臨床皮膚科 63巻9号 (2009年8月)

連載 Clinical Exercise・24

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症例

患 者:24歳,男性

主 訴:四肢の皮疹

既往歴:1年前に糖尿病を指摘されるも未治療.

家族歴:父に痛風.

現病歴:2週間前より軽度掻痒を伴う皮疹が四肢に多発してきた.同時に発熱も出現.

現 症:身長173cm,体重83kgと肥満.背部,四肢,特に肘,膝付近に小丘疹が多発,集簇している.個疹は米粒大までの淡紅色小丘疹で,頂点は黄色調のものが多い.

今月の症例

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要約 9か月,女児.生後4か月時にBCG接種を受けた.その約3か月後,左鎖骨下部に淡紅色の小結節が出現した.リンパ節腫脹は認めなかった.生検組織では乾酪壊死を伴う肉芽腫像を認めたが,Ziehl-Neelsen染色では抗酸菌陰性であった.組織片のPCRは抗酸菌陰性であったが,抗酸菌培養でコロニーの形成を認めた.クォンティフェロン抗体検査は陰性であり,臨床経過とあわせBCG接種による皮膚腺病と診断した.イソニアジドの内服により,約1か月で腫瘤の縮小を認めた.

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要約 52歳,男性.検診で糖尿病を指摘されたが放置していた.背部に外傷後の発赤,腫脹が出現し,広範囲に筋層に及ぶ膿瘍,壊死を認めた.切開・排膿を行ったが,巨大なポケットを伴う潰瘍を形成した.ポケットを有する潰瘍は,外用治療単独では治癒前に内部が上皮化することが多く,難治な創となりやすい.しかし,ポケット自体のデブリドマンを行うと,外観が広範囲にわたって損なわれる可能性がある.陰圧閉鎖療法は,ポケットを有する創に対して陰圧による創面同士の固定を利用し,非侵襲的にポケットを閉鎖させることが可能であり,整容面でも有用性が高いと考えた.

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要約 64歳,女性.発熱,嘔気,多発関節痛とともに,四肢に限局する皮疹を主訴に,当科を受診した.当科受診約2週間前に,自宅で手指を鼠に咬まれていたことが判明した.臨床症状,経過より鼠咬症と診断し,ペントシリン®の投与を開始したところ,発熱,皮疹は速やかに軽快した.臨床症状,経過より,鼠咬症と診断に至った.近年,ペット目的で,齧歯類動物を多く輸入している.鼠咬傷のみならず,今後,各種動物によるさまざまな人畜共通感染症の発生や増加が予想され,発熱などの全身症状を伴う皮疹を診た際は,動物咬傷も鑑別診断に挙げ,ペットの飼育歴や動物咬傷の既往を含めた問診が重要である.

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要約 67歳,男性.2005年頃心臓弁膜症を指摘されていた.2008年2~5月にかけて歯科治療を受けた.7月より39℃前後の発熱が出現した.心雑音あり,心エコーで大動脈弁に疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断された.入院し,ペニシリンG大量投与を開始され,大動脈弁置換術を施行された.入院18日目に両下腿に紫斑が出現し,皮膚生検でleukocytoclastic vasculitisの所見であり,アナフィラクトイド紫斑と診断した.同時期の心エコーでは明らかな疣贅を認めなかった.感染性心内膜炎でみられる紫斑としてはJaneway斑などが知られているが,自験例は病理組織所見より,微小血栓に基づく紫斑ではなく,アナフィラクトイド紫斑を合併したものと考えた.

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要約 68歳,男性.2006年12月頃より上肢,体幹に紅斑出現.次第に掻痒の強い水疱が出現し全身へ拡大したため,近医受診.天疱瘡を疑われ,2007年1月9日当院紹介受診となった.初診時全身に紅斑,びらん,弛緩性水疱が認められた.粘膜病変は認められなかった.ELISA法で抗デスモグレイン(Dsg)1抗体,抗Dsg3抗体ともに陽性であった.免疫ブロット法で抗BP230抗体も陽性であった.組織標本では表皮に海綿状態が認められ,好酸球,リンパ球を主体とする表皮内細胞浸潤が認められた.表皮内の裂隙には滲出液の貯留を認めた.以上より,疱疹状天疱瘡と診断した.治療はミノサイクリン,抗アレルギー薬,ニコチン酸アミド,ミゾリビン,副腎皮質ステロイド内服に反応せず難治であったが,二重濾過血漿交換療法の併用により軽快した.

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要約 59歳,女性.無治療のC型肝炎による肝硬変,自己免疫性肝炎疑いにて,内科精査中であった.約1年半前より,両上腕に萎縮性紅斑が出現.徐々に体幹,四肢に拡大した.初診時,体幹,四肢に萎縮性紅斑,腹部に白色隆起局面,陰部に白色局面を認め,軽度の掻痒を伴っていた.上腕,腹部より皮膚生検を施行し,硬化性萎縮性苔癬(LSA)と診断した.現在,ステロイド外用にて経過観察中である.自験例ではLSAの発生部位としては非常に稀な四肢・体幹に生じたこと,また,扁平苔癬との関連が指摘されるC型肝炎が合併していたことより,LSAも扁平苔癬と類似の病態,発生機序を有する疾患である可能性が示唆された.

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要約 55歳,女性.5年前より右耳前部に,さらに2年前より左前額部に淡紅色弾性やや軟,おのおの13mm,8mmのなだらかに隆起する結節が出現した.ともに組織学的に,真皮内に硝子化した線維性隔壁で区切られる大小不同の胞巣をジグソーパズル様に認め,円柱腫と診断した.また,鼻周囲には思春期より米粒大の常色小丘疹が多発,初診時はレーザーによる治療のため瘢痕に混じて丘疹が数個残存するのみであったが,生検で毛包上皮腫と診断した.母親に同症あり.多発性円柱腫と多発性毛包上皮腫の合併はBrooke-Spiegler症候群と呼ばれ,常染色体優性遺伝を示し,本邦では稀である.自験例の円柱腫の電顕的観察により,本腫瘍のエクリン汗腺への分化が示唆された.

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要約 76歳,男性.15年ほど前に気付いた左第3指背の結節が増大した.初診時,左第3指背に自覚症状のない径9×8mm大,常色,ドーム状に隆起したやや弾性硬の皮内結節を認めた.超音波所見では結節はlow echoic lesionで,内部エコーは不均一であった.病理組織学所見では,線維性の被膜に包まれた充実性で周囲との境界は明瞭な結節で,結節内部は大小さまざまな毛細血管と不規則に交錯する線維束から構成されていた.線維束はelastica van Gieson染色で黄染,アザン染色では赤染した.また,免疫組織化学染色ではα-SMA染色,デスミン染色で腫瘍細胞が陽性,第Ⅷ因子関連抗原染色では管腔壁のみが陽性であった.以上より,血管平滑筋腫と診断した.血管平滑筋腫は中高年女性の下肢に好発する有痛性腫瘍であるが,手指に発生したものは男性に多く,痛みが少ないといわれている.

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要約 78歳,男性.当科初診の約1か月前に右鼠径リンパ節腫脹を認め,同部位の生検でMerkel細胞癌と診断された.初診時,右鼠径部と右下腹部の外腸骨動脈周囲と思われる部位に手拳大の皮下腫瘤を触知した.血中NSE54.84ng/mlと高値.各種検査で原発巣は特定できなかった.右鼠径,右外腸骨動脈周囲,右総腸骨リンパ周囲および右閉鎖リンパ節摘出術を施行したところ,病理像はリンパ節生検と同様の組織像であった.以上の経過から,原発巣が自然消褪しリンパ節転移として明らかになったMerkel細胞癌あるいはリンパ節原発Merkel細胞癌の可能性を推測した.本症例は,外科的切除のみで術後2年4か月経過するが再発はない.

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要約 92歳,男性.初診時,右顔面耳介前方に径1cm大の紅褐色角化性局面を認めた.病理組織所見では,表皮全層性に大型で胞体が明るい異型細胞胞巣が散在しており,真皮には日光弾力線維症を伴っていた.異型細胞はperiodic acid Schiff染色陽性で,これはジアスターゼで消化された.免疫組織染色では,AE1/AE3,34βE12,CK7が陽性,S100,HMB-45,CEA,EMA,CAM5.2,CK20が陰性であった.pagetoid bowenoid actinic keratosisと診断した.

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要約 86歳,男性.放射線治療歴はない.初診の2年前に右腋窩の黒褐色局面に気付いた.初診時右腋窩に15×7mm大の不整形黒褐色局面があり,全切除した.病理組織所見にて腫瘍細胞は基底細胞様であり,辺縁では柵状に配列しており,基底細胞癌と診断した.基底細胞癌は高齢者の顔面に多く発生する悪性腫瘍であり,腋窩に発生した例は,本邦では過去10年間に23例の報告があるのみである.

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要約 58歳,女性.2005 年10 月より左大腿内側に皮下硬結を自覚し,2006年2月に近医で摘出された.病理組織学的に淡明細胞肉腫と診断され,同年3月当院を紹介受診された.初診時,左大腿内側に長さ3cmの術後瘢痕創が残存したが,その他の皮膚病変は認めなかった.同部拡大切除と左鼠径リンパ節郭清を行い,リンパ節転移が確認された.その後,DAC-Tam-Feron療法を5クール施行したが,左会陰部と臀部に皮下腫瘤を認め,切除標本組織は,いずれも悪性黒色腫であった.腫瘍細胞には淡明細胞肉腫に伴うとされる染色体異常はなく,軟部組織原発の悪性黒色腫の局所再発と診断した.初回の皮下腫瘤切除26か月後には,局所再発・遠隔転移に至り,その7か月後には永眠された.

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要約 53歳,男性.約8年前より左頸部に自覚症状のない結節が出現し,自壊後に瘢痕治癒した.約6年前より結節潰瘍の新生,瘢痕治癒を繰り返し,拡大した.初診時,頸部の瘢痕局面上にくるみ大までの肉芽様結節,膿苔を伴う深い潰瘍が数個不規則に散在した.RPR2,048倍,TPHA20,480倍以上,HIV陰性.病理組織像は真皮脂肪織全層,一部筋組織に及ぶびまん性の炎症細胞浸潤と肉芽組織があり,真皮上層は好中球主体,中下層はリンパ球,組織球,形質細胞の浸潤があった.ゴム腫性梅毒疹と診断した.AMPC1,500mg/日6週で皮疹は略治したが,RPRの変動なく頸部の小陥凹からの滲出液が遷延し,RPR1,024倍を二度確認した時点で滲出液が消失したため,34週で投薬終了とした.現在まで,心血管病変や神経病変はない.

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要約 55歳,男性.多発性骨髄腫で血液内科に入院加療中のところ,3か所の異なる神経節支配領域に帯状疱疹の発症をみた.アシクロビルの倍量投与と免疫グロブリン製剤の併用で上皮化をみたが,遅発性に神経痛が発症した.帯状疱疹はありふれた皮膚疾患であるが,多発性帯状疱疹は稀有であり,本例が国内報告第5例目である.

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要約 54歳,女性.2004年より潰瘍性大腸炎にてステロイド内服(20mg/日)治療を受けていた.治療約1年後より漸減・中止したところ,口腔内に白苔を伴った小膿疱,頭頸部と腋窩に膿疱,びらんを伴った小豆大~母指頭大の結節性病変を認めた.皮疹には掻痒があり,全身倦怠感と下痢も認められた.末梢血好酸球は12.5%と増多し,病理組織像で真皮上層と毛囊周囲に好酸球が密に浸潤していた.棘融解細胞はみられなかった.蛍光抗体直接法,間接法,抗デスモグレイン1,3抗体は陰性であった.以上より,pyodermatitis-pyostomatitis vegetansと診断した.本疾患は潰瘍性大腸炎やCrohn病などに合併することから,炎症性腸疾患に合併する過敏反応と考えられている.

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要約 慢性蕁麻疹患者に対してエピナスチン塩酸塩を予防的あるいは対症的に投与し,患者のかゆみなどの症状やQOLに及ぼす影響について8週間にわたり調査した.調査担当医師による総合的な臨床評価では両群間での有意差はなかったが,著明改善の割合は予防的投与群でやや高値であった.Skindex16を用いたQOL評価では,対症的投与群ではいずれの項目でも有意な改善は認められなかったのに対し,予防的投与群では8週後に症状・感情面の項目が有意に改善した.患者の日誌に基づくかゆみスコアでは,スコアが3以上になった日数において,予防的投与のほうがより有効であった.本試験により,エピナスチンの8週間の長期連続投与の有効性および安全性が確認され,症状が出ていない時期での抗ヒスタミン薬の予防的投与が,対症的投与よりも患者のかゆみやQOLの改善に効果があることが示された.

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要約 近年,黄色ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)では,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離される例が増加している.当院で2001年から約6年間に経験したSSSSの入院28症例について,入院日数,分離菌,薬剤感受性,投与抗菌薬を集計,検討した.分離菌はMRSA陽性例が約70%と多数を占めた.MRSA陽性18例において,感受性(S)の抗菌薬(主にFOM)を投与した群と耐性(R)の抗菌薬(主にセフェム系)を投与した群とを比較したところ,入院日数に有意差は認めなかった.その理由として,全例で施行された補液が治療の重要な部分を占めていた可能性のほか,米国臨床検査標準化委員会の基準に基づきRとされた分離菌の多くが,実際にはセフェム系抗菌薬に対するMICが低く,実質的には感受性であったことなどが考えられた.

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 このたび,自治医科大学客員教授であり東京医科大学の総合臨床科教授でもある齋藤中哉教授の執筆と,自治医科大学教授のAlan T. Lefor教授の編集協力により,『臨床医のための症例プレゼンテーションA to Z』が医学書院から出版された.これには英語のCDが付いている.

 本書の内容は,2003年以来,ハワイ大学の医学教育フェローシップ・プログラム・ディレクターをされていた齋藤中哉氏が『週刊医学界新聞』誌上において2004年から1年間,12回にわたって連載した「英語で発信! 臨床症例提示―今こそ世界の潮流に乗ろう」に,大幅な加筆・修正を加えたものだ.連載は,カンファレンスにおける症例呈示(Case Presentation)の実例を分析し,テキストとして教育的,効率的な症例の提供の仕方を教えてくれる,読者にあたかも米国での症例検討会に出席しているような感を与える記事であった.

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あとがき 塩原 哲夫
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 投稿されてくる論文や,編集委員のコメントに対する回答には,自ずと著者の誠意が現れる.プリントした字体であっても美しく丁寧に書かれたものに,出来の悪いものは余りない.それに対し,乱雑に手書きで書かれたものに,満足のできる回答があった試しがない.外面の美しさはその文章を読む気にさせる(つまり内面の素晴らしさに気付かせる)重要な要素である.

 アメリカに留学したとき,彼らが投稿論文の仕上げの美しさに非常に気を遣っているのに驚いた記憶がある.日頃,雑然として何て汚いのかと驚くような研究室にいる住人が,プリントしたばかりの投稿論文(その当時,電子投稿はなかった)をまるで宝物のように扱っていたことを昨日のように思い出す.しかも,日頃尊大で,きれいな言葉なぞついぞ聞いたことのない研究者が,こんな英語の表現を知っていたのかと思うような丁寧な表現で,レフェリーに対する回答に感謝の言葉を連ねるのである.しかし,自分がそのような雑誌のレフェリーになってみて,それも止むを得ないと思うようになった.レフェリーのコメントに対し,しっかり答えていないと判断されれば,それだけでrejectされてしまうからである.

基本情報

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臨床皮膚科
63巻9号 (2009年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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