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はじめに
「心疾患患者での喫煙者の割合は,健常者の3倍である」「消費税を10%にすることに賛成なのは,5%の国民だけである」「内閣支持率は60%である」などと,日常生活において「割合proportion」についての話題には事欠かないでしょう。現実には,ある特性に関する割合なのに,「比率」や「有病率」「喫煙率」などの用語も使われるため,割合を示すための用語の使用に関しては混乱があります。
「割合」とは,「全体に対するある部分の占める大きさ」であり,通常は「パーセント」を使って示されます。一方,「率rate」は「死亡率」のように,ある人口数で一定時間での発生数を示すための用語です。例えば,胃がんの死亡率は「50人/10万人年」のように表わし,1年間で10万人あたり50人である,ということを示します。したがって,死亡率は分子と分母の「人」を約分すると,単位が「1/年」のようになり,これは一種の「速さ」を表わす指標になります。
「比ratio」は,分子と分母に適当な2つの数値を入れて計算したものであり,極めて一般的な分数を表わすものです。分子と分母が同じ単位であるのが一般的ですが,そうでなくても構いません。例えば,心疾患患者の喫煙者が50%で,健常者の喫煙者が20%ならば,喫煙の心疾患のオッズ比は,50×80/(20×50)=4と無名数で求められます。一方,身長が182cmで体重が75kgの人のBMIは,75/1.822=22.6(kg/m2)となります。
割合は,分子と分母の単位が同じなので無名数です。現在では,割合のことを「比率」と呼ぶ場合も多いのですが,比率を英語に直訳すると“ratio rate”になりますが,もちろんこんな呼び方はありません。統計学でも母集団での割合を「母比率」と呼ぶ習慣ですが,本稿では意味が明確で誤解のない「母割合」と呼ぶことにします。
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