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はじめに
清拭は,その病状や運動制限などのために入浴やシャワー浴ができない対象者に対して実施する清潔保持の方法であり,同時に,入浴と同様の身体への生理的効果も期待されている援助技術である(松田,1995)。しかしながら,従来の清拭法では石けん分の除去を拭き取り法によって行なっているため,石けん分の拭き残しによる皮膚トラブルやそれによる不快感などが考えられる。また,ベッド上安静が必要な対象者に対して従来の清拭方法については,皮膚に残る水分量や清拭による局所的な皮膚温の変化または循環器系への影響を中心に検討がなされている(遠藤ら,1999;入來,1987;三尾ら,1997;中村ら,2000)。一方で,成人の対象者の多くは健康時,入浴やシャワー浴により清潔を保っている。また,入浴は全身を温湯に浸すことで生じる温熱,水圧,浮力の作用によって皮膚を清潔にし,血液の循環や新陳代謝を促進させ,同時に心身の疲労や緊張を除くなどの効果をもたらす。そして,これら各種の生理的影響が複合され爽快感を得るとされている(川島,1989;松田,1995;植田,1982)。このことから,入浴が制限され清拭によって清潔を保っている対象者に対しても,入浴の効果と同様な効果が可能な限り得られるような清拭技術を考えることが必要である。しかし,入浴の効果と同様な効果を得られるような新たなる清潔保持の工夫などに関する報告はこれまで認められない。そこで今回,入浴が各種の生理的効果をもたらすもととなる全身を温湯に浸すということに着目し,ベッド上でも直接皮膚に湯をかけることで,石けん分の洗浄効果が拭き取り法よりも上がるとともに入浴に近い効果が得られると考え実施した。効果については,皮膚温・血圧・心拍数などから身体的効果を,爽快感などの主観的データから精神的効果を評価し,ベッド上で安静が必要とされる患者へ安全に,そして安楽に実施が可能であるかを検討した。
The purpose of this study was to examine the effect of the bed bath as a skin cleansing method. Eight healthy females were included in the study. Physiological function, skin temperature, skin pH value, amount of skin sebum, and self assessment data before and after cleansing were compared. The surface and deep temperatures of the thumb and great toe demonstrated changes following the bed bath cleansing procedure. Post-bed bath temperatures were significantly higher than pre-bed bath temperatures. The duration of the bed bath was approximately 30 minutes and no complaints of cold sensation were reported. The bed bath cleansing method prevented incremental increases of skin pH, and the reduction of sebum ranged from 29.9 % to 67.6 %. However, immediately after beginning the bed bath, increased activity of the parasympathetic system was observed. Following the procedure, parasympathetic activity had increased by a factor of 2.33. These results suggest that bed bath cleansing is an effective and useful method in clinical care.
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