臨床皮膚科 51巻4号 (1997年4月)

カラーアトラス

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患者 28歳,女性

初診 平成6年10月4日

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 1家族4人および隣人1人に発症したスポロトリコーシスを報告した.平成2年1歳男児(兄),平成5年4月その母親(30歳)および祖母(54歳),10月隣人(64歳,男),平成6年2月妹(3歳)が次々に当科を受診した.家族はすべて同居し農業に携わり,隣人は家族と同様形態の農業を営んでいる.5症例ともヨードカリ内服にて治癒した.菌株のミトコンドリアのDNA分析では,母のみタイプ4,他はすべてタイプ5であった.男児と他の症例との発症時期に3〜4年の間隔があること,母親の菌のみ他の4人と異なるタイプであったことから,家族内ないし隣人間の感染があったと考えるよりも,各々の患者が土壌などから感染した可能性が高い.

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 1996年2月から3月までの2か月間に串間市国民健康保険病院皮膚科外来へ瘙痒を主訴として受診した患者108名に,瘙痒性皮膚疾患罹患時の治療状況と日頃のスキンケアについてアンケート調査を行った.痒い皮膚病に罹患した時,3割の患者が初めに自己治療を行っていた.掻破により皮膚疾患が悪化することを8割以上の患者が認識しながらも5割の患者はかなりの程度まで掻破をしていた.軟膏塗布時,3割の患者がごしごしと力をこめて擦り込むように塗っていた.乾燥している時期において6割の患者は毎日入浴し,石鹸を使用しタオルやナイロンタオルでごしごしと強く体を洗うと4割の患者が回答した.以上の結果をはじめ,実際に家庭においてどのように掻痒性皮膚疾患に対処しているか,本アンケート結果がその参考資料となると思われる.

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 1歳8か月男児,hypomelanosis of Itoの1例を報告した.生下時より認められ徐々に増強傾向のある渦巻状あるいは帯状の脱色素斑を,躯幹,四肢に認めた.言語発達などの精神発達遅延を認めたが,一般検査,脳波,MRI所見,眼底,各種ホルモンに異常を認めず,血液細胞および培養皮膚線維芽細胞において染色体異常を認めなかった.脱色素斑部は正常部に比較し,表皮メラノサイトの数に増減は認められないものの,基底層のメラニン顆粒が減少しており,DOPA反応が減弱していた.脱色素斑部の電顕所見では,成熟したメラノソームをごく少数しか持たないメラノサイトが目立ち,電顕DOPA反応ではそれらのメラノサイトの細胞質内にも陽性顆粒が認められた.本疾患の病因論としては,モザイク説が現在のところ有力である.

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 硫酸アトロピン眼軟膏による接触皮膚炎の2例を経験した.症例1は57歳女性.右眼の網膜剥離のため,1989年4月当院眼科で手術を行った.術後約10日頃より右眼瞼に痒みを伴う紅斑が出現した.点眼剤のパッチテストで硫酸アトロピン眼軟膏が陽性.症例2は43歳女性.右眼の網膜剥離のため,1995年6〜8月当院眼科にて計3回手術を受けた.3回目の手術の2日後右眼周囲に浮腫性紅斑が出現した.点眼剤のパッチテストを施行したところ,硫酸アトロピン眼軟膏で陽性.成分パッチテストで硫酸アトロピンが0.001%まで陽性,基剤はすべて陰性であった.

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 オキサトミドによる30歳女性の固定薬疹を報告した.アトピー性皮膚炎のため約半年間オキサトミドを内服後,両下肢と殿部に円形から長円形の褐色の色素斑が出現した.内服中止後,2度にわたる再度の内服にていずれも色素斑部に紅斑の再発を認め,2回目には紅斑中央の水疱形成や顔面の円形紅斑も認めた.以上より,オキサトミドの固定薬疹と診断した.パッチテストは施行できなかった.オキサトミドによる薬疹の本邦報告例について文献的考察を加えた.

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 中枢神経(CNS)ループス患者に対しパルス療法施行中に脳梗塞,腎不全,呼吸不全を合併し,病理解剖にて多臓器に梗塞像を認めた49歳女性例を報告した.初診時,蝶形紅斑,見当識障害,白血球減少,血小板減少,蛋白尿,BFP陽性,抗核抗体(+),抗ds-DNA抗体(+)を認め,CNSループスと診断.BFP陽性,aPTTの延長,多発性脳梗塞より抗リン脂質抗体症候群を疑うも,lupusanticoagulantおよび抗カルジオリピン抗体陰性.ステロイドパルス療法施行後プレドニゾロン60mg内服.上記症状消失するも,アスペルギルス肺炎合併し,2か月後再燃.再度パルス療法を施行したが意識障害,右片半麻痺,小板減少,呼吸困難,急性腎不全出現し死亡.剖検にて左中大脳動脈梗塞,肺梗塞を認め,血小板減少,急性腎不全を含め,劇症型抗リン脂質抗体症候群(catas—trophic antiphospholipid syndrome)類似の病態がパルス療法により誘発されたものではないかと考えた.

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 C型肝炎に対しインターフェロンα療法中に,乾癬の増悪あるいは誘発をみた3症例を報告した.症例1,2はインターフェロンα療法終了後に,症例3は療法中に,それぞれ使用したインターフェロンα製剤を用いてパッチテスト,皮内テストを施行した.パッチテストは全例とも陰性であった.皮内テストでは,症例2において紅斑が出現し,症例3では,角化性丘疹が認められた.これらの皮疹は,局所に注入されたインターフェロンαの作用により生じたと推測した.皮疹の性状の違いは,インターフェロンα全身投与の有無,あるいは皮膚局所における反応性の違いによって生じた可能性が考えられた.

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 63歳,女性の角層下膿疱症の1例を報告した.初診の約1年前より乳房下部,両腋窩,下肢を中心に掻痒を伴う紅斑,小膿疱の出没を繰り返した.次第に皮疹増悪し,微熱を伴うようになったため受診.組織学的に角層下に好中球主体の膿疱を認める.検査上,IgAの著増,IgMの軽度減少,免疫電気泳動にてIgA(κ)型のM蛋白を認め,骨髄像で形質細胞の軽度増加を認めるが骨病変等は認めない.以上から自験例をIgA(κ)型M蛋白血症を伴った角層下膿疱症と診断した.治療ではDDSが著効したが,本症と免疫グロブリン,DDSの関係について若干の考察を行った.

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 血中ケトン体が高値を示した色素性痒疹の3例を報告した.症例1は,肥満症治療のための超低カロリー食による半飢餓療法を契機として発症し,血中および尿中ケトン体の変動が病勢と一致した.病変部皮膚ではケラチノサイトがHLA—DRとICAM−1を発現しており,また患者血清がin vitroでリンパ球のインターフェロン—γ産生を促進させたことから,病態におけるインターフェロン—γの関与が示唆された.症例2,3では食欲低下や不規則な食生活が発症に関わっており,やはり血中ケトン体は高値であった.近年ダイエットや糖尿病などいわゆる飢餓的状態に伴う症例が報告され,代謝と免疫を関連づける因子の存在が想定されている.ここに報告した例では,ケトン体とサイトカインが発症に何らかの役割を演じていると考えられた.

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 47歳,男性.約10年前に,高血糖を指摘されたが放置していた.3年前に,先行感染の既往なく頭部に腫瘤が出現し,徐々に増大したため当科を受診した.後頭部に自覚症状のない5×3cmの隆起性の皮下腫瘤が認められた.空腹時血糖が391mg/dlと高値を示したため,インスリンで血糖のコントロールを行ったところ,腫瘤はやや縮小軟化した.組織学的に,真皮は肥厚し,真皮深層の膠原線維は増生,膨化し,間隙形成がみられた.アルシアンブルー染色で膠原線維束の間隙に陽性物質を認めた.以上より,糖尿病性浮腫性硬化症と診断した.項部および上背部には皮膚硬化はなく,後頭部に腫瘤を形成した点,特異な臨床像と考えられた.

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 9歳女児のII型Ehlers-Danlos症候群を報告した.生来,皮膚の過伸展,関節の過可動性を認めた.光顕所見では著変なく,電顕所見でser—rated collagenやcollagen flowerと形容される形態異常像を認めた.線維芽細胞を用いたコラーゲンの型分析では異常は認められなかった.

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 55歳,女性.初診10か月前より両下肢に瘙痒,軽度鱗屑を伴う紅色丘疹が多発,丘疹は孤立性で,毛孔には一致しない.また表在リンパ節腫脹は認められなかった.組織では真皮上層から中層にかけて非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫を認める.血清ACE 29IU/l, BHL陰性.眼科にて8年前に眼サルコイド疑いと言われている.現在眼科的検査上異常なし.本症例を苔癬様型皮膚サルコイドと診断した.

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 61歳,男性.定期健診で腎機能障害を指摘され,腎生検を施行したところアミロイドが検出された.その後,胃,直腸からもAAアミロイドが証明され,全身性アミロイドーシスと診断した.基礎疾患はない.皮膚には,背部と上肢伸側にrip—ple-patternを呈する灰褐色の色素沈着がみられ,生検で汗腺と脂腺周囲,立毛筋,皮下の血管壁にAAアミロイドがみられた.治療は,DMSOと血液濾過透析を施行したところ,SAAが13から8.2μ/mlと低下したが,その後肝臓の急速な腫大を来し肝不全にて永眠した.本症例は,基礎疾患のない全身性のAAアミロイドーシスと考えた.

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 48歳,女性.顔面を除くほぼ全身に淡紅色あるいは茶褐色丘疹と黒褐色斑を多数認め,ダリエ徴候も陽性であったことから肥満細胞症と診断した.組織学的には肥満細胞症としての所見に加え,真皮上層および毛嚢周囲におけるムチンの沈着を特徴とした.患者はM蛋白血症を合併しており,骨髄穿刺で骨髄中の形質細胞が軽度増加していることが確認された.自験例ではM蛋白血症が刺激因子として作用して,組織学的に肥満細胞の増加とムチン沈着をきたしたものの,臨床的には肥満細胞症の症状のみが認められたと考えた.

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 31歳,女性.初診の約1週問前に右肘に圧痛を伴う「にきび様」皮疹に気づいた.毛嚢炎の診断で抗生剤の外用で皮疹は縮小したが,2か月後近傍に同様の皮疹が出現したため当科を再受診した.表皮嚢腫の診断で切除した.病理組織学所見で真皮中層から下層にかけて嚢腫を認めた.嚢腫壁は,表皮型の角化を示し,嚢腫壁の一部に毛包様構造との連続を認めた.脂腺構造との関連は認められなかった.嚢腫内には軟毛と思われる多数の毛の断面を認めた.以上からeruptive vellus hair cystsと診断した.今回蛍光顕微鏡を用いてHE染色標本を観察したが,この方法は光顕による毛髪の判別が困難である時に比較的容易に判別を可能とする方法として有用であると思われた.

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 28歳男性の躯幹の一部に限局して発生した部分的von Recklinghausen病と考えられる1例を経験した.左側腹部から背部に認めたpachy—dermatocele下に発生した軽度圧痛を伴う硬い皮下腫瘤は,組織学的に周囲に被膜を伴ったplexi—form neurofibromaであった.

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 79歳,女性に発症したカポジ肉腫の症例を報告した.HTLV-I関連脊髄症,糖尿病で加療中であったが,初診の約1年前から左足背を中心として暗赤色の結節が多発してきた.組織所見では真皮上層において内皮細胞が多数の血管腔を形成し,また別の部分では紡錘形の組織球様細胞が稠密に増殖していた.Vascular slitや赤血球の血管外漏出,ヘモジデリンの沈着も認めた.HTLV-I抗体2048倍,HIV抗体陰性.動静脈瘻や他臓器の病変は認めなかった.病変は徐々に拡大し,左下腿や右足にも出現してきた.初診から1年9か月後放射線治療を行い,病変は平坦化し色素沈着となった.HTLV-Iとカポジ肉腫の関連について文献的に検討した.

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 70歳,男性.約20年前より露光部を中心に爪甲大までの環状褐色皮疹が出現し,次第に数を増してきた.1年前より肘頭部の皮疹が紅色調を呈し,鱗屑も認めるようになった.病理組織学的にはcornoid lamellaを認め,皮疹の局在より播種状表在性光線汗孔角化症と診断した.また紅色調を呈する部では病理組織学的にBowen病様の所見が得られた.汗孔角化症部およびBowen病様の病変部で癌抑制遺伝子産物p53蛋白の発現について検討を加え報告した.

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 56歳,男性.平成5年9月頃より右後頭部に小丘疹が出現し,急激に増大してきた.外科で粉瘤として切除,病理報告上,有棘細胞癌を疑われ,10月5日,当科へ紹介された.拡大切除術後の病理組織像で,腫瘍細胞塊の主体をなす細胞は,細胞質が好塩基性に染まる小型のbasaloid cellから成っていた.その他にはそれよりやや大型の細胞質の明るいclear cellを混じていた.Basaloid cellには大小不同や,核の異型性および分裂像が散見され,外毛根鞘性角化様の角化を示す部位がいくつか観察された.Clear cellも異型性が高く,この一部には特異的好酸性細胞質を有するdyskeratotic cellが散見された.さらにclear cellはPAS染色陽性を呈し,ジアスターゼには消化された.以上より本症例をmalignant proliferating trichilemmal cystと診断した.

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 89歳女性の左頬部に生じたメルケル細胞癌の1例を報告した.左頬部に28×24×10mm弾性硬,ドーム状紅色腫瘤を認め,その周囲10mmの範囲に連続性の皮下硬結を触れた.病理組織学的に表皮直下から皮下脂肪纎にかけて敷石状に増殖する腫瘍細胞を認めた.免疫組織学的検索でneuron-specific enolase陽性であり,電顕にて細胞質内に直径70〜140nmの有芯顆粒が確認された.6〜12MeV電子線,合計60Gyの放射線治療にて腫瘤は消失した.本腫瘍の放射線感受性は非常に高く,放射線治療が広範囲切除に代わる有効な治療法と思われた.

連載

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 97 遺伝性角化症について正しいのはどれか.

  ①葉状魚鱗癬の一部はトランスグルタミナーゼ1の遺伝子異常により生じる.

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時制の使い分け,インターネット,減医政策について

 英語論文を書くに当たって時制(tense)はあなたを緊張(tense)させますか.なぜならまだ多くの論文で現在形と過去形とが混じった文をよく見かけるからです.もちろん物事には例外が必ずありますが,一般的に言って,もし患者が今現在何かをやっているのでなければあなたは過去形を使用して下さい(もちろんこれは過去,過去完了等を含みます).つまり“The patient was a 24 year old male who liked to eat raw fish.”あなたが患者を診察したときは24歳でも論文を書きそれが出版され読者に読まれるときは25歳いや26歳になっているかもしれないわけです.しかしながら“Japanese like to eat raw fish”は大丈夫です.何故ならばこれは習慣であり,それについて述べているわけですから.それと同じようにチャートや写真について述べるときも,“As one can see in Chart 1”というように現在形が使用できます.

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 尖圭コンジローム11例に対しビダラビン軟膏の外用を行い,臨床的効果を調べた.うち9例については外用前あるいは外用後の病理組織,パピローマウィルス抗原(papillomavirus genus specific antigen,以下Pgs抗原),ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus,以下HPV)DNAについても検討した.その結果,臨床的にも病理組織学的にもビダラビン軟膏外用による効果は認められなかった.しかし,Pgs抗原,HPV-DNAともにビダラビン外用後は外用前と比べて検出率が低下する傾向がみられた.この結果は,ビダラビンがHPV-DNAの複製をある程度抑制していることを示唆し,HPV-DNAの複製の抑制が必ずしも尖圭コンジロームの治療につながらない可能性が考えられた.

基本情報

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臨床皮膚科
51巻4号 (1997年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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