臨床皮膚科 67巻8号 (2013年7月)

連載 Clinical Exercise・71

Q考えられる疾患は何か? 平野 貴士
  • 文献概要を表示

症例

患 者:78歳,男性

主 訴:体幹,四肢の網状皮斑,下腿潰瘍

家族歴:特記すべきことなし.

既往歴:糖尿病(73歳),心房細動(76歳)

現病歴:初診の約1年前より両足関節に皮疹が出現し徐々に拡大した.1か月前より右下腿に皮膚潰瘍が出現してきた.

現 症:腰背部および四肢に広範囲に環の閉じた網状皮斑があり,一部には紫斑を判っていた(図1a,c).右下腿屈側に大豆大,右外果に小豆大の潰瘍を認めた(図1b).

  • 文献概要を表示

要約 44歳,男性.交通事故後右半身の神経障害があり,随伴する右半身の疼痛に対してプレガバリン75mg/日を内服していた.投与1か月後より顔面に紅斑および眼瞼の浮腫が出現してきたため,当科を紹介され受診した.受診時,両眼瞼に浮腫,紅斑があり,右眉上方,右眼瞼,両頰部に浸潤の強い紅色局面を認めた.また,血液検査にてALT 44IU/lと軽度の肝機能異常を認めていた.経過から薬疹および薬剤性の肝機能異常を疑いプレガバリン内服を中止したところ,中止10日後には皮疹は軽快し,肝機能異常も基準値内となった.皮膚生検では軽度の液状変性,血管周囲を中心としたリンパ球,好酸球の浸潤を認め,薬疹に矛盾しない所見であった.パッチテストは陰性であったが,DLST(drug-induced lymphocyte stimulation test)において陽性(p=0.0360,S.I.=3.71)であったことと,経過からプレガバリンによる薬疹が疑われた.本剤による薬疹はこれまで報告がなく稀な例であるが,今後使用頻度の増加とともに薬疹の出現にも注意する必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:65歳,女性.ルリコンクリーム®(ルリコナゾール)外用約16か月後に外用部位に浸潤性紅斑を認め,アスタットクリーム®(ラノコナゾール)に変更したが,数日以内に掻痒が出現した.症例2:62歳,男性.アスタット軟膏®外用約1週後に外用部位の腫脹が出現した.ルリコンクリーム®に変更後,数日間で角化性紅斑が出現した.再度アスタット軟膏®に変更したがすぐに発赤が出現した.症例1,2ともにas isパッチテストで両薬剤が陽性であり,経過も併せてこれら2剤間で交差反応を示した接触皮膚炎と診断した.両者は非常に構造が類似している.他のアゾール系の薬剤とは交差反応を示さなかったため,抗原決定基はイミダゾール環を除く共通構造にあると推測した.

  • 文献概要を表示

要約 26歳,女性.初診の前日に近医産婦人科にてクロラムフェニコール腟錠を挿入された.同日夜間より手背に掻痒を伴う紅斑が出現し,四肢,軀幹に拡大.翌日近医皮膚科を受診し精査のため当科を紹介され受診した.血液,生化学的検査では白血球とCRPの軽度上昇を認めた.また病理組織学的に表皮の肥厚と,真皮浅層の血管周囲性の炎症細胞浸潤を認めた.パッチテストにてクロラムフェニコール腟錠が陽性であったため,クロラムフェニコール腟錠によるsystemic contact dermatitisと診断した.クロラムフェニコール腟錠は汎用されているものの,患者自身が使用されたと認識していない場合が多く,十分な問診が必要である.

  • 文献概要を表示

要約 57歳,男性.2011年1月に食道癌に対し,食道亜全摘術+胃管再建術を施行された.同年6月より,食後に蕁麻疹が出現するようになった.血液検査にて小麦,グルテン,およびω-5グリアジン特異的IgE抗体価の上昇を認め,小麦アレルギーと考えられた.負荷試験の結果から小麦依存性サリチル酸誘発性蕁麻疹と診断した.食物抗原に対する防御機構において消化管が果たす役割は大きく,食道癌手術が本症発症の契機となった可能性が考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 36歳,女性.初診の3か月前より右側腹部に鱗屑を伴う環状の紅斑が出現した.皮疹はいったんステロイド外用剤にて消退したが1年後に同部位の環状紅斑が再燃し,四肢に拡大した.病理組織学的には角層内好中球性膿瘍,顆粒層の消失,表皮突起の肥厚など乾癬様の所見を示したことから自験例を再発性環状紅斑様乾癬と診断した.診断後ステロイド外用剤,活性型ビタミンD3外用剤およびジアフェニルスルホン(DDS)50mg/日内服にて加療中であるが皮疹は出没を繰り返している.本疾患では個々の環状紅斑が数日から数週間で消退するが年余にわたって出没を繰り返す.治療に抵抗性する症例が多く自験例においても長期の経過観察が必要と考えられる.

  • 文献概要を表示

要約 81歳,女性.無治療の糖尿病あり.1年前に仙骨部の褥瘡が生じたが放置していた.初診時,仙骨部に4×3cm大の黒色壊死を伴う潰瘍を認めた.血液検査上WBC 28,500/μl,CRP 24.1mg/dl,CT上仙骨部から背部まで筋膜に沿ったガス像,脂肪隔壁の肥厚を認めた.患部からStreptococcus agalactiaeや嫌気性菌,腸内細菌が検出された.デブリードマンを行い,抗生剤投与と計4度の分層植皮術を施行し上皮化を図った.糖尿病を合併する壊死性筋膜炎は重症化する場合が多く,早期の診断と治療が必要である.自験例では短時間で広範囲の撮影が可能でガス像の有無も確認できるCT検査が有用であった.発症機序として糖尿病による局所循環不全や局所酸素分圧の低下により嫌気性菌感染を伴ったと考えた.また,腸内細菌が糖を分解することでガス産生を伴う壊死性筋膜炎を起こした可能性を考えた.

  • 文献概要を表示

要約 2009年10月~2011年5月に当施設で経験した紫斑を伴う蜂窩織炎の6症例につき臨床的に検討し,このうち生検を施行しえたのは2例であった.症例1:68歳,男性.38℃の発熱と右下腿の発赤,腫脹があった.症例2:62歳,男性.37℃の発熱と左下腿の淡い発赤,腫脹がみられた.2例ともに病変上に粟粒大から半米粒大までの点状出血が密に認められた.病理組織学的には真皮で血管周囲性の好中球浸潤,核塵および血管壁の破壊の所見がみられた.6例全例で経時的に抗ストレプトリジンO(ASO),抗ストレプトキナーゼを測定し,6例中5例で基準値を超える異常高値(ASO最大値:353~973IU/ml),または有意な変動を認め,溶連菌が原因菌であると考えられた.病変上の紫斑は溶連菌性蜂窩織炎の臨床的特徴と考えられ,機序として溶連菌が産生する菌体外毒素によって血管内皮細胞が傷害される可能性が考えられた.

  • 文献概要を表示

本論文は抹消されました。

  • 文献概要を表示

要約 27歳,男性.左側上顎歯欠損の既往あり.13歳頃より,左頰部の陥凹と色素沈着を自覚し,徐々に多毛を生じた.近医を受診したが,明らかな原因はわからず,精査加療目的で当院を初診した.皮膚生検組織像ではbasal melanosisと立毛筋の増生,脂肪織の萎縮・変性を認めた.CTでは左上顎骨の骨低形成を認め,Becker母斑症候群と診断した.本症はBecker母斑と同部位ならびに周辺の皮膚・骨・筋の欠損や形成異常を合併する症候群で,体幹に好発する.顔面に生じたBecker母斑症候群の報告は海外で3例報告があるのみで,本邦での報告は初めてである.小児期に大きなBecker母斑を診た際には本症を考慮した経過観察が必要であると考えた.

  • 文献概要を表示

要約 46歳,女性.半年前に気管支喘息を発症した.2週間前より視力障害が出現し,虚血性視神経症と診断された.四肢のしびれと下肢に浸潤を触れる紫斑を認め,生検病理組織像で真皮小血管の血管壁破壊像と周囲の好酸球浸潤,赤血球の血管外漏出を認めた.蛍光抗体直接法で真皮内の血管壁にIgMとC3の沈着を認めた.血液検査で好酸球の増加とMPO-ANCA陽性を認め,胸部CTで両側肺野に斑状影の散在を認めた.Churg-Strauss症候群と診断し,プレドニゾロン内服とシクロホスファミドパルス療法を施行したが,神経障害は進行し,免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法を行い,改善した.Churg-Strauss症候群に合併する虚血性視神経症は,ステロイドや免疫抑制剤による治療に抵抗することが多いが,自験例では従来の治療に加えて早期に免疫グロブリン大量療法(IVIG)を併用し,視力障害は改善した.今後同様の症例に対しても早期IVIG投与を考慮するべきであると考えられる.

  • 文献概要を表示

要約 67歳,女性.7年前より気管支喘息にて加療していた.数日前から発熱があり,呼吸苦の出現とともに両下腿の紫斑としびれが出現し,急速に拡大した.受診時,両下腿に浸潤を触れる紫斑を認め一部は癒合し血疱の形成も認めた.両下腿にしびれと疼痛を伴い,足関節の背屈は不能で歩行困難であった.血液検査では好酸球増多,MPO-ANCA陽性,IgEの増加,尿蛋白および尿潜血が陽性だった.臨床症状と検査所見からChurg-Strauss症候群(Churg-Strauss syndrome:CSS)と診断した.病理組織像は白血球破砕性血管炎の所見を示した.ステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量静注療法で紫斑と神経症状は改善したが,好酸球,MPO-ANCAは再上昇し,尿蛋白も陽性で,シクロホスファミドパルスを施行し,改善した.MPO-ANCA陽性のCSSでは白血球破砕性血管炎を示す傾向が強く,早期よりステロイド治療を要し,抵抗性の場合はシクロホスファミドなどの免疫抑制剤が必要となることを示唆する症例と考えた.

  • 文献概要を表示

要約 28歳,女性.喘息,アトピー性皮膚炎の既往あり.両側下肢の著明な浮腫と屈曲時の手関節・膝関節痛につき当科受診した.両膝内側・下腿に掻痒性紅斑を伴っていた.血液検査でWBC 12,200/μl(Eos 21%),IgE 399IU/mlであった.膝の紅斑の病理組織像では真皮浅層から皮下脂肪織にかけて血管・付属器周囲および間質に密な好酸球浸潤がみられた.血管炎は認めなかったが,真皮中層以下で好酸球性肉芽腫が著明であった.初診6日後に足の痺れが出現し,神経伝導検査で多発単神経炎が確認され,Churg-Strauss症候群(Churg-Strauss syndrome:CSS)と診断した.メチルプレドニゾロン500mgの点滴を3日間行ったところ皮疹・神経症状は改善し,プレドニゾロン40mg/日内服へ減量および5mg/日まで漸減後も再燃はない.若い女性の下腿浮腫であり,病理組織像で好酸球浸潤があるも血管炎は認めず,angioedema associated with eosinophilia(AE)との鑑別が重要であった.AEを考える症例ではCSSも鑑別に挙げて精査することが必要である.

  • 文献概要を表示

本論文は抹消されました。

  • 文献概要を表示

要約 24歳,男性.12歳より背部の灰褐色斑を自覚し,徐々に四肢伸側へ拡大した.合併または先行する皮疹,紫外線照射,アトピー素因はない.初診時,両鼻翼に小褐色斑があり,背部から腰部では淡褐色から灰褐色の色素斑を認め,特に両肩甲骨外側と正中に強く分布し,一部融合して網状を呈していた.四肢伸側では毛孔一致性に小褐色斑がみられ,手背,足背に及んでいた.病理組織学的に真皮浅層および毛包周囲に紡錘形のメラノサイトを認め,後天性真皮メラノサイトーシスと診断した.本疾患は顔面の皮疹の分布に特徴があるが,本邦報告例の集計から,男性例では鼻翼の皮疹に加え,肩甲骨外側と背部正中の褐色斑も本疾患を疑うべき特徴的分布の1つであると考えた.

  • 文献概要を表示

要約 4歳,男児.1歳検診で,右腋窩の丘疹を指摘され経過観察していた.次第に増加し,陰部・肛門周囲にも同様の丘疹を生じてきたため,当科を紹介受診した.右腋窩,会陰部に表面平滑な褐色丘疹が散在していた.腋窩からの生検病理組織像は尖圭コンジローマに合致し,polymerase chain reaction(PCR)ではヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)6型が検出された.5%イミキモドクリームおよび液体窒素凍結療法で加療し大部分は脱落したが,肩,胸部,膝窩などに小丘疹の再発を認めた.難治性であったが,初診より1年余りでほぼ略治の状態となった.近年,小児に生じた尖圭コンジローマの報告が増えているが,外陰部以外に皮疹を生じる症例は稀である.小児例では,背景因子,感染経路,治療方法などを考慮する必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 外鼻下半分は,皮膚,支持組織の軟骨と裏打ちの粘膜とから構成され,複雑な形状をしている.その再建法には局所あるいは遠隔皮弁,遊離皮弁,composite graft(複合組織移植)などさまざまな方法があるが,今回,2001年4月~2010年6月に行った鼻再建の中で耳介部をドナーとしたcomposite graftを行った12症例を検討した.再建例の2/3は男性であり,原疾患は基底細胞癌が最多であり,部位は鼻翼が最多であった.移植片の長径は平均20.4cm,幅平均15.3mmであり,移植後は3例に部分壊死があり,他は全生着した.患者の満足度はほとんどの例が満足であった.耳介部をドナーとしたcomposite graftによる鼻再建は,外鼻下半分の形態に非常に適合し,手技が簡便で,有用な再建法と思われた.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 2003年,英国で円形脱毛症(alopecia areata:AA)に対するガイドラインが提唱された.その後に報告された新しい知見をもとにして,2012年,British Association of Dermatologists’(BAD)が改訂版のガイドラインを発表した.今回はこの新しいガイドラインを紹介する.日本皮膚科学会のガイドラインとの大きな差異は,英国ではステロイド全身投与,PUVAは推奨されず,小児,成人のアルゴリズムが同一であることである.

 AAは毛包を主座とした可逆性の慢性炎症性疾患である.1年以内にAAの34~50%,特に脱毛斑の少ないAAの80%が自然経過で改善するが再発はほぼ必発である.14~25%は全頭脱毛(alopecia totalis:AT),全身性脱毛(alopecia universalis:AU)に移行し,その寛解率は10%未満である.AAでは自然経過も期待できるため副作用の強い治療は推奨されないが,精神的,社会的影響なども考慮し,有効な治療法としてステロイド外用,ステロイド局注,局所免疫療法が挙げられた.

次号予告

投稿規定

あとがき 中川 秀己
  • 文献概要を表示

 何の因果か「リサーチマインドを持った総合診療医の養成事業」の公募を検討するようにと委員長に指名されました.飲みすぎないように仕事を与えようとする学長,病院長の善意の親心とあきらめ,すぐにワーキンググループ(WG)を組織し,夕方の大切なおいしい御酒を飲めるはずの時間を使って検討を加え,ようやく申請書がほぼ完成するまでにこぎつけることができました.総合診療医の話は2~3年前に代理で日本専門医制度評価認定機構の会議に出たときに聞いてはいましたが,反対意見も多かったし,提示されていた総合診療医の定義が全く理解できませんでした.その定義とは「頻度の高い疾病と傷害,それらの予防,保健と福祉など,健康に関わる幅広い問題について,わが国の医療体制のなかで,適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供できる医師」とのことです(なんのこっちゃ?).国策としてわが国の医療水準の維持向上,大学の地域医療・社会への貢献による医療不安等の解消が挙げられていることはご存じのこととは思いますが,WGで検討を重ねるうちに,これからの超高齢化社会をにらんで,国家戦略として高齢者を主な対象として在宅医療を含む地域完結型の医療を構築し,将来の医療費抑制という狙いが見えてきたように思います.これをそれらしく記述すると「総合診療専門医は,他の領域別専門医や他職種と連携して,地域の医療,介護,保健などのさまざまな分野において,リーダーシップを発揮しつつ,多様な医療サービス(在宅医療,緩和ケア,高齢者ケアなど)を包括的かつ柔軟に提供するとともに,地域における予防医療・健康増進活動などを行うことにより,地域全体の健康向上に貢献することが期待される」となるのです.

 2017年から新しく始まる専門医制度では従来の18基盤学会の専門医に加え,総合診療専門医も基盤専門医に加わる予定になっています.そうなると大学としては総合診療専門医取得コースを作らざるを得なくなるのも間違いないと思います.そのなかで皮膚科診療はどうなるのか見えてこない点も多々ありますが,仕事もほぼ終わったことですし,久しぶりに今日は帰りに鰻で一杯やることができそうです.

著作財産権譲渡同意書

基本情報

00214973.67.8.jpg
臨床皮膚科
67巻8号 (2013年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月29日~7月5日
)