臨床皮膚科 54巻9号 (2000年8月)

カラーアトラス

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 患者 47歳,男性

 初診 1997年3月26日

原著

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 深い褥瘡は色による4つの時期の臨床分類が一般的となり,それぞれの時期にあった適切な治療を行おうとする考え方が定着しつつある.一方,その治療法に関しては消毒のポビドンヨード使用の是非についても論議があるように,完全に確立されているとはいえない.最近,創傷治癒にかかわるサイトカインに注目した新しい褥瘡外用剤の開発がなされているが,同時に,現在までの外用剤の使用経験の見直しや治療法の再検討も重要と考えられる.今回私たちは,褥瘡の臨床を検討する上で有用と考えられる当科で経験した症例を呈示し,現在の褥瘡の臨床についての知見に検討を加えた.

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 58歳,男性.初診の4か月前から胸部に水疱が出現し,口腔内,側腹部にも水疱,びらんが出現した.喉の違和感と眼球結膜の充血・瘢痕を伴う.組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法で基底膜部にIgGとC3の線状沈着を認めた.間接法は10倍で陽性,1モル食塩水処理正常ヒト皮膚(スプリットスキン)を用いた間接法で抗体は表皮側に反応した.免疫プロットでは230kD表皮蛋白,180 kDのNC 16 A domainが陽性であった.シクロホスファミド,プレドニゾロン内服で症状は改善したが転移性肺腫瘍が見つかり,その後胸部に水疱が再発した.その時の血清でスプリットスキンを用いた蛍光抗体間接法では真皮側に抗体の反応を認め,免疫沈降法では180kD表皮蛋白とラミニン5に対する抗体を認めた.

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 症例は66歳,男性.食道癌の術後に生じた発熱に対し,ST合剤(バクタ®)の吸入を開始したところ翌日より躯幹に自覚症状のない膿疱を伴う紅斑が出現し,全身に拡大した.組織学的には角層下から表皮内に膿疱が形成され,真皮上中層の血管周囲にリンパ球を主体とし,好中球・好酸球を混じる炎症性細胞浸潤がみられた.薬剤中止により皮疹は速やかに改善した.ST合剤のパッチテストは陰性であったが,皮疹軽快時のリンパ球幼若化試験が陽性で,内服試験では常用量の1/4量内服後に全身倦怠感と眼囲,下肢の紅斑が出現した.自験例を含め,本邦で報告されている膿疱型薬疹について若干の考察を加え報告する.

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 46歳,女性.他医で慢性関節リウマチと診断され,ブシラミン(リマチル®)等を処方されたところ,発熱と躯幹および四肢に一部融合傾向を示す暗赤色小豆大の紅斑が出現した.末梢血中好酸球数の増加と,病理組織像で表皮真皮境界部から真皮上層にかけての炎症細胞浸潤および液状変性を認め,パッチテスト72時間後の判定(ICDRG基準)でブシラミン5%pet.で++,2%pet.で+,1%pet.で+?の反応を示した.以上の所見よりブシラミンによる播種状紅斑丘疹型薬疹と診断した.コントロールパッチテストを施行した健常人30名のうちブシラミン2%pet.で陽性反応を示した者は認められず,ブシラミンのパッチテストの至適濃度は2%pet.であると考えた.

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 24歳,女性.3歳頃からアトピー性皮膚炎に罹患.19歳で就職後皮疹の悪化がみられ,アトピー性皮膚炎治療中に頭部に不規則な脱毛巣が出現した.アトピー性皮膚炎に合併したトリコチロマニアと診断した.心理テストにてうつおよび易怒性の傾向をみた.自験例のトリコチロマニア発症の背景にはアトピー性皮膚炎と生活環境に起因する精神的ストレスが存在したものと考えた.

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 70歳,女性.趣味で10数種の草花を栽培している.Primula obconica(以下プリムラ)の手入れを始めた3か月後より,手指,前腕,耳部,両膝に痒みの強い不整形の浮腫性紅斑が出現した.手指では著明な水疱の形成を認めた.11種類の植物のas isパッチテストを施行したところ,24時間貼布後にプリムラをはじめ6種で陽性であった.経過とパッチテストで最も反応の強かったプリムラによる接触皮膚炎が主体と考えた.プリムラによる接触皮膚炎では,線状から不整形の紅斑と小型の水疱を呈することが多いが,大型の水疱の形成をみた点が特異と思われた.

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 両下肢に高γグロブリン血症性紫斑を認めたSjögren症候群(SjS)の母の娘が肢端紫藍症を伴うSjSを発症した.臨床検査成績にも母娘間に相違がみられた.HLA解析では,DR 8(SjSの患者に高頻度で認められるDR 52と連鎖不平衡にある)を母娘とも有していた.SjSの臨床症状と検査異常には,遺伝的背景に加え多因子が関与すると考えた.

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 49歳男性に生じ,約1年の経過で略治した毛孔性紅色粃糠疹の1例を報告した.臨床的に毛孔一致性の紅色丘疹,落屑性紅斑で初発し,種々の治療にもかかわらず,発症から約3か月で急速に紅皮症化し,島嶼状に正常皮膚が残存する状態となった.しかし以後約1年の経過で次第に軽快,略治した.自験例は本症のType 1定型的成人型の特徴的な臨床経過をとった症例と考えられた.

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 HTLV-1キャリアに生じた丘疹-紅皮症(太藤)の1例を経験した.症例は72歳男性で,腹部の大きな皺,肘窩,膝窩を除き紅皮症様を呈し,腋窩のリンパ節腫脹,末梢血好酸球増多を認めた.組織所見では,真皮浅層の血管周囲性に好酸球を混じる単核球浸潤,少数のリンパ球の表皮内侵入がみられた.内臓悪性腫瘍の合併は認められなかった.抗HTLV-1抗体640倍,末梢血HTLV-1プロウイルスDNA陽性.現時点では末梢血および皮膚組織内に腫瘍細胞の浸潤はみられないが,くすぶり型成人T細胞白血病の可能性も考え,経過観察中である.

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 31歳,女性.両耳下腺の腫脹と霧視,下腿の皮疹,微熱,嗅覚の脱失,顔面神経麻痺,右上口唇の運動麻痺感により精査目的で当院耳鼻科に入院した.皮膚科初診時,両下腿に浸潤性紅斑を認め,組織学的には真皮上層から皮下脂肪織にかけて中心壊死を伴わない類上皮性肉芽腫であった.霧視に対する眼科精査でぶどう膜炎を認めた.以上より本症例を完全型Heerfordt症候群と診断した.本邦におけるHeerfordt症候群で皮疹を伴うものは,完全型と不完全型を合わせて14例あった.そのうち12例に下腿の皮疹が認められ,これは本症候群に特徴的所見と思われた.一般にサルコイドーシスは検診時のBHLで発見されることが多いが,自験例は嗅覚障害をきっかけに発見されており興味深い.多彩な神経症状の原因に関しては,諸検査を行ったが明らかにできなかった.

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 59歳,男性.初診の2週間前より,両側肘頭部より前腕にかけて,自覚症状のない米粒大までの紅色丘疹および結節が多発融合してきたため当科を受診した.病理組織学的所見では,真皮内に限局性の膠原線維の断裂像を認め,膠原線維間には組織球や巨細胞が浸潤する肉芽腫反応を示し,alcian blue染色では膠原線維間に陽性物質の沈着を認めた.以上より環状肉芽腫と診断した.生検後も自然退縮を認めず新生,拡大するためジアフェニルスルホンの内服を50mg/日にて開始したところ2週間後には皮疹の新生は止まり,徐々に色調と隆起が軽減して4か月後にはほぼ退色した.以後約7か月経過するが,皮疹の再燃は認めていない.

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 72歳,男性.両手指関節部背面,左大転子部,坐骨結節部に血疱や紫斑を伴う小指頭大から小豆大の軽度隆起した結節,両手掌には小膿疱や血疱,足底には紫斑や血痂を伴う拇指頭大の過角化性局面を散在性に認めた.病理組織学的に,真皮浅層から中層にかけて血管周囲を中心に好中球とリンパ球を主体とした中等度の炎症細胞浸潤を認め,多数の核破砕片を伴っていた.一部の血管壁には,血管壁の破壊とフィブリンの沈着を認めた.免疫電気泳動法でIgA-κ型M蛋白が同定され,良性M蛋白血症と考えられた.持久性隆起性紅斑と診断し,ジアフェニルスルホンを50mg投与し,治療開始1か月後には皮疹はほぼ消退した.持久性隆起性紅斑は様々な皮膚症状を呈する疾患であると思われる.

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 43歳男性および57歳男性に生じたactinomycosisを報告した.症例1は右下顎部の直径15mmの無痛性の皮下結節が徐々に増大し,疼痛が出現してきたため受診した.病理組織学的に菌塊が認められ,抗生剤内服にてCT画像上30mmであった腫瘤は3か月後に5mmに縮小し,薬物療法を継続してその後再発は認めない.症例2は左耳下腺部の腫瘤の膿汁吸引スメアーにて菌塊を検出し,抗生剤を投与するも反応が少なかったため全摘術後抗生剤投与を行い再発は認めない.摘出腫瘤の病理所見は瘢痕組織で菌塊はみられなかった.

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 57歳,男性.8月中旬,蝶の採取に北海道に出かけた折,ヤマトマダニ(Ixodes Ovattus)に前胸部を刺咬された.前胸部やや上方に虫体の付着を認め,周囲は発赤し,瘙痒を伴う.抗Borreliaburgdorferi抗体は陰性.虫体を含めて咬着部皮膚を切除した.走査電顕にて虫体の口顎部および刺咬状況を観察した.本邦におけるマダニ刺症報告例の統計学的考察とともに,本症の治療方法についても言及する.

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 症例は74歳女性.四肢,躯幹に多発性の緊満性水疱が出現した.当初,水疱性類天疱瘡を疑い,生検を行ったが診断確定には至らなかった.その後,治療には比較的よく反応したが,外泊の度に症状の悪化をみたため,詳細な問診を行ったところ,自宅で飼っているネコに大量のノミが寄生している事実が判明した.同居の家人にも下腿を中心に虫刺され様発疹が多発していることが分かり,ノミ刺症と診断した.徹底したノミの駆除ならびに副腎皮質ホルモン剤の外用と抗アレルギー剤の内服にて治癒した.

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 23歳男性と63歳女性の頸部リンパ節結核の2例を報告した.2例ともリンパ節腫脹を主訴として来院し,ツベルクリン反応は陽性,胸部X線に異常はなかった.リンパ節の組織はLanghans型巨細胞を混ずる類上皮細胞肉芽腫で,広範な乾酪壊死を伴っていた.近年減少した結核も最近増加傾向がみられるという.6か月の間に2例の頸部リンパ節結核を経験したので若干の考察を加えて報告する.

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 79歳,男性.1953年(35歳時)にLL型ハンセン病と診断された.主としてsulfone剤による治療を受け,約30年後に菌は陰性化し病状も安定した.その後ジアフェニルスルホン(DDS)25mg/日が継続されたが,約20年後,左3,4指のしびれ感と同指の著明な皮膚温低下に気づき,さらに体幹,臀部,四肢に炎症所見の乏しい指頭大の淡い紅斑が多数,散在性に出現した.当該部の生検にて,らい菌を食するマクロファージの旺盛な組織浸潤傾向を認め,臨床所見とあわせて再発性のLL型ハンセン病と考えた.軽度の初期病変に対する注意深い観察が,早期発見を可能にしたと考えられる.リファンピシン,クロファジミン,DDS,ミノサイクリンの併用療法にて,半年後には皮疹はほぼ消失し,菌検査も陰性化した.その後も良好な経過が得られている.

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 77歳,男性.下腿の浮腫と食欲不振のため外科を受診した.大腸内視鏡にてS状結腸癌と大腸に多発性の過形成性ポリープ,腺腫を認めた.Cronkhite-Canada症候群疑いにて当科に紹介された.軽度だが急速な脱毛,太鼓ばち指,軽度の爪萎縮,手掌および下腿から足関節,足背,足底にかけて多発性の黒褐色色素斑を認めた.病理組織像では,表皮基底層でのメラニンの増加,真皮上層の血管周囲性に軽度の細胞浸潤を認めた.胃,小腸にも多発性にポリープが存在した.以上より,後藤らの臨床経過分類のIV型に相当するCronkhite-Canada症候群と診断した.

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 遠隔皮膚転移を伴ったdouble extramam—mary Paget's diseaseの89歳の男性症例.1990年頃に外陰部に紅斑が出現し,腫瘤化してきたため1995年に当科を初診した.Double extramam—mary Paget's diseaseステージ3と診断された.電子線治療を開始後,左胸部と右腋窩に紅色丘疹が出現,真皮にのみPaget細胞が認められた.5日遅れて左腋窩にも紅斑と紅色丘疹が出現し,紅斑部では表皮にのみ,丘疹部では真皮にのみPaget細胞を認めた.剖検を施行し,肝臓,椎骨,両側副腎,膀胱,右肺門リンパ節,左頸部リンパ節,縦隔リンパ節,傍気管リンパ節,皮膚に転移を認めた.

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 70歳,男性.初診の約3か月前に右頬部の紅斑に気づき,徐々に増大してきた.初診時右頬部に30×26×12mmの紅色腫瘤を認め,組織学的に腫瘍細胞は比較的大型の異型細胞であった.免疫組織化学的染色はCD 45(+),CD 3(+),CD 30(+),遺伝子解析ではTCR Jγに再構成(+).全身検索では異常がないため皮膚原発anaplastic large cell lymphomaと診断した.治療は単純切除後,電子線40Grey照射した.

連載

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次の性感染症に関する記載のうち正しいのはどれか.

①古典的な性病は梅毒,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫症,陰部疱疹の4疾患であり,性病予防法により医師は保健所に届け出の義務がある.

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コードレスの時代への突入

 今やコードレス時代となり,電話やインターネットをはじめとし“The future is wireless.”という唄い文句を雑誌でよく目にするようになりました.日本でも携帯電話で自動販売機での買い物が可能になると聞いています.

 さてここアメリカではコードレスが医療の世界にも進出してきており,幾つかの会社は患者のカルテ内容をインターネットを通していつでもどこからでも,たとえそれがあなたの自宅からでも引き出せるような申し出をしています.病院内または別の病院からでも従来の時間の掛かる手続きなしですぐに患者の記録をインターネットからダウンロードして調べられるわけです.以前アメリカの退役軍人病院についてお話ししましたが,これが可能になると遠く離れた,距離にして5千キロ離れた,しかも時差が3時間ある東海岸の病院から情報を即座に得られ,患者はもっと適切な診療を早く受けられるようになります.

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 超音波メスをを用いた腋臭症の治療には,次のような利点がある.1)手技が簡便であり,短時間の手術が可能である.2)脈管系が温存されるため皮弁の血行が保障され,皮膚壊死が避けられる,と同時に知覚障害が起こりにくい.3)出血がほとんどないため術後の血腫形成がなく,厳重な圧迫固定,安静を必要としない.4)術後瘢痕が目立たない.5)確実に汗腺組織が破壊される.しかし合併症として最も問題となるのが,チップの発熱による熱傷であり,それに対し当科では以下のことなどを行い,その予防に努めている.1)チップ先端が細かく平行運動するように作動させ,絶対に止めない.2)超音波メスの還流水を予め4℃に冷却し,術中も氷嚢を使用するなど冷却に努める.3)切開線周囲の皮下組織には超音波メスを接着させづらいが,無理に当てることなく剪除を併用する.4)術後数日はステロイド軟膏を外用する.

印象記

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 東北大学皮膚科田上八朗教授が会頭を務めた第99回日本皮膚科学会総会は5月26日から28日の3日間,杜の都・仙台で行われた.20世紀皮膚科学において本総会は特別な意義があり,学会プログラムもそれにふさわしく幅広く網羅され,20世紀皮膚科の総括に始まり,数多くのシンポジウム,招待講演,ワークショップが企画され,さらに21世紀への展望もなされた.

 学会は仙台国際センターおよび宮城県スポーツセンターで開催された.1978年以来,22年ぶりに仙台で開かれた総会にふさわしく,学会は晴天に恵まれた.会場は周辺の広瀬川や青葉城の城跡,緑に囲まれたすばらしい環境で,参加者にとって久しぶりに都会の喧噪を忘れ,緑の香りを満喫した3日間でもあった.

基本情報

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臨床皮膚科
54巻9号 (2000年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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