特集 DNP(Doctor of Nursing Practice)が未来を切り拓く—「研究」と「実践」をつなぐ高度実践看護師の新たなチャレンジ
DNPでの学びを活かした新たな展開と未来
プロジェクトの進化と普及—新たに見えてきた課題—「国産DNP第1号」として新生児医療の人材育成に挑み続けて
井出 由美
1,2
1昭和医科大学大学院保健医療学研究科臨床ケア開発学領域
2昭和医科大学病院総合周産期母子医療センター新生児部門
pp.290-297
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580030290
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DNPコース進学の背景と動機
筆者は,2010年に専門看護師(以下,CNS)の認定を取得し,今年,3回目の更新を迎える小児看護CNSである。2012年より所属施設での臨床教員制度により,大学教員(講師)と臨床看護師(係長)を兼務している。
CNSを取得後,管理者からの「組織に貢献する活動をしてほしい」という期待を受け,レジェンドの先輩たちのような“CNSらしい”活動を目指した。主にNICUとその近接領域,小児病棟で実践し,退院支援の充実・促進や倫理に関する現任教育などに取り組んだ。しかし,1回目の更新を終えても,管理者からは「何をしているかわからない」「成果が見えない」という辛辣な評価を受けた。大きな組織の中の限られた専門分野での実践は,CNS自身が成果と捉えた長期入院患者の退院促進や地域との連携強化などは,管理者にはなかなか伝わらず,理解を得ることは困難であった。CNSの更新はできても,患者・家族に役立っているか,高度実践ができているのか,自身の取り組みは高度実践といえるか,実践の内容や成果が周囲に伝わっているか,組織に貢献できているかなど,自問する中で自身の実践能力に疑念を抱いた。高度実践看護師としての自分を振り返り,分析力や説明力,交渉力,リーダーシップなどの課題に気づき,CNSを続けると,博士課程で教育を受けたいと思うようになる(萱間,2017)ことを実感し,DNPコースへの進学を決意した。

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