目されており,インターネット調査はデータ収集方法の1つとして,看護学や保健研究領域の研究でもますます利用されるようになってきている。そこで本稿は,医中誌Web上でインターネット調査を利用した過去の看護学分野の研究論文を参考にしながら,現時点でのインターネット研究の利点と欠点について考察してみることとする。

連載 統計学のキー・ポイント─「検定」に焦点を当てて・4

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はじめに

 「心疾患患者での喫煙者の割合は,健常者の3倍である」「消費税を10%にすることに賛成なのは,5%の国民だけである」「内閣支持率は60%である」などと,日常生活において「割合proportion」についての話題には事欠かないでしょう。現実には,ある特性に関する割合なのに,「比率」や「有病率」「喫煙率」などの用語も使われるため,割合を示すための用語の使用に関しては混乱があります。

 「割合」とは,「全体に対するある部分の占める大きさ」であり,通常は「パーセント」を使って示されます。一方,「率rate」は「死亡率」のように,ある人口数で一定時間での発生数を示すための用語です。例えば,胃がんの死亡率は「50人/10万人年」のように表わし,1年間で10万人あたり50人である,ということを示します。したがって,死亡率は分子と分母の「人」を約分すると,単位が「1/年」のようになり,これは一種の「速さ」を表わす指標になります。

 「比ratio」は,分子と分母に適当な2つの数値を入れて計算したものであり,極めて一般的な分数を表わすものです。分子と分母が同じ単位であるのが一般的ですが,そうでなくても構いません。例えば,心疾患患者の喫煙者が50%で,健常者の喫煙者が20%ならば,喫煙の心疾患のオッズ比は,50×80/(20×50)=4と無名数で求められます。一方,身長が182 cmで体重が75 kgの人のBMIは,75/1.822=22.6(kg/m2)となります。

 割合は,分子と分母の単位が同じなので無名数です。現在では,割合のことを「比率」と呼ぶ場合も多いのですが,比率を英語に直訳すると“ratio rate”になりますが,もちろんこんな呼び方はありません。統計学でも母集団での割合を「母比率」と呼ぶ習慣ですが,本稿では意味が明確で誤解のない「母割合」と呼ぶことにします。

連載 Words, words, words.─研究にまつわる知識と技法・words 16

批判的な態度Being Critical 江藤 裕之
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 今年に入って,読書,コミュニケーション,対話について,先人から学びつつ,思うところを述べてきた。いずれも,身近なものであるだけに簡単なことのように思えるが,実はなかなかそうでもない。本を読み情報やアイディアを収集し,仲間とそういった情報や意見を交換し共有する,そして,そこで得た知識をもとに何かのテーマについて語り合う。こういったことに必要な技能はとても重要であり,いまを生きる私たちにとって,しっかりと身につけたい技術である。

 研究や思索のために,いろいろな新しい知識を得て,そこから何かを学んでいくには,いつもアンテナを立てて,周囲の情報に敏感でなくてはならない。しかし,入ってくる知識や情報をすべてうのみにして,何でもそのままに受け入れることは考えものである。正しい情報なのか,意味のある情報なのか,そういったことを判断しながら情報を選んでいかなくてはならない。そのためには,私たちは日頃からどういう態度で情報や知識に接する必要があるのか。今回はそのことについて考えてみたい。

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看護研究
47巻5号 (2014年8月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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