臨床皮膚科 53巻2号 (1999年2月)

カラーアトラス

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 患者 6か月,女児

 初診 1993年10月12日

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 73歳,女性,2年前より排尿時異和感があったが,外陰部の病変には気づかなかった.9か月前に左鼠径部に腫瘤を生じ,1か月前より急速に増大した.初診時,左鼠径部に径85mm大の表面がびらんし,滲出液,出血を伴う腫瘤および陰核包皮に表面が白色浸軟する小腫瘤を認めた.生検にていずれも有棘細胞癌と診断,陰核包皮が原発で鼠径リンパ節転移が急速に増大したものと考えた.他臓器に病変は認めなかったが,鼠径部腫瘤が外腸骨動静脈に達していたため放射線療法を施行した.一時的に腫瘤は縮小したが,最終的には鼠径部の腫瘍内で外腸骨動脈が破綻し,失血死した.初診時に白血球数が31,500/μlと増加しており,最高64,200/μlまで増加した.血中G-CSFは373pg/μlと増加していた.肺癌ではG-CSF産生腫瘍が報告されており,G-CSFが白血球増多のみならず腫瘍の増大にも関与するとされる.自験例でも鼠径部の腫瘤は急速な増大を示し,G-CSF産生腫瘍である可能性が考えられた.

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 ヒトパルボウイルスB19感染により伝染性紅斑を生じた19例について検討した.患者は18歳から59歳で,30歳台の女性が13人と最多であったが,これはこの年代の女性が,伝染性紅斑に罹患している子供に接触する機会を最も多く持つためと思われた.皮疹の性状は典型的な網状紅斑以外に,紫斑,淡い紅斑,潮紅など多様であった.発熱,関節痛,浮腫を伴うことが多く,部位は共に末梢に多い傾向にあった.小児例と比較すると,顔面に皮疹が少ないこと,皮疹以外の臨床症状が目立つことが特徴として挙げられた.皮疹の分布や形態は症例により異なり,典型的でないものもある.診断に苦慮する急性発疹症は,とくに流行期には伝染性紅斑を鑑別診断として考慮すべきであると考えた.

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 82歳,女性.42年前に右乳癌で右乳房切断術,リンパ節郭清術の既往あり.初診5か月前より顔面神経麻痺でプレドニゾロン5mg/Hを開始.受診1か月前に食思不振にて当院内科入院中,乳癌手術後瘢痕部周辺に小結節の多発を指摘された.病理組織学的に真皮内に異型細胞を認め管腔形成を認めた.免疫組織学的検査にてCEA, PKK−1, EMA, BREST−2が陽性であった.42年前の右乳癌が原発のdelayed cutaneous metastasisと診断した.Delayed cutaneous metastasisの中でも特に長年経過した後に発生した症例について文献を渉猟した。その発生機序として,tumor dormancy(腫瘍の仮眠状態)が何らかの刺激で活性化され発生する可能性を示唆する症例と考え報告した.

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 症例は24歳,女性.特に誘因なく初診約1か月前より両下腿に瘙痒を伴う蕁麻疹様紅斑が出没.その後両足背から下腿,手背から前腕にかけて指圧痕を残さない著明な浮腫と,肘・膝関節痛が出現した.体重3kgの増加を伴っていたが全身状態は良好であった.末梢血好酸球は最高82%(白血球数24,800/μl)と著明に増加し,血清LDHおよび血清IgMの若干上昇,抗核抗体陽性を認めた.組織学的に真皮の浮腫,真皮・脂肪織に好酸球の浸潤,また紅斑部には肥満細胞の増加と脱顆粒像を認めた.他臓器に異常を認めず本症と診断し,プレドニゾロン20mg/日内服にて著明な改善を認め,中止後も再発は認めていない.自験例においてケミカルメディエーターの測定を行い,本症の発症機序について若干の文献的考察を行った.

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 52歳,男性.10年前より右下顎部に発赤腫脹が出現し増大縮小を繰り返していた.1996年2月肺結核にて入院.一時増加していた好酸球は抗結核剤内服開始後低下したが,3か月後より再び増加するとともに下顎部腫瘤の増大を認めたため,12月当科初診.生検組織では皮下に好酸球浸潤を伴うリンパ濾胞様構造があり周囲に血管増生を認めた.その後好酸球数および腫瘤は軽快傾向を示し,1997年8月腫瘤部分摘出術を施行した.しかし,手術後1か月で再び増悪傾向となったため,インドメサシン(インダシンR®)2C/日の内服を開始し奏効した.木村病は一般にTh2優位の疾患と考えられるが,本症例ではTh1反応が主役を演ずる結核に合併したため,その治療に応じて興味ある臨床経過を呈したものと考えられた.

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 67歳,女性.全身倦怠感,肝機能障害とともに顔面に紅斑,Gottron徴候,肘頭部に角化性紅斑が出現した.筋症状,CKの上昇ともなく,筋生検,大腿部MRIでも異常所見は認めなかったが,血清アルドラーゼ,ミオグロビンの上昇があり,筋電図で筋原性変化を認めた.組織像で基底層の液状変性,真皮の浮腫性変化があり,皮膚筋炎と診断した.皮疹出現40日後よりプレドニゾロン30mg/日内服を開始したところ,皮疹,全身状態とも一時軽快したが,経過中にCK/LDH比の低下が顕著となり,70日後に熱発,呼吸器症状が出現した.間質性肺炎の急性増悪を考え,ステロイドパルス療法等を施行したが,その7日後に死亡した.

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 58歳女性と51歳女性に発症した糖尿病を伴わないnecrobiosis lipoidicaの2例を報告した.2例とも両下腿に褐色あるいは紅色の辺縁が堤防状に軽度隆起した萎縮性局面を認めた.病理所見では真皮内に膠原線維の変性が広範囲に認められ,その中にリンパ球,組織球,多核巨細胞からなる肉芽腫性結節が散在し,脂肪滴を貪食した泡沫細胞も混在していた.症例1では外傷が誘因として考えられ,2例日は蛍光抗体直接法で血管壁にC3の沈着が認められたことから免疫複合体による血管炎の関与が疑われた.

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 80歳,男性.下部尿路感染症に続発して生じたと考えられるFourllier's gangreneの1例を報告した.腰椎麻酔下にデブリードマンを施行した.本症は軽微な外傷でも生じる可能性を念頭に置く必要があると考える.

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 62歳,男性.糖尿病にて食餌療法中,初診の約1か月前から倦怠感と頭痛,筋肉痛を自覚していたが放置.2週間前より四肢を中心に融合性連圏状紅斑と咳嗽が出現し当科受診.肺炎の合併を疑い検索したところ喀痰中からWYO培地にてLegionella pneumophiliaが検出され,胸部CTでは間質性肺炎の像が認められた.検査所見では著明な炎症反応と肝・腎障害の所見が認められ,皮疹の組織像では真皮上層の浮腫と血管周囲性の単核球浸潤がみられた.皮膚切片(凍結保存)からも培養を行ったが菌を分離することはできなかった.エリスロマイシンとリファンピシンにて治療を試み,菌は陰性化したものの多臓器不全へ移行し救命し得なかった.

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 患者は,在胎40週,出生体重2,882gにて出生した男児で,出生時よりほぼ全指と右下腿部から右足部,および左足底部にBart症候群を思わせるびらん,潰瘍を認めた.その後,主に外力のかかる部位に水疱とびらんが繰り返し出現した.病理組織学的には表皮下水疱を呈していた.また,α6integrin,β4integrin,laniinin,type IV collagenおよびtype VII collagen対する種々のモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法により病変部皮膚組織でのimmunomappingを施行したところlamina lucidaでの水抱形成を確認した.その後,皮疹は全身に拡大し,生後4か月で死亡した.

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 12歳,男性.Tethered cord syndromeによる足底潰瘍の1例を報告した.3歳時に腰仙部脂肪腫および二分脊椎の診断で椎弓切除術,脂肪腫部分切除術を受けた.10歳頃より軽度の跛行と足底の胼胝に気づいていた.初診の半年前より左足底の胼胝内に潰瘍が出現し,難治のため当科を受診した.髄内脂肪腫による低位脊髄円錐,軽度の膀胱障害,下肢の神経学的異常,足部変形を認めたためtethered cord syndroineと診断した.本症の皮膚科からの報告は稀であるが,難治性の足底潰瘍や過角化病変を診た場合には鑑別すべき疾患の一つに入れるべきと思われる.

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 82歳,男性.手背原発の悪性増殖性外毛根鞘性腫瘍と上腕への転移巣を切除した.術後経過観察中に,腰痛にて他医を受診したところ骨病変が発見され,臨床的に前立腺癌の骨転移と診断され,泌尿器科にて内分泌療法を受けた.剖検所見では胸膜から骨髄に至る出血性の転移巣を認め,組織学的に悪性増殖性外毛根鞘性腫瘍の転移と考えられた.毛包起源の腫瘍は,一般の有棘細胞癌と比較して高率に転移することが皮膚科医には認知されている.本症例を通じて,皮膚科以外の診療科に対しても毛包癌の特殊性を十分に啓蒙していく必要があると感じた.

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 24歳,男性.初診時の約1年前からの全身の発汗低下を主訴に来院した.初診時に皮疹はなく,理学的所見も特に異常はなかった.一般検査,免疫学的検査ではIgEは1400μg/mlと高値であったが,他は正常範囲であった.発汗試験(温熱負荷試験)では腋窩などのアポクリン腺分布部位の発汗のみで全身に肉眼的発汗を認めなかった.自律神経機能検査ではほぼ正常範囲であった.運動負荷試験にて全身に自覚症状を伴わない米粒大の白色膨疹を認めた.運動負荷試験直後の病理組織学的所見では真皮上層の血管周囲および汗腺・汗管周園に肥満細胞浸潤が認められた.Idiopathic pure sudomotor failure(IPSF)と診断した.コリン性募麻疹の発症機序について考察した.

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 症例1:60歳,女性.右胸壁の腫瘍紐織は3.0×2.5×2.0cm,成熟脂肪組織よりなっていた.腫瘍の辺縁では硝子軟骨よりなる島状の病巣を伴っていた.脂肪腫に軟骨組織を伴うことは非常にまれであり,軟骨化生によると考えられている.本例では線維性被膜や梁状の線維組織から化生により軟骨組織が生じたと考えられた.症例2:64歳,女性.左大腿部の皮下腫瘍は成熟脂肪組織の増生よりなり,少数ながらエクリン汗腺の汗管組織が認められ,adenolipoma of the skinの像に一致していた.汗腺成分は散在性で,ごくわずかしか認められず,脂肪組織が増生する際,entrapされたと考えられる.

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 20歳女性のspindle cell hemangioendo—theliomaの1例を報告した.両手の手掌,手指に青色の多数の皮下腫瘤を認めた.約10年前に左手掌部に腫瘤が発生し,その後次々と両手に発生,拡大した.病理組織学的検索の結果,Weiss & Enzingerが提唱したspindle cell hemangio—endotheliomaと診断した.同部の運動障害や骨変形は合併しなかったため,特に治療は行わなかった.

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 46歳,男性.初診の7〜8年前から躯幹を中心に米粒大の茶褐色斑が多発した.初診時に自覚症状はなかった.Darier徴候は陽性であった.皮膚生検の組織ではトルイジンブルー染色で異染性を示す細胞が真皮上層の血管周囲性に多数見られ,肥満細胞症と診断した.腹部CTと骨髄所見では明らかな異常はなく,単純X線写真と骨シンチグラフィーで頭蓋骨にそれぞれ小さい透亮像と弱い集積像を認めた.尿中のヒスタミンは正常範囲内であり,病変は皮膚にほぼ限局していると考えた.現在のところ皮疹の増悪や全身症状は見られず,経過は比較的落ち着いている.

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 症例1は32歳の男性,右足背に9mm大のドーム状に盛り上がる非対称性の黒色丘疹があり,辺縁にしみ出し様の所見が認められた.症例2は13歳の男子.左足背に12×10mm大のドーム状の黒色結節があり,周囲に点状色素斑が認められた.病理組織学的に2例とも普通型青色母斑であった.表皮直下まで真皮メラノサイトが増殖しており,このことより臨床的に黒色調を呈し悪性黒色腫を疑わせたと考えられた.

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 44歳,女性.出生時より,右乳房内側上方に黒色色素斑を認めており,3年前より同部に黒色腫瘤が出現,増大した.初診時,37×26mmの紅色調を混じる黒色色素斑上に,径12mm,灰黒色調の腫瘤を認め,右腋窩に鳩卵大のリンパ節を触知した.組織学的に腫瘤部はClark level IV, tumor thickness 3.5mmの悪性黒色腫で,右腋窩に2個のリンパ節転移を認めた.一方,色素斑は異型性に乏しいものの,in situの悪性黒色腫と考えられた.治療は腫瘍拡大切除,全層植皮術,右腋窩,右胸骨傍リンパ節郭清術,術前術後にDAVフェロン療法,タモキシフェンの内服を行った。乳房部の悪性黒色腫は非常に稀であり,その臨床的特徴,治療等について文献的に若干の考察を加えた.

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 69歳,男性.約2年前,下腹部に結節が生じ,徐々に増大してきた.下腹部中央に40×20×10mmの皮内から皮下にかけての表面平滑で,不正形弾性硬の暗紅色結節を認めた.組織学的に粘液様物質の中に腫瘍細胞塊が浮遊する特異な像を認めた.粘液産生性の内臓癌皮膚転移との鑑別が困難のため,詳細な全身検索を行ったが,他臓器原発性腫瘍病変は見いだせず,mucinous carcinoma of the skinと診断した.

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 63歳,男性.初診の2年ほど前より四肢に自覚症状を欠く皮疹が出没を繰り返すようになった.初診約1か月前に生じた右大腿外側の皮疹が増大,潰瘍化した.組織学的に真皮全層に大型の異型細胞を多数混在する稠密な細胞浸潤を認め,大型の異型細胞はCD30陽性であった.右大腿外側の皮疹では表皮の偽癌性増殖も見られた.皮疹は初診後ほほ12週間で自然消褪し,臨床,組織像よりリンパ腫様丘疹症と診断した.自験例は定型的リンパ腫様丘疹症の皮疹に混じて右大腿に本症の鑑別に挙げられるregressing atyp—ical histiocytosisに合致すると思われる皮疹を認めたことより,regressing atypical histiocytosisがリンパ腫様丘疹症の亜型であるとする意見を支持しうる症例と考えた.

連載

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141

次の組み合わせのうち正しいのはどれか.

①紅色陰癬 ウッド灯試験

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最新英単語,独り言の朗報,論文の記載について

 世界中の多くの国や言語において面白いことに左利きに対する偏見が若干あるようです.フランス語では,“left”は“gauche”であり,これは英語の場合“手際が悪い,不格好,不器用”という意味であり,ラテン語の“sinister”は“悪魔”となってしまいます.また面白いことにラテン語の“dexter”(右)は英語の“dextrous”の語源でもあり,熟練とか巧妙という意味です.さて,ここアメリカで使用されている“lefty”とか“southpaw”はスポーツ界での左利きのことであり,別に不名誉の代名詞ではありません.またアメリカには左利き専用の店もあり,カップ,時計,ナイフなど,ありとあらゆるものが手に入ります.

 ここで,新しく英語になりつつある単語をご紹介しましょう.それは“going postal”という表現で,最近急激に新聞や雑誌などで目にするようになりました.これはアメリカの新聞等を常日頃からお読みになっていない方には分かりにくいと思いますが,5年ほど昔に起きたある事件が原因になっています.それは当時全米のあちこちの都市で郵便局員が職場における過大なストレスのせいで上司や同僚を殺害するという事件が頻発したことがありました.それが元になり,ストレスのせいで凶暴な行動に及ぶことを“going postal”と言うようになったわけです.

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 当科で行われる脂肪腫摘出術について報告した.脂肪腫摘出15例に本術式が利用された.またこのうち9例に手術用内視鏡が併用された.22mmの切開線から利き手の示指を挿入し,脂肪腫の被膜と偽被膜との問を鈍的に剥離し摘出した.脂肪腫が大きい時は皮下腔内で分割してそれぞれ摘出し,すべての組織が病理検討に供与された.本法は残る瘢痕が小さく,手技も容易なことから有用であると思われた.

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 「臨床皮膚科」52巻10号:793-796頁,1998の水野寛先生・他の論文〈今月の症例〉「乾癬性紅皮症に多発した有棘細胞癌の1例」をたいへん興味深く拝読しました.発症後20年という経過の長い乾癬・紅皮症があって,平成3年,平成8年の2回,左の下肢の2か所の有棘細胞癌(以下SCC)の腫瘤の治療を受けています.また背部や左手背,右下腿にもびらんがあり,これらも病理組織はSCCということでした.この論文の考察のポイントは,SCCの発症が,治療の影響と長年の乾癬・紅皮症の存在といった諸因子により誘発された可能性がある,というご意見のようです.

 このご考察は十分説得力があると思います.

御意見に答えて 水野 寛
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 御指摘ありがとうございます.

 自験例における有棘細胞癌(SCC)関連抗原(以下SCC-Ag)は,12月10口の時点では論文に示した通り,6.5ng/dlにまで下がっています.この時は左手背部および右下腿部に難治性びらん(いずれも病理組織学的にSCCと診断)を認めていましたが,乾癬—紅皮症の皮疹は比較的軽快しておりました.

基本情報

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臨床皮膚科
53巻2号 (1999年2月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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